幸せな結婚生活まで

稲垣桜

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2. 夜会へ

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私が婚約をした16歳の時、ブランゼス様は21歳だった。

20歳を超えた令息が婚約者すらいないということは珍しく、どちらかというと結婚している年齢と言ってもおかしくないのだが、ブランゼス様は周囲からの圧力に屈するわけでもなく、公爵家という立場もあってか悠長に構えているようなそんな雰囲気を感じさせる人だった。
また愛想が悪いと思うほどの無表情で、会話もあまりしない人で、私も少し困惑することもないこともなかった。

そして社交界では次期公爵ということとその麗しい容姿も相まって令嬢たちからの人気は高く、婚約が決まった直後の夜会では令嬢方からの視線が痛かったほどだ。
もし会場でダンスでもしようものなら、令嬢たちもそうだがその親世代からも冷たい目で見られた。自分の娘の嫁入り先の優良候補が無くなったのだからまあそれは仕方ない。


ブランゼス様は騎士団に所属しており、その腕はかなりのものだ。
そういえば、親友のビアンカと騎士団が行う大会を観戦した時も何度か見かけた(気がする)が、確かいつも上位に名を連ねていた記憶がある。もしかするとビアンカの従兄が出るからと挨拶に行った時に同じ控室にいたかもしれない。

そのブランゼス様は騎士団の寮で生活し、家に帰ってくるのは用事のある時か連休が取れた時くらいだ。
それが婚約したからと変わる訳でもなく、私と会う日は月に数えるほどだった。
しかもその日も急遽中止になったりすることが多く、婚約して一年が過ぎるころになっても会った回数は10回にも満たなかったほどだ。

だが、断りの連絡があるときには花が届けられたり、誕生日にはきちんと贈り物も届けられた。
ただ、色々な宴に関しては騎士団として会場の警備に着く必要があり、私は家族と参加するか欠席することがほとんどだった。
ブランゼス様も特段気にしていなかったようで、私も社交があまり好きではなかったこともあって、欠席しても問題にはならなかった。
どうしても参加が必要な宴にだけ二人で参加するくらいだった。

婚約者らしい会話もほとんどなく、宴の会場でもある程度の時間がたてば別々に行動することも多々。その冷たい態度は私限定という訳ではないが、繰り返されると私の心も冷えていく。
気持ちが冷えるというのではなく、どこかで寂しく感じているというものだがそれを口にすることはなかった。

そして結婚式をあと半年にせまったある日、会場である話を耳にした。


「ねえマイラ?ブランゼス様はなんて言ってるの?」

「…仕方ないって。親の命令で婚約したって」

「なにそれ?ブランゼス様はマイラと結婚するって言ってたんでしょ?」

「…うん。彼…とても辛そうなの」


(マイラ?ああ、確かエーレ子爵家の令嬢ね)


私はチラリと声のする方を見て、そのマイラという女性を見たが、柔らかな明るいブラウンの髪がよく似合う小柄で可愛らしい女性だ。
確かエーレ子爵は国内でも大きいシラキード商会の会頭だったはず。マイラ様はそこの令嬢なのか。


(二人は結婚する約束をしていたのかしらね。ブランゼス様はこういう女性が好きなのかしら)


私はどこからどう見ても彼女のように可愛い系ではない。赤い髪は気の強さを表すようで、令息には人気がない色だ。彼女のような容姿であれば、ほとんどの令息は私のような女よりも彼女を選ぶだろう。それほど私は可愛らしくはない。

気付かれないようにその場を離れた私は、外に出て風に当たった。




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