10 / 41
9
しおりを挟む
夜になり、マックスが帰ってきたので、「お義父様たちが戻られるそうよ」と話したところ、何時もあまり変わらない表情が珍しく、パッと明るくなったような気がした。
私も表情に出ていたのだろう、すぐに取り繕うが「そうか」と言って目をそらす。
その言葉と表情に直感で何かを感じた私は、さりげなく「どうしたの?気になることでもあった?」と声をかけた。すると「いや、リオがいないとなんか物足りなくてな」などと言ったのだ。
(絶対に嘘だな。何か隠してる??)
結局、私の抱いたその違和感はぬぐえないまま終わったけれど、まさか数日後に私の直感が大当たりするとは思わなかった。
二日後、領地から戻られた義両親を出迎え、馬車に揺られ疲れた様子だったことから「今日はゆっくりとお休みください。向こうでのお話は明日にでもゆっくり聞かせてくださいね」と告げて部屋を後にした。
リオ君はもう眠ってしまっていたので部屋へと連れて行き(寝顔が天使だわ)義両親もそのまま部屋へと入られたのを確認し、私も離れへと戻った。
そして次の日の昼過ぎに、義母から本館のテラスでお茶をしようとお誘いがあった。
「お義母様、お疲れはもう取れましたか?」
「もう通常通りよ。旦那様が休みながらの方が楽だって気を使ってくれていたから、一晩眠ったらもうすっかり」
「お義母様達は本当に仲がよろしいですね。見ている私も照れてしまいますわ」
「まあリディ。あなたも新婚でしょう?マックスも旦那様に似ているから、愛情表現は豊かでしょう?」
「マクシミリアン様が……ですか?」
「違うの?」
義母の言うマックスとは他の人間ではなかろうか……
あの無表情、無関心のマックスが、愛情表現豊か??そんなことはない。しかし、義姉の友人だった義母がそう言うからには、あの表情は作り物なのだろうか……
「マクシミリアン様は、あまり表情にはお出しになりません。お言葉もあまり……」
「そうなの?あの子、照れてるのかしらね。リディは可愛いから」
義母の口からあり得ない言葉が出た、可愛いって何?これほど私に似つかわしくない言葉を聞くとは。
「お義母様。可愛いだなんて御冗談を言わないでください」
「冗談じゃないわ。あなたに似合うドレスを仕立てて、あなたに合った化粧と髪型をしないからよ。あなたは間違いなく原石よ。宝石の原石」
そう断言した義母は「マックスに任せていられないわね」と次回の王宮で行われる舞踏会のドレスを私が手配するからと宣言し、嬉しそうに御用達のデザイナーに連絡を入れるように伝えている。
そのまましばらくドレス談義をしているとマックスが帰宅したようで、義母が「ここへ呼んでくださる」と侍女に伝えている。マックスが来るなら丁度切り上げるタイミングかな。
私は彼が来る前に席を離れ、お花摘みに行くために席を外した。
戻ってくると、テラスの方から楽しそうな笑い声が耳に届き、それがマックスと義母の声だとわかるが、こんな彼の笑い声を聞いたのはもしかすると初めてかも。
そして目に入った二人の姿は、誰が見ても恋人同士か夫婦にしか見えない。遠目にも、マックスが熱のこもった瞳で義母を見つめていて、その頬は少し赤い…かな?
その光景を目にした瞬間、私の中で欠けていたパズルのピースがカチッと音を立ててはまった。
(マックスってお義母様の事が好きなのか。だから私に契約をもちかけたのね……)
私も表情に出ていたのだろう、すぐに取り繕うが「そうか」と言って目をそらす。
その言葉と表情に直感で何かを感じた私は、さりげなく「どうしたの?気になることでもあった?」と声をかけた。すると「いや、リオがいないとなんか物足りなくてな」などと言ったのだ。
(絶対に嘘だな。何か隠してる??)
結局、私の抱いたその違和感はぬぐえないまま終わったけれど、まさか数日後に私の直感が大当たりするとは思わなかった。
二日後、領地から戻られた義両親を出迎え、馬車に揺られ疲れた様子だったことから「今日はゆっくりとお休みください。向こうでのお話は明日にでもゆっくり聞かせてくださいね」と告げて部屋を後にした。
リオ君はもう眠ってしまっていたので部屋へと連れて行き(寝顔が天使だわ)義両親もそのまま部屋へと入られたのを確認し、私も離れへと戻った。
そして次の日の昼過ぎに、義母から本館のテラスでお茶をしようとお誘いがあった。
「お義母様、お疲れはもう取れましたか?」
「もう通常通りよ。旦那様が休みながらの方が楽だって気を使ってくれていたから、一晩眠ったらもうすっかり」
「お義母様達は本当に仲がよろしいですね。見ている私も照れてしまいますわ」
「まあリディ。あなたも新婚でしょう?マックスも旦那様に似ているから、愛情表現は豊かでしょう?」
「マクシミリアン様が……ですか?」
「違うの?」
義母の言うマックスとは他の人間ではなかろうか……
あの無表情、無関心のマックスが、愛情表現豊か??そんなことはない。しかし、義姉の友人だった義母がそう言うからには、あの表情は作り物なのだろうか……
「マクシミリアン様は、あまり表情にはお出しになりません。お言葉もあまり……」
「そうなの?あの子、照れてるのかしらね。リディは可愛いから」
義母の口からあり得ない言葉が出た、可愛いって何?これほど私に似つかわしくない言葉を聞くとは。
「お義母様。可愛いだなんて御冗談を言わないでください」
「冗談じゃないわ。あなたに似合うドレスを仕立てて、あなたに合った化粧と髪型をしないからよ。あなたは間違いなく原石よ。宝石の原石」
そう断言した義母は「マックスに任せていられないわね」と次回の王宮で行われる舞踏会のドレスを私が手配するからと宣言し、嬉しそうに御用達のデザイナーに連絡を入れるように伝えている。
そのまましばらくドレス談義をしているとマックスが帰宅したようで、義母が「ここへ呼んでくださる」と侍女に伝えている。マックスが来るなら丁度切り上げるタイミングかな。
私は彼が来る前に席を離れ、お花摘みに行くために席を外した。
戻ってくると、テラスの方から楽しそうな笑い声が耳に届き、それがマックスと義母の声だとわかるが、こんな彼の笑い声を聞いたのはもしかすると初めてかも。
そして目に入った二人の姿は、誰が見ても恋人同士か夫婦にしか見えない。遠目にも、マックスが熱のこもった瞳で義母を見つめていて、その頬は少し赤い…かな?
その光景を目にした瞬間、私の中で欠けていたパズルのピースがカチッと音を立ててはまった。
(マックスってお義母様の事が好きなのか。だから私に契約をもちかけたのね……)
366
あなたにおすすめの小説
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様
日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。
春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。
夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。
真実とは。老医師の決断とは。
愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。
全十二話。完結しています。
公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜
平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。
レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。
冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい
花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。
ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。
あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…?
ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの??
そして婚約破棄はどうなるの???
ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる