私との婚約は政略ですから、恋人とどうぞ仲良くしてください

稲垣桜

文字の大きさ
26 / 64

ルカSIDE 7.

しおりを挟む
 夏の長期休暇になり、俺は毎年の事のようにあの女に呼び出された。
 先に過度な接触は断ると言っていたことから、この夏期休暇の間は数回連れ出されただけだった。

 だが、その連れ出された先は、高位貴族の間で開催されるお茶会や夜会で、気軽に参加できるほど格式張ってはいないものだ。そもそも学園の付き合いの延長と言ってもいいだろうが、俺としても次期侯爵として参加する時のパートナーくらいの扱いなのだと割り切っていた。

 周囲の目にどう映っているかなど考える余裕もなく、ただこの時が終わることだけを考えて過ごしていたのだ。
 俺の気持ちがブレなければ、それでいいのだと。真にリズだけを想い続けているこの気持ちが大切なのだとただそれだけを心の中に抱いていたのだ。


 ある時、ユーゴ第二王子の同学年と近い年代の高位貴族を中心に招待したお茶会が開かれた。
 俺は同級生でもあり次期侯爵ということで招待状が届き、あの女のところにも同級生としてと、それとウィローズ公爵令嬢として同じく招待状が届いていた。
 そうなると、会場でもまとわりつかれるだろうと覚悟した。

 最悪だ。
 リズは夏期の休暇が入ると同時に彼女の母がいる領地へと出発していたから、会場で鉢合わせすることはない。まあ、今回のお茶会も高位貴族とはいえ伯爵家は除外されている。どうやら別日で行われるらしいが、一緒に参加できないならいちいち考えるまでもないことだ。



 そのお茶会に参加してみると、やはりあの女はべったりと俺にまとわりついてくる。
 取り繕うように俺も笑顔を浮かべるが、そんな俺に向けられるリズの同級生のヴィルマ公爵令嬢ローズマリーラングポート公爵令息マテオの俺を見る目が冷たいとは感じていた。
 ラングポート公爵令息には話をしてあるとはいえ、やはり視線は以前とは変わらない。

 あの視線は俺に対する不信感なのだろう。

 リズの婚約者の俺が他の女と親しくしている姿は、やはりどんな理由があろうとも不誠実そのものなのだから仕方はない。



 今頃リズは領地で何をしているのだろうか。
 今の季節はあの地では星降祭がある。リズと初めて出会った祭だ。
 

 あの時のリズは瞳がくりくりしていて、とても可愛かった。ほんの少しの時間しか一緒にいられなかったけれど、俺にとっては一生忘れられない時間だった。
 そして俺のリズへの執着の始まりだった。

 何度も父に彼女との婚約を望んでようやく認めてもらえるまで数年。そしてようやく婚約できても気の利いた話もできなくて態度は悪かっただろうという感は否めない。
 毎回反省しているところへ彼女が領地へ行くことになったり兄の件があったり。そして今のこの状況だ。俺にとっては悪いことばかりが続いている。


 一度、教会でお祈りをささげてきた方がいいだろうか。

 はぁ。

 用事があるからと帰ってしまえばいいが、このお茶会に参加しているメンバーは、いずれ侯爵となった時に必要な人脈につながるのだからそう邪険にすることはできない。
 あの女のことはいないものとして扱いたいが、後から文句を言われてリズに何かあってはいけない。そうならないためにも、ある程度のも必要だろうが、それとこれとは別だ。


「ルカ、帰りに買い物に行きたいのだけど、一緒に行かない?」

「すみません。今日はこの後、父と約束があるので行けません」


 卒業した後は次期侯爵として引き継ぐべき業務が多くなることを知っているリリアンナは、こう言えば強く出ないことを俺もこの数年で学んだ。
 以前は荒れだったが、卒業が間近ともなればこういう言い訳が使えるのだ。

 言い訳するよりもさっさとリリアンナを突き放してしまえばいいのに、リズのことを考えると行動しきれない自分が情けなくて仕方ない。

 リリアンナは公爵令嬢だ。ウィローズ公爵が可愛がっているという話も俺の耳に届くほどだから、何かあってコゼルス侯爵家やリンデン伯爵家になにかあっても困る。

 もう少し。

 もう少しの辛抱だ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?

水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。 メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。 そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。 しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。 そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。 メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。 婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。 そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。 ※小説家になろうでも掲載しています。

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

処理中です...