【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。

稲垣桜

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 身体が重く感じてうっすらと目を開けると、そこには見慣れない光景が広がっていた。

 動こうとすると、なぜか動けない。そこで、今自分が誰かの腕の中で何も纏っていないことに気が付いた。


 えっと…昨日、レ・グランでマックスに見つかって、屋敷に戻ってから飲みながら話をしたはず……それから………覚えてない。


 真実を探るように一生懸命に記憶の糸を手繰り寄せる。するとその記憶が断片的に思い出されてきて驚愕した。

 脳裏に浮かぶのは、がっしりとした体を惜しげもなく見せつけ、欲の孕んだ瞳を私にまっすぐに向けるマックスの姿だ。

 その腕の中で反転し、その腕の持ち主を見上げると、そこには記憶通り、マックスの顔がある。そして一瞬ののち、目を開いて今まで見たことのないような優しい微笑みを浮かべ「起きたのか?リディ。おはよう、俺のリディ。愛してるよ」と私に向かってそういったのだ。


 耳から入ったその言葉は、自分の頭の中で処理しきれずにそのまま宙を漂った。


 愛してるってだれを??


 だって、愛を求めるなって求めないって言ってたよね。白い結婚だって。



 身体の怠さや下半身に感じる違和感、そして肌に散る赤い痕がその事をまるで否定するように現実を突きつけている。

 そして彼は契約内容について身勝手なものだったと謝っているが、そもそも彼は義母が好きなのだから、こんな関係になることは望んでいないはずだ。



 それなのに、私と本当の夫婦になりたいと告げて、義母の事は今はもう違うのだと、今は私に好きになってもらいたいと言っている。
 それこそ本当なのか疑ってしまうが、意地悪な顔をして昨日の夜のことをほのめかす。



 確かに昨日は酔っていた。


 マックスの視線から逃げるように、ついつい飲みすぎた。


 アルコールはあまり飲めないのに、口当たりの良いブランデーを度数が高いことを失念し飲みすぎたようで、あっという間に酔いが回った。

 そして、マックスの言った「積極的に」という言葉は、あながち嘘ではなかったことが、自分の記憶の中の映像で理解した。


 彼の名前を呼び、両腕を伸ばして彼を求め、そして抱き寄せていた……


 間違いなく事後よね…覚えてるもん。



 しかも、この身体の怠さと痛みは、一回やそこらじゃない。なんてことだ……
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