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第一章
インテリ住職 其の三
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「ひっ……!」
喉の奥から微かに声が漏れる。
私に抱きついてきたのは、黄色い帽子を被った女の子だった。
血まみれた顔面から僅かに確認できた唇は青紫色をしており、目はくり貫かれたようにドス黒く、眼球を確認する事ができない。
(嫌ぁ!!)
恐怖で声が出ない。
(やめてっ、やめてよ! 何で私に憑こうとするのよ!)
即座に振りほどこうと身をよじるが、少女は抗うように力を込めてくる。
『 ……ね ぇ 』
青紫色の唇が微かに動いた。
『 ねぇ、お姉ちゃん……、マナと一緒に…… 』
(――!? この子、私を連れて行こうとしてるの!?)
不慮の事故により地縛霊になった者は、一人では寂しいからと生きた人を引きずり込もうとする事がある。もしかしてこの子も……
(いやっ!)
(離して! 離して!!)
私は目を閉じながら何度も心の中で叫び続ける。私は霊に掴まれる事はあっても掴むことができない。自分から引き離すことができないのだ。
私は心の中で叫び続ける。
(お願い離してっ!、お願いっ!)
しかし少女には伝わらないのか、一向に私から離れない。それどころかさっきより掴む力が強くなってる気がする。
このまま車道に引きずり込まれるのでは!? と、さらに恐怖を覚えた私は、何とか声を出そうと肺に入った空気を出し切るように何度も短い息を吐きだす。
そして全ての息を吐きだすと、今度は強く吸い込み
「離しなさいよっ!!」
と強く叫び、ギッと少女を睨みつけた。
すると少女はビクッと怯えたように身体を震わせ、腕の力を緩めた……その一瞬の隙をつき、私は身体を捻り少女から逃れる。
(助かった……っ)
と、思ったのもつかの間。
運悪く歩道と車道の間にある段差に足を取られてしまい、車道側のアスファルトへと倒れこんでしまった。
「いっ……たぁ……っ」
膝に鈍い痛みを感じつつ、私は何とか起き上がろうと顔を上げると、視界の端に大きな塊が映りこんできた。
(嘘……トラック…)
振り向いた時にはもう既に近くまで迫っていた。
(ひ、轢かれるっっ)
スローモーションのように向かってくるトラックに、私はもう駄目だと強く目を閉じた、次の瞬間……右腕をグッと掴まれる感じがしたと同時に、身体がグンッと後ろに傾き、今度はアスファルトではない硬い何かに倒れこんだ。
(え……?)
背後でクラクションを鳴らしながらトラックが通り過ぎていく……。
(たす……かった……の……?)
私は何が起きたのか分からないまま、暫く呆然していると
「大丈夫ですか?」
と、不意に頭上から声が聞こえた。
私は思わず身を強張らせる。
が、その張りのある声と服の感触に、生きた人だと分かり肩の力を抜く。
そして安堵と共に漂ってきた香りに首を傾げる。
(この匂い……お線香……?)
私は昔からこの匂いが苦手だった。この香りが漂う場所には視たくないモノが沢山いるから。
でも……これは違った。なぜかホッとするような安心するような……そんな感じがする。
(どうして…?)
そんな奇妙な感覚にとらわれながら見上げると、髪のない男性と目が合った。
「貴方は憑かれやすい体質のようですね」
(この人、もしかして視えてるの!?)
――――これが栄慶さんとの出会いだった。
喉の奥から微かに声が漏れる。
私に抱きついてきたのは、黄色い帽子を被った女の子だった。
血まみれた顔面から僅かに確認できた唇は青紫色をしており、目はくり貫かれたようにドス黒く、眼球を確認する事ができない。
(嫌ぁ!!)
恐怖で声が出ない。
(やめてっ、やめてよ! 何で私に憑こうとするのよ!)
即座に振りほどこうと身をよじるが、少女は抗うように力を込めてくる。
『 ……ね ぇ 』
青紫色の唇が微かに動いた。
『 ねぇ、お姉ちゃん……、マナと一緒に…… 』
(――!? この子、私を連れて行こうとしてるの!?)
不慮の事故により地縛霊になった者は、一人では寂しいからと生きた人を引きずり込もうとする事がある。もしかしてこの子も……
(いやっ!)
(離して! 離して!!)
私は目を閉じながら何度も心の中で叫び続ける。私は霊に掴まれる事はあっても掴むことができない。自分から引き離すことができないのだ。
私は心の中で叫び続ける。
(お願い離してっ!、お願いっ!)
しかし少女には伝わらないのか、一向に私から離れない。それどころかさっきより掴む力が強くなってる気がする。
このまま車道に引きずり込まれるのでは!? と、さらに恐怖を覚えた私は、何とか声を出そうと肺に入った空気を出し切るように何度も短い息を吐きだす。
そして全ての息を吐きだすと、今度は強く吸い込み
「離しなさいよっ!!」
と強く叫び、ギッと少女を睨みつけた。
すると少女はビクッと怯えたように身体を震わせ、腕の力を緩めた……その一瞬の隙をつき、私は身体を捻り少女から逃れる。
(助かった……っ)
と、思ったのもつかの間。
運悪く歩道と車道の間にある段差に足を取られてしまい、車道側のアスファルトへと倒れこんでしまった。
「いっ……たぁ……っ」
膝に鈍い痛みを感じつつ、私は何とか起き上がろうと顔を上げると、視界の端に大きな塊が映りこんできた。
(嘘……トラック…)
振り向いた時にはもう既に近くまで迫っていた。
(ひ、轢かれるっっ)
スローモーションのように向かってくるトラックに、私はもう駄目だと強く目を閉じた、次の瞬間……右腕をグッと掴まれる感じがしたと同時に、身体がグンッと後ろに傾き、今度はアスファルトではない硬い何かに倒れこんだ。
(え……?)
背後でクラクションを鳴らしながらトラックが通り過ぎていく……。
(たす……かった……の……?)
私は何が起きたのか分からないまま、暫く呆然していると
「大丈夫ですか?」
と、不意に頭上から声が聞こえた。
私は思わず身を強張らせる。
が、その張りのある声と服の感触に、生きた人だと分かり肩の力を抜く。
そして安堵と共に漂ってきた香りに首を傾げる。
(この匂い……お線香……?)
私は昔からこの匂いが苦手だった。この香りが漂う場所には視たくないモノが沢山いるから。
でも……これは違った。なぜかホッとするような安心するような……そんな感じがする。
(どうして…?)
そんな奇妙な感覚にとらわれながら見上げると、髪のない男性と目が合った。
「貴方は憑かれやすい体質のようですね」
(この人、もしかして視えてるの!?)
――――これが栄慶さんとの出会いだった。
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