私との婚約は政略ですから、恋人とどうぞ仲良くしてください

稲垣桜

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マテオ・ラングポートの考察

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 俺はラングポート公爵家の三男として何不自由なく生活してきた。

 長兄は次期公爵として、次兄もそのスペアとして厳しい教育を受けていた。そして俺も例にもれず一緒の教育を受けていたが、兄たちほど厳しくはないものの、普通の貴族家の令息よりも難しく複雑な勉強を義務のように課せられていた。

 だが、年の離れた長兄が結婚して子供が生まれたことで、俺に家督が回ってくる可能性はなくなった。その為、俺の受ける教育は一般令息のソレと変わらないものとなり、将来のこともそう気負わなくてもよくなったのだ。
 次兄もスペアの必要もなくなったが、兄の補佐の必要もあって公爵家の保有するサキエル伯爵を継承する予定だ。そして俺も兄と同じように公爵家の保有する子爵化男爵を継承するか他家へ婿入りという方向性が確定となった。



 ある時、幼いころから剣術を教えてくれていた母方の叔父が騎士団の一線を退き、後進を育てるために新人騎士を養成する騎士養成学校へと異動になるのだと挨拶に来た。
 母の実家の侯爵家は昔から武官の血筋で、祖父も伯父も騎士団に所属していた。ラングポート公爵家もどちらかというと騎士関係の職に就くものが多い家系だ。それであれば、俺も騎士を目指すのも悪くないのだろうと叔父に相談をしてみると、諸手を挙げて喜んでくれた。

 レイフォール学園を卒業した後に騎士養成学校へと編入するため、選択教科も騎士科へ進学する際に必要なものをすべて選んで騎士としての道を歩み始めた。
 もちろん、俺と同じような生徒も多かったこともあって、学園生活は楽しいものだった。

 入学して同じクラスの中でも仲良くなった令嬢や令息も多かったが、その中でもいつも一緒に行動していたのはヒースだ。彼もまた騎士に興味を抱いているようで、話が合った。
 令嬢ではエリザベス嬢やローズマリー嬢、ルチア嬢、ジーナ嬢と仲良くなった。入学してほぼすぐにこの五人で行動するようになった。

 ある時、ルチア嬢の動作が気になった。
 
 学園の廊下で、突然エリザベス嬢を庇うように前に立ち、前からくる上級生から隠すようにしていたのだが、俺もなぜか同じようにエリザベス嬢の前に立った。

 その時、一瞬だが、前から来た男子生徒―――ルカ・コゼルス侯爵令息が俺に視線を向けたのを感じた。

 冷たいソレ視線だ。

 後からエリザベス嬢に彼のことを聞いてみると、コゼルス侯爵令息はエリザベス嬢の婚約者なのだと話してくれた。
 エリザベス嬢の婚約者?その割に、隣に一緒にいたウィローズ公爵令嬢との噂はどういうことなのだろう。

 あの二人はお似合いの恋人なのだと校内でよく耳にしていた。ウィローズ公爵令嬢は先だって公爵令息との婚約がなくなったと母が話していたのを聞いた。その理由も本当かどうかはわからないが、彼女が公爵家に相応しくないとかなんとか。まあ、わがままだと有名だから、わかる気がするな。

 だが、二人が恋人同士なら、あの視線はいったい何だったのだろう。



 そんな視線を感じていたある日、俺は声をかけられた。

 


「君はラングポート公爵令息だね?」

「コゼルス次期侯爵殿。私に何か御用でしょうか」


 俺は気に入らなくてつい悪態を吐きそうになり、返事は嫌味っぽくなったのは否めない。だが、この男の顔を見ているとどうしてもエリザベス嬢の顔がちらつく。
 彼女がどんな気持ちでいるのか考えているのかと、この先どうしようと思っているのかと苛立つものの、冷静に考えると、今この瞬間に声をかけてきた理由に興味もわいてきた。


「君に頼みたいことがある」

「俺に…ですか?」

「ああ、ラングポート公爵家の人間として、そしてリズの友人としての君にだ」


 リズ…?ああ、エリザベス嬢のことか。彼女を愛称で呼ぶほどの仲だと言いたいのだろうか?それなら、彼女との関係は?ウィローズ公爵令嬢との関係は一体どういうことなのだろうか。

 そして俺たちは近くの空き教室へ入り、人がいないことを確認して彼からここだけの話だと前置きした上で事の真相を俺に告げた。


『リリアンナの側に居ないとリズに危害が及ぶ。彼女を守るために、俺はあの女の側に居るだけだ。俺のいないところでリズのことを見ていて、何かあれば守ってほしい』


 それを聞いた俺は、エリザベス嬢を守ることは当たり前だ。大切な友人なのだから、悪意にさらされるのであればみんなで盾にもなるつもりだ。
 だが、それを言ったところでコゼルス侯爵令息の視線はな感じになる。
 つまり、俺なんかに頼むのではなく自分で守りたいのだろうな。

 それをきちんとエリザベス嬢に伝えればいいのに、なんで言わないんだ?

 えっ?顔に出るから?

 そんな理由で?



 みんなでピクニックへ行くと決まった時、俺は一応アイツにそのことを知らせておいた。後から難癖付けられるのも嫌だったし、すれ違いざまにヒースとそんなことを話題として口にした。

 だから、まさか二人が公園に現れるとは思わなかった。それも腕を組んでだから始末が悪い。
 エリザベス嬢は彼に気が付いて視線を外し俺の陰に隠れるようにしたのだが、その時もあの冷たいんだか熱いんだかわからない鋭い視線が俺に向いていた。

 どういう意味だと問いたいくらいだったが、向こうから何も言わない以上こちら側から聞くつもりはない。俺は公爵家とは言え三男だ。片や向こうは次期侯爵だ。学園では平等といったところで、やはり抵抗はある。

 


 アイツ…

 このままだとエリザベス嬢に捨てられるな。
 





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