笑顔戦記 

零式菩薩改

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目覚める魔界の住人

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「デタメトは、遊びがぎたな。大体あいつは、戦闘力が無さ過ぎだ。まぁ、ダンピール娘を手に入れるのと、時間稼ぎの役には立ったが。あと少し時間がいる。勇者か――不思議な魔法を使うようだ。ボダリア国が私の居た世界から召喚しただけの事はある。計画の邪魔な者は、ここで始末した方がよさそうだな」

 暗黒教祖の独り言が耳に入って来た。俺の事も知っていたのか? あいつも俺達の居た世界からの転移者なのか? 他にも異世界転移して来た者が存在したのを知った俺は、驚いていた……。
 俺が少し気が散っている瞬間に、暗黒教祖が何やら呪文のような言葉を唱えた。すると、暗黒教祖が五人に増えたのだ。分身魔法か。俺は、いきなりで驚いた。しまった。奴は、俺達を始末すると言っていたのに、俺は馬鹿ばかだ。教祖だから弱いかも? 勝手にイメージして、高をくくっていた。

「そりゃー! 死ねー!」

 掛け声を出しながら、暗黒教祖の分身の四体がメイスを構え、俺達に襲い掛かって来た。俺とラピーチが二体を相手すると残り二体がリンと美姫を襲った。

「しまった! リン、美姫逃げろ!」

 ラピーチのあわてた様子の叫び声。皆が、あとは教祖が一人と思っていたのだろう。だから俺と同じで油断していたはずだ。

「美姫、下がって! 私が相手するわ!」

 リーエルがそう叫び、美姫のフォローに入り応戦している。だが、リンは、なすすべが無かった。教祖の分身のメイスが彼女の体を容赦ようしゃなく襲う。
 メイスの攻撃を体にまともにらったリンは悲鳴をを上げて、その場に倒れこんだ。すると暗黒教祖の分身は全て消えた。

「リン! 大丈夫!?」

 リーエルの言葉にリンの反応は無い。すぐにリーエルがリンのそばに駆け寄り、様子を見ている。

「大丈夫よ。気絶しているだけだわ。怪我は無いみたいよ」

 リーエルの言葉に俺は、安堵あんどした。精神攻撃をした訳か。結果的に大戦力のリンが戦線離脱とは。まだ化け物もいるのに辛いな。
 俺達がリンに気を取られているすきに暗黒教祖は、巨大な化け物の目の前に立ち、右手にブラッククリスタルを持っている。

「フフフ、あの魔導士は経験もありそうで、一番厄介だった。さてと、そろそろか――魔界の住人ヤミラスよ! 目覚め給え! 私とブラッククリスタルを血肉とし、私と一体化し給え!」

 そう言い巨大な化け物の目の前に立ち、右手のブラッククリスタルをかかげた。

「ヤミラス? 皆、やばい雰囲気だ! 注意するんだ!」

 俺は、自分にも言い聞かす意味もあり皆に叫んだ。魔界の住人ヤミラスだって? よく分からないが、震える体が恐怖の存在だと感じ取っている。

 ヤミラスの眼が完全に開き、暗黒教祖を見詰めている。

「ワギャギャーウォー!」

 ヤミラスは、大きな咆哮ほうこうをした。そのせいで神殿が振動する程だった。

「う、うるせーな。耳がどうにか成りそうだぜ」

 ラピーチが耳を押さえながら言う。その傍に寄っていた美姫が引きった表情でヤミラスを指さした。その指先では、ヤミラスが暗黒教祖を手で掴んでいた。そして、口まで持って行き、暗黒教祖とブラッククリスタルを丸呑みしたのだ……。
 何なんだこの光景は。一体化したのか? 時間がたったら、下から変化されて出て来るのかな? などと考えてる余裕は無いだろ俺!

 ヤミラスが再び大きな咆哮を上げると、奴の座ってる場所が黒く変色しだした。すると神殿が大きく揺れ出す。壁がひび割れて崩れ出し、柱も倒れそうになっている。

「皆、外に逃げろ! 神殿が崩れるぞ! 急げ!」

 ラピーチは、神殿からの撤退てったい命令を出した。そうだ。この神殿が俺達の墓になるのはごめんだ! 
 俺とラピーチは、リンを担いで小走りで、出口へ急いだ。
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