2 / 5
2. 夜会へ
しおりを挟む
私が婚約をした16歳の時、ブランゼス様は21歳だった。
20歳を超えた令息が婚約者すらいないということは珍しく、どちらかというと結婚している年齢と言ってもおかしくないのだが、ブランゼス様は周囲からの圧力に屈するわけでもなく、公爵家という立場もあってか悠長に構えているようなそんな雰囲気を感じさせる人だった。
また愛想が悪いと思うほどの無表情で、会話もあまりしない人で、私も少し困惑することもないこともなかった。
そして社交界では次期公爵ということとその麗しい容姿も相まって令嬢たちからの人気は高く、婚約が決まった直後の夜会では令嬢方からの視線が痛かったほどだ。
もし会場でダンスでもしようものなら、令嬢たちもそうだがその親世代からも冷たい目で見られた。自分の娘の嫁入り先の優良候補が無くなったのだからまあそれは仕方ない。
ブランゼス様は騎士団に所属しており、その腕はかなりのものだ。
そういえば、親友のビアンカと騎士団が行う大会を観戦した時も何度か見かけた(気がする)が、確かいつも上位に名を連ねていた記憶がある。もしかするとビアンカの従兄が出るからと挨拶に行った時に同じ控室にいたかもしれない。
そのブランゼス様は騎士団の寮で生活し、家に帰ってくるのは用事のある時か連休が取れた時くらいだ。
それが婚約したからと変わる訳でもなく、私と会う日は月に数えるほどだった。
しかもその日も急遽中止になったりすることが多く、婚約して一年が過ぎるころになっても会った回数は10回にも満たなかったほどだ。
だが、断りの連絡があるときには花が届けられたり、誕生日にはきちんと贈り物も届けられた。
ただ、色々な宴に関しては騎士団として会場の警備に着く必要があり、私は家族と参加するか欠席することがほとんどだった。
ブランゼス様も特段気にしていなかったようで、私も社交があまり好きではなかったこともあって、欠席しても問題にはならなかった。
どうしても参加が必要な宴にだけ二人で参加するくらいだった。
婚約者らしい会話もほとんどなく、宴の会場でもある程度の時間がたてば別々に行動することも多々。その冷たい態度は私限定という訳ではないが、繰り返されると私の心も冷えていく。
気持ちが冷えるというのではなく、どこかで寂しく感じているというものだがそれを口にすることはなかった。
そして結婚式をあと半年にせまったある日、会場である話を耳にした。
「ねえマイラ?ブランゼス様はなんて言ってるの?」
「…仕方ないって。親の命令で婚約したって」
「なにそれ?ブランゼス様はマイラと結婚するって言ってたんでしょ?」
「…うん。彼…とても辛そうなの」
(マイラ?ああ、確かエーレ子爵家の令嬢ね)
私はチラリと声のする方を見て、そのマイラという女性を見たが、柔らかな明るいブラウンの髪がよく似合う小柄で可愛らしい女性だ。
確かエーレ子爵は国内でも大きいシラキード商会の会頭だったはず。マイラ様はそこの令嬢なのか。
(二人は結婚する約束をしていたのかしらね。ブランゼス様はこういう女性が好きなのかしら)
私はどこからどう見ても彼女のように可愛い系ではない。赤い髪は気の強さを表すようで、令息には人気がない色だ。彼女のような容姿であれば、ほとんどの令息は私のような女よりも彼女を選ぶだろう。それほど私は可愛らしくはない。
気付かれないようにその場を離れた私は、外に出て風に当たった。
20歳を超えた令息が婚約者すらいないということは珍しく、どちらかというと結婚している年齢と言ってもおかしくないのだが、ブランゼス様は周囲からの圧力に屈するわけでもなく、公爵家という立場もあってか悠長に構えているようなそんな雰囲気を感じさせる人だった。
また愛想が悪いと思うほどの無表情で、会話もあまりしない人で、私も少し困惑することもないこともなかった。
そして社交界では次期公爵ということとその麗しい容姿も相まって令嬢たちからの人気は高く、婚約が決まった直後の夜会では令嬢方からの視線が痛かったほどだ。
もし会場でダンスでもしようものなら、令嬢たちもそうだがその親世代からも冷たい目で見られた。自分の娘の嫁入り先の優良候補が無くなったのだからまあそれは仕方ない。
ブランゼス様は騎士団に所属しており、その腕はかなりのものだ。
そういえば、親友のビアンカと騎士団が行う大会を観戦した時も何度か見かけた(気がする)が、確かいつも上位に名を連ねていた記憶がある。もしかするとビアンカの従兄が出るからと挨拶に行った時に同じ控室にいたかもしれない。
そのブランゼス様は騎士団の寮で生活し、家に帰ってくるのは用事のある時か連休が取れた時くらいだ。
それが婚約したからと変わる訳でもなく、私と会う日は月に数えるほどだった。
しかもその日も急遽中止になったりすることが多く、婚約して一年が過ぎるころになっても会った回数は10回にも満たなかったほどだ。
だが、断りの連絡があるときには花が届けられたり、誕生日にはきちんと贈り物も届けられた。
ただ、色々な宴に関しては騎士団として会場の警備に着く必要があり、私は家族と参加するか欠席することがほとんどだった。
ブランゼス様も特段気にしていなかったようで、私も社交があまり好きではなかったこともあって、欠席しても問題にはならなかった。
どうしても参加が必要な宴にだけ二人で参加するくらいだった。
婚約者らしい会話もほとんどなく、宴の会場でもある程度の時間がたてば別々に行動することも多々。その冷たい態度は私限定という訳ではないが、繰り返されると私の心も冷えていく。
気持ちが冷えるというのではなく、どこかで寂しく感じているというものだがそれを口にすることはなかった。
そして結婚式をあと半年にせまったある日、会場である話を耳にした。
「ねえマイラ?ブランゼス様はなんて言ってるの?」
「…仕方ないって。親の命令で婚約したって」
「なにそれ?ブランゼス様はマイラと結婚するって言ってたんでしょ?」
「…うん。彼…とても辛そうなの」
(マイラ?ああ、確かエーレ子爵家の令嬢ね)
私はチラリと声のする方を見て、そのマイラという女性を見たが、柔らかな明るいブラウンの髪がよく似合う小柄で可愛らしい女性だ。
確かエーレ子爵は国内でも大きいシラキード商会の会頭だったはず。マイラ様はそこの令嬢なのか。
(二人は結婚する約束をしていたのかしらね。ブランゼス様はこういう女性が好きなのかしら)
私はどこからどう見ても彼女のように可愛い系ではない。赤い髪は気の強さを表すようで、令息には人気がない色だ。彼女のような容姿であれば、ほとんどの令息は私のような女よりも彼女を選ぶだろう。それほど私は可愛らしくはない。
気付かれないようにその場を離れた私は、外に出て風に当たった。
13
あなたにおすすめの小説
亡き姉を演じ初恋の人の妻となった私は、その日、“私”を捨てた
榛乃
恋愛
伯爵家の令嬢・リシェルは、侯爵家のアルベルトに密かに想いを寄せていた。
けれど彼が選んだのはリシェルではなく、双子の姉・オリヴィアだった。
二人は夫婦となり、誰もが羨むような幸福な日々を過ごしていたが――それは五年ももたず、儚く終わりを迎えてしまう。
オリヴィアが心臓の病でこの世を去ったのだ。
その日を堺にアルベルトの心は壊れ、最愛の妻の幻を追い続けるようになる。
そんな彼を守るために。
そして侯爵家の未来と、両親の願いのために。
リシェルは自分を捨て、“姉のふり”をして生きる道を選ぶ。
けれど、どれほど傍にいても、どれほど尽くしても、彼の瞳に映るのはいつだって“オリヴィア”だった。
その現実が、彼女の心を静かに蝕んでゆく。
遂に限界を越えたリシェルは、自ら命を絶つことに決める。
短剣を手に、過去を振り返るリシェル。
そしていよいよ切っ先を突き刺そうとした、その瞬間――。
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
大好きなあなたが「嫌い」と言うから「私もです」と微笑みました。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
私はずっと、貴方のことが好きなのです。
でも貴方は私を嫌っています。
だから、私は命を懸けて今日も嘘を吐くのです。
貴方が心置きなく私を嫌っていられるように。
貴方を「嫌い」なのだと告げるのです。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる