幸せな結婚生活まで

稲垣桜

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8. 微妙な雰囲気

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「…昨日は町へ出かけたそうだな」

「…ええ。エドモンに教えてもらった家具屋に行きましたが、何か?いけませんでした?」


朝食の時間に席に着いた私に、昨日遅くに帰ってきた旦那様がそう聞いてきた。
そんな風に言い返すつもりはなかったが、つい苛立ってしまった。
旦那様もラウルかキランにでもあの事を聞いたのかもしれないが、私が言い出すのを待っているのか、それとも自分から言いにくいとかなのだろう。

もとより無表情に近い旦那様の表情を読むのは難しい。
だが、この日ばかりはいつもよりも感情が表に出ているようで、それがとても不快に感じた。

私が二人を見て何も言わないことが嫌なのだろうか。それとも知られたことが嫌なのだろうか。
それのどれであっても、私は口にするつもりはない。
言うなら旦那様の方から言うべきことだ。

結局、会話も成り立たないまま改装の予定を書き留め、早々に別荘を出て本宅へと戻ることになった。
もちろん、馬車の中では無言だ。それはまるで婚約者時代に逆戻りしたような感じだ。

そして私はその道中、ずっと窓の外の移り変わる景色だけを見ていた。




本宅へと帰り私宛に届いていた実家からの手紙を開けると、時候のあいさつや体を労わるようにとの言葉の他にマイラ様のことが書かれていた。正確にはエーレ子爵家のことだ。


【エーレ子爵家にはよくない噂がある。気を付けるように】


良くない噂?
どんな噂なのだろうかと考えたが、貴族社会での定番は横領や恐喝などが多いが、そんなことだろうか?

まあ、それであれば旦那様でもお義父様も把握しているだろうから、私が何かする必要もないだろう。
自分の事だけをきちんとしていれば関係することはない。

別宅から帰ってきてから忙しくなった旦那様とは顔を合わせる時間も減ったことで少しは気も紛れ、なにかしら気遣う視線を向けるカイラもこのところは昔の様に戻ってきたようで、私の日常はようやく元に戻りつつあった。


そして季節も秋から冬に移り変わる頃、別宅の改装もそろそろ終わるという連絡を受けて、私は一度確認をするために別荘へと向かうことにした。

幸いというか、旦那様は出かける日の朝に急遽仕事が入ったということで、行くのを延期することになった。
でも、どうせ確認するだけなのだからと、私は旦那様を送り出した後に別荘へと向かうことにした。

いくら近いとはいえ、肌寒く感じる季節だからと馬車の中に厚手のクッションや寒くなった時にでも使えればと毛布も積んでみたが、少し大げさだろうかとカイラと笑った。

別荘までは馬車でも半日ほどだから、急いで行って帰ってきても今日中には戻れるだろうと思って行くことを決断したが、このことを後悔する日が来るとはこの時は考えもしなかった。




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