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第四章「竜殺しの騎士」
第23話「戦場の先にあるもの」
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『いやああああああああ!!』
抑えの効かない悲鳴が、耳元から響き、耳を突く。
『貴様あああああ!!』
続いて怒りの叫びが響く。それに合わせ一騎の竜騎士があの黒騎士へと突撃をかける。
マズルフラッシュ。一筋の閃光が走り、再び大きく血飛沫が舞い散る。
突撃した竜騎士の騎竜が、竜銃による熱線を受け、それに怯んだすきに、突撃の勢いに合わせるように振るわれた剣の一撃が、騎竜の腹部が一直線に引き裂く。致命的な一撃だ。
騎竜が力なく地面に墜落し、その衝撃によって竜騎士の身体が地面へと投げ飛ばされる。
地面に身体を打ち付けた衝撃で、竜騎士は悶える。
「止まるな! 逃げろ!」
エルバートは叫ぶように声を上げ、指示を飛ばす。だが、竜騎士は動かなかった。
手綱を操り、フェリーシアを竜騎士の元へと走らせようとする。だが、竜騎士との距離は遠い。
『あ、あああ――』
倒れた竜騎士が、間近に立つ黒騎士の姿を目にしたのだろう。恐怖から漏れる生々しい声が、通信用の魔導具を伝い直に響く。
黒騎士の剣が振り上げられる。
「やめ――」
『あああああああああああ!!』
断末魔が響き、血飛沫が吹きあがる。
また一騎、竜騎士が落とされた。
『いや、いや、いや……』
竜騎士達の恐怖で震えた声が、魔導具を通して響く。皆、目の前の黒騎士に恐怖を抱き、動けなくなっていた。
一度剣を振るい、血を振り払う。黒騎士が再びこちらへと目を向けてくる。
フルフェイスの兜で覆われ、表情が見えない。暗く閉ざされた兜の向こう側からじっとこちらを見ている事だけはわかった。
ぞっとするような恐怖を感じる。目の前の黒騎士が、人でない何かの様に見えた。
大きく歓声が響く。目の前の状況を理解し始めた、敵軍の兵達から歓喜の声が上がる。
そして、それとは対照的に、エルバート達の後方に控えていた王国軍からは、無言の不安と恐怖に包まれた空気が感じられた。
竜騎士は、マイクリクス王国が、神聖竜の加護を受けている事への象徴だ。故に、最強であり続けなければならない。
小国であるマイクリクス王国が存続しつづけられたのは、神聖竜の加護――竜騎士の力があったからだ。幾つもの戦争に勝ち続けられたのも竜騎士の力があったからだ。
それだけに竜騎士の存在は、戦場に置いて絶対的な勝利と繁栄の象徴であり。それが破られる事は、敗北と破滅を想起させられる。
戦力比は未だに優勢。けれど、士気に置いては完全にこちらが劣勢であり、このまま突撃をかけられれば、敗走さえもありえる。
きらりと日の光を浴びて、黒騎士の剣が輝く。その剣の表面に自分の姿が映り、それが次第に妻と息子達の姿が映っている様に見え始める。
この戦場の向こうには、大切な家族がいる。ここで敗北は、黒騎士の剣が一歩、そこへ近付くことを意味する。そして、いずれは目の前の竜騎士達の様に、その剣が家族に振り下されるかもしれない。
怒りが沸いてくる。そのような現実は認めてはならない。
「うろたえるんじゃねえ! お前ら! 俺達はまだ、負けてはいない!」
仲間と、それから自分を鼓舞する様に、エルバートは叫ぶ。
「相手はたった一騎だ! 多少の小細工で驚かされはしたが、手の内が分かれば大した事は無い。まだ二騎落とされただけだ! それで、俺達の優位が揺らぐことは無い!」
叫ぶ。そして、一瞬の静寂。
エルバートの言葉がどう届いたかは分からない。けれど、少しは冷静さを取り戻したのだろう。恐怖で震える声が、少しばかり少なくなっていた。
「少しは冷静さが戻ったか? お前ら」
『すまない。まさかここまで自分が取り乱してしまうとは、思いもしなかった』
ディオンの返事が返ってくる。
『それで、どうする?』
「倒すしかないだろ。俺達に敗北は許されない」
『だが……あんなのを相手に……勝てるのか?』
「まだビビってんのか? 相手が勝てたのは、竜銃という武器を隠していたからだ。それが明るみに出てしまえば、どうってことは無い」
竜銃は確かに強力な武器であり、竜騎士に対抗しうる武器でもある。だが、避けられず、防げない武器ではない。不意を突かれなければ、対応できる。
『だが……』
手の内は分かった。けれど、先ほどの黒騎士の姿が後を引き、勝というイメージが沸かないのだろう。弱気なディオンの声が返ってくる。
再び挑発するかのように黒騎士が剣を向け、一騎打ちを挑んでくる。それを見返し、睨みつける。
そうやって一騎ずつ戦い、一つずつ落としていくつもりなのだろう。
だが、もうそのような好き勝手はさせない。
(悪いが、もう誰も、殺させねえ……)
「俺がやる」
『お前が? だが――』
「相手は強い。なら、こっちも最強のカードを切る必要があるだろ。後の事は任せる」
止めるようなディオンの声が響く。だが、エルバートはそれを無視し、手綱を操りと共にフェリーシアを前へと進ませる。今度は逆らわず、言う事を効いてくれた。
対峙する様にエルバートとフェリーシアは、黒騎士の目の前に出る。黒騎士がこちらを見返してくる。
相変わらず表情も感情も見えてこない。
黒騎士の目の前に立つと、礼儀に習いエルバートはランスを掲げる。
「俺は、『白雪竜騎士団』団長にして、『氷雪の竜騎士』の二つ名を持つ竜騎士、エルバートだ。今度は俺が相手を竜殺し」
名乗り、宣言する。黒騎士はそれに、また答えを返す事は無かった。
「名乗る気は……ない。か。なら、貴様の名を残すことなく、この地に消えるがいい。行くぞ、フェリーシア!!」
合図と共に鐙を蹴る。それに呼応し、フェリーシアが大きく咆哮を上げると共に、羽ばたき、駆け出した。
翼をたたみ、落下の勢いを乗せて、フェリーシアが黒騎士に突撃をかける。
黒騎士が竜銃の銃口を向けてくる。マズルフラッシュ。
フェリーシアが即座に翼を開き、瞬時に方今転換をかける。黒騎士の竜銃から放たれた熱線が、フェリーシアの脇を掠め、その熱を受け小さく呻く。
「痛いか? 悪ないな。耐えてくれ、フェリーシア」
フェリーシアは飛竜の中では珍しい、水や冷気の属性を強く持つ飛竜だ。それだけに、熱による攻撃に弱い。その痛みはきっと、生半可なものではないだろう。
フェリーシアの身体が大きくそれ、黒騎士の横を駆け駆け抜ける。そして、後方へと回ると、大きく旋回し向き直る。
「正確な射撃だ……」
再び対峙し、黒騎士を睨みつけ、歯噛みする。
真正面から突撃をかければ、そのまま撃ち抜かれる。だからといって、旋回しながらの突撃は難しい上に、それで速度を落としてしまえばそれこそ的に成る。そう、理解できるほどに、早く正確な射撃を見せてくれた。
エルバートはランスを仕舞い、腰のホルスタから竜銃を引き抜く。ランスによる突撃は、現状良い手ではない。なら、こちらも竜銃を使うまでだ。
「ファリーシア!」
再び鐙を踏み、フェリーシアに突撃をかけさせる。
上空から、速度に体重を乗せ、良い気に黒騎士へと肉薄する。
再び黒騎士が竜銃の銃口をこちらへ向けてくる。それに合わせ、エルバートも竜銃を黒騎士へと向ける。
マズルフラッシュ。今度はエルバートが竜銃を放った。黒騎士は既に攻撃を諦めていたのか、横へ飛び竜銃の熱線を避けようとする。熱線は黒騎士の肩を掠め、肩鎧を赤く溶断する。
再びフェリーシアが黒騎士の横を掠め飛ぶ。
「いい判断だ」
旋回し、向き直る。横跳びで回避して見せた黒騎士はすぐさま体勢を立て直し、こちらへと向き直っており、じっとこちらへ見返してきていた。
バイザー越しに見える微かな目の光、まだ戦う意志を示していた。
あの眼は、自分の死が目の前にあったとしても戦いを終えない戦士の目だ。目の前の敵が、進むことをやめなければ、きっとその剣は、その先へと届く。その事を思い浮かべると、再びぞっと恐怖が沸いてくる。
この敵は此処で倒さなければならい。そう強く思えた。
「終わらせるぞ、フェリーシア」
「グルルル」
エルバートの言葉に同意する様に、フェリーシアが大きく喉を鳴らす。
「行くぞ! フェリーシア!」
鐙を蹴り、突撃の合図をかける。フェリーシアはそれに従い、羽ばたき、羽をたたみ一気に黒騎士へと肉薄する。
黒騎士が竜銃を向けてくる。エルバートも竜銃を向ける。
マズルフラッシュ。エルバートが先に攻撃を仕掛ける。今度も黒騎士は即座に攻撃を諦め、回避行動に移り、避ける。
だが、それで終わりではない。フェリーシアが身体を傾け、突撃の軌道をずらす。ほんのわずかな変化。それでは、黒騎士を正面に捉える事は出来ない。けれど、それでいい。
フェリーシアは首をひねり、顔だけ黒騎士の方へと向ける。
青白い光がフェリーシアの首元を走る。そして、フェリーシアの口から真っ白な霧の様な何かが吐き出される。
すべてを凍て付かせる冷気のブレス。それが、一瞬のうちに空気の熱を奪い、空気中の水分を氷結させる。
白くキラキラと輝く、冷気に包まれた息が、そのまま黒騎士の身体を包み込む。
そして、最後に大きく広げた翼を、冷気に包まれた黒騎士の身体に叩き付ける。武器としの機能は無い。けれど、固い骨格と外皮に包まれた翼が、速度に乗って叩き付けられれば、それは相当な威力となる。
黒騎士の身体が大きく吹き飛ばされ、宙に舞い、地面へと叩き付けられる。
強力な冷気で冷却され脆くなった鋼鉄製のよ鎧が、その衝撃で砕け散る。
まだ、止めではない。エルバートは駆け抜けたフェリーシアをすぐさま方向転換させる。
相手はまだ動く、フェリーシアの一撃で動けなくなっている間にとどめを刺す。
黒騎士を正面に捉える。黒騎士は鎧を半壊させながらも、痛みに耐え、立ち上がろうとする。
「終わりだ」
フェリーシアを走らせ、そして、エルバートは竜銃を黒騎士へと向ける。
黒騎士の崩れた兜が、支えを失い地面へと落下する。引き金に指をかけた時、黒騎士の素顔が見えた。
「――――」
抑えの効かない悲鳴が、耳元から響き、耳を突く。
『貴様あああああ!!』
続いて怒りの叫びが響く。それに合わせ一騎の竜騎士があの黒騎士へと突撃をかける。
マズルフラッシュ。一筋の閃光が走り、再び大きく血飛沫が舞い散る。
突撃した竜騎士の騎竜が、竜銃による熱線を受け、それに怯んだすきに、突撃の勢いに合わせるように振るわれた剣の一撃が、騎竜の腹部が一直線に引き裂く。致命的な一撃だ。
騎竜が力なく地面に墜落し、その衝撃によって竜騎士の身体が地面へと投げ飛ばされる。
地面に身体を打ち付けた衝撃で、竜騎士は悶える。
「止まるな! 逃げろ!」
エルバートは叫ぶように声を上げ、指示を飛ばす。だが、竜騎士は動かなかった。
手綱を操り、フェリーシアを竜騎士の元へと走らせようとする。だが、竜騎士との距離は遠い。
『あ、あああ――』
倒れた竜騎士が、間近に立つ黒騎士の姿を目にしたのだろう。恐怖から漏れる生々しい声が、通信用の魔導具を伝い直に響く。
黒騎士の剣が振り上げられる。
「やめ――」
『あああああああああああ!!』
断末魔が響き、血飛沫が吹きあがる。
また一騎、竜騎士が落とされた。
『いや、いや、いや……』
竜騎士達の恐怖で震えた声が、魔導具を通して響く。皆、目の前の黒騎士に恐怖を抱き、動けなくなっていた。
一度剣を振るい、血を振り払う。黒騎士が再びこちらへと目を向けてくる。
フルフェイスの兜で覆われ、表情が見えない。暗く閉ざされた兜の向こう側からじっとこちらを見ている事だけはわかった。
ぞっとするような恐怖を感じる。目の前の黒騎士が、人でない何かの様に見えた。
大きく歓声が響く。目の前の状況を理解し始めた、敵軍の兵達から歓喜の声が上がる。
そして、それとは対照的に、エルバート達の後方に控えていた王国軍からは、無言の不安と恐怖に包まれた空気が感じられた。
竜騎士は、マイクリクス王国が、神聖竜の加護を受けている事への象徴だ。故に、最強であり続けなければならない。
小国であるマイクリクス王国が存続しつづけられたのは、神聖竜の加護――竜騎士の力があったからだ。幾つもの戦争に勝ち続けられたのも竜騎士の力があったからだ。
それだけに竜騎士の存在は、戦場に置いて絶対的な勝利と繁栄の象徴であり。それが破られる事は、敗北と破滅を想起させられる。
戦力比は未だに優勢。けれど、士気に置いては完全にこちらが劣勢であり、このまま突撃をかけられれば、敗走さえもありえる。
きらりと日の光を浴びて、黒騎士の剣が輝く。その剣の表面に自分の姿が映り、それが次第に妻と息子達の姿が映っている様に見え始める。
この戦場の向こうには、大切な家族がいる。ここで敗北は、黒騎士の剣が一歩、そこへ近付くことを意味する。そして、いずれは目の前の竜騎士達の様に、その剣が家族に振り下されるかもしれない。
怒りが沸いてくる。そのような現実は認めてはならない。
「うろたえるんじゃねえ! お前ら! 俺達はまだ、負けてはいない!」
仲間と、それから自分を鼓舞する様に、エルバートは叫ぶ。
「相手はたった一騎だ! 多少の小細工で驚かされはしたが、手の内が分かれば大した事は無い。まだ二騎落とされただけだ! それで、俺達の優位が揺らぐことは無い!」
叫ぶ。そして、一瞬の静寂。
エルバートの言葉がどう届いたかは分からない。けれど、少しは冷静さを取り戻したのだろう。恐怖で震える声が、少しばかり少なくなっていた。
「少しは冷静さが戻ったか? お前ら」
『すまない。まさかここまで自分が取り乱してしまうとは、思いもしなかった』
ディオンの返事が返ってくる。
『それで、どうする?』
「倒すしかないだろ。俺達に敗北は許されない」
『だが……あんなのを相手に……勝てるのか?』
「まだビビってんのか? 相手が勝てたのは、竜銃という武器を隠していたからだ。それが明るみに出てしまえば、どうってことは無い」
竜銃は確かに強力な武器であり、竜騎士に対抗しうる武器でもある。だが、避けられず、防げない武器ではない。不意を突かれなければ、対応できる。
『だが……』
手の内は分かった。けれど、先ほどの黒騎士の姿が後を引き、勝というイメージが沸かないのだろう。弱気なディオンの声が返ってくる。
再び挑発するかのように黒騎士が剣を向け、一騎打ちを挑んでくる。それを見返し、睨みつける。
そうやって一騎ずつ戦い、一つずつ落としていくつもりなのだろう。
だが、もうそのような好き勝手はさせない。
(悪いが、もう誰も、殺させねえ……)
「俺がやる」
『お前が? だが――』
「相手は強い。なら、こっちも最強のカードを切る必要があるだろ。後の事は任せる」
止めるようなディオンの声が響く。だが、エルバートはそれを無視し、手綱を操りと共にフェリーシアを前へと進ませる。今度は逆らわず、言う事を効いてくれた。
対峙する様にエルバートとフェリーシアは、黒騎士の目の前に出る。黒騎士がこちらを見返してくる。
相変わらず表情も感情も見えてこない。
黒騎士の目の前に立つと、礼儀に習いエルバートはランスを掲げる。
「俺は、『白雪竜騎士団』団長にして、『氷雪の竜騎士』の二つ名を持つ竜騎士、エルバートだ。今度は俺が相手を竜殺し」
名乗り、宣言する。黒騎士はそれに、また答えを返す事は無かった。
「名乗る気は……ない。か。なら、貴様の名を残すことなく、この地に消えるがいい。行くぞ、フェリーシア!!」
合図と共に鐙を蹴る。それに呼応し、フェリーシアが大きく咆哮を上げると共に、羽ばたき、駆け出した。
翼をたたみ、落下の勢いを乗せて、フェリーシアが黒騎士に突撃をかける。
黒騎士が竜銃の銃口を向けてくる。マズルフラッシュ。
フェリーシアが即座に翼を開き、瞬時に方今転換をかける。黒騎士の竜銃から放たれた熱線が、フェリーシアの脇を掠め、その熱を受け小さく呻く。
「痛いか? 悪ないな。耐えてくれ、フェリーシア」
フェリーシアは飛竜の中では珍しい、水や冷気の属性を強く持つ飛竜だ。それだけに、熱による攻撃に弱い。その痛みはきっと、生半可なものではないだろう。
フェリーシアの身体が大きくそれ、黒騎士の横を駆け駆け抜ける。そして、後方へと回ると、大きく旋回し向き直る。
「正確な射撃だ……」
再び対峙し、黒騎士を睨みつけ、歯噛みする。
真正面から突撃をかければ、そのまま撃ち抜かれる。だからといって、旋回しながらの突撃は難しい上に、それで速度を落としてしまえばそれこそ的に成る。そう、理解できるほどに、早く正確な射撃を見せてくれた。
エルバートはランスを仕舞い、腰のホルスタから竜銃を引き抜く。ランスによる突撃は、現状良い手ではない。なら、こちらも竜銃を使うまでだ。
「ファリーシア!」
再び鐙を踏み、フェリーシアに突撃をかけさせる。
上空から、速度に体重を乗せ、良い気に黒騎士へと肉薄する。
再び黒騎士が竜銃の銃口をこちらへ向けてくる。それに合わせ、エルバートも竜銃を黒騎士へと向ける。
マズルフラッシュ。今度はエルバートが竜銃を放った。黒騎士は既に攻撃を諦めていたのか、横へ飛び竜銃の熱線を避けようとする。熱線は黒騎士の肩を掠め、肩鎧を赤く溶断する。
再びフェリーシアが黒騎士の横を掠め飛ぶ。
「いい判断だ」
旋回し、向き直る。横跳びで回避して見せた黒騎士はすぐさま体勢を立て直し、こちらへと向き直っており、じっとこちらへ見返してきていた。
バイザー越しに見える微かな目の光、まだ戦う意志を示していた。
あの眼は、自分の死が目の前にあったとしても戦いを終えない戦士の目だ。目の前の敵が、進むことをやめなければ、きっとその剣は、その先へと届く。その事を思い浮かべると、再びぞっと恐怖が沸いてくる。
この敵は此処で倒さなければならい。そう強く思えた。
「終わらせるぞ、フェリーシア」
「グルルル」
エルバートの言葉に同意する様に、フェリーシアが大きく喉を鳴らす。
「行くぞ! フェリーシア!」
鐙を蹴り、突撃の合図をかける。フェリーシアはそれに従い、羽ばたき、羽をたたみ一気に黒騎士へと肉薄する。
黒騎士が竜銃を向けてくる。エルバートも竜銃を向ける。
マズルフラッシュ。エルバートが先に攻撃を仕掛ける。今度も黒騎士は即座に攻撃を諦め、回避行動に移り、避ける。
だが、それで終わりではない。フェリーシアが身体を傾け、突撃の軌道をずらす。ほんのわずかな変化。それでは、黒騎士を正面に捉える事は出来ない。けれど、それでいい。
フェリーシアは首をひねり、顔だけ黒騎士の方へと向ける。
青白い光がフェリーシアの首元を走る。そして、フェリーシアの口から真っ白な霧の様な何かが吐き出される。
すべてを凍て付かせる冷気のブレス。それが、一瞬のうちに空気の熱を奪い、空気中の水分を氷結させる。
白くキラキラと輝く、冷気に包まれた息が、そのまま黒騎士の身体を包み込む。
そして、最後に大きく広げた翼を、冷気に包まれた黒騎士の身体に叩き付ける。武器としの機能は無い。けれど、固い骨格と外皮に包まれた翼が、速度に乗って叩き付けられれば、それは相当な威力となる。
黒騎士の身体が大きく吹き飛ばされ、宙に舞い、地面へと叩き付けられる。
強力な冷気で冷却され脆くなった鋼鉄製のよ鎧が、その衝撃で砕け散る。
まだ、止めではない。エルバートは駆け抜けたフェリーシアをすぐさま方向転換させる。
相手はまだ動く、フェリーシアの一撃で動けなくなっている間にとどめを刺す。
黒騎士を正面に捉える。黒騎士は鎧を半壊させながらも、痛みに耐え、立ち上がろうとする。
「終わりだ」
フェリーシアを走らせ、そして、エルバートは竜銃を黒騎士へと向ける。
黒騎士の崩れた兜が、支えを失い地面へと落下する。引き金に指をかけた時、黒騎士の素顔が見えた。
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タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
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