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ジェイクは着替えてすぐにアントレーヌに向かった。さすがに騎士団の団服では目立ちすぎる。着るとしても向こうに付いて正式に活動を始めてからがいいだろうと考えた。
しかしアントレーヌは貴族街の中でも上級の部類に入る洋装店だ。そうなると客を装うにも自分の給金ではとてもじゃないが手が出るようなものは無いだろうから、店に入るのは無理があるだろう。
下調べをした資料にはエデン地区に工房があると書いてあったのを思い出し、そこへ一度行ってみようとジェイクは馬車へと乗り込んだ。
馬に乗って行けば早いが行った先で馬の扱いに困るのも…と考えて大人しく馬車にした。馬車代は経費として請求するためにきちんと記録も取っておく事は忘れない。
エデン地区には昼には着いたので、とりあえず腹ごしらえをしてからアントレーヌの工房へと向かった。
すると工房には庶民向けの店も併設されていて、ここなら自分でも手が出せるような小物なら売っているかもと思わず足を踏み入れる。
店にいたのは店主ではなく、少し年配で自分の母より少し若いくらいの女性が商品の説明をしてくれた。
商品棚に飾られた小さなポーチは可愛らしい花の刺繍があしらわれていて、提示されている価格はそこそこ値は張るが一般市民でも買えないほどではないというものだった。
ハンカチはそれこそ気軽に買える価格帯だが、刺繍の大きさやその熟練度合いによって倍ほどの金額差があるようだが、見ているだけでも選ぶのが困るほどの種類がある。
女性用だけでなく男性用のもあったので、これでも買って話を繋げるかと考えた。残念ながら今のところジェイクに彼女はいないので、たくさんある女性用を購入したとしても贈る相手がいないのだ。
「すみません。このリーフが刺繍されたハンカチをいくつか見せてください」
そうしてテーブルの上には五種類ほどのハンカチが並べられた。店員が勧めるのは一番高額な品だが、それは出来が他のものと明らかに違う。
「この刺繍、素晴らしいですね」
「お分かりになりますか?こちらは、先達ての領主様御子息のアニバーサリーカードも手がけた刺繍師が作った品ですわ」
「領主様の?これだけの品を作られるのであれば年配の方なんでしょうね」
「それが若い方なのです。驚きでしょう?」
そんな感じで話を続け、彼女の名前がエミリアで息子がレイモンドだとわかった。口が軽い店員はダメだろう。だがおそらく彼女は話したことに気が付いていないくらいジェイクの話術は上手かった。
そしてエミリアの手がけたハンカチを購入してから、エデン地区の騎士団の詰所へと顔を出した。
エデン地区の責任者にはアーサーがすぐに連絡を入れていたようで、詰所の二階の宿舎に部屋と団服が準備されていた。巡回などもアンスリー地区とは違い自衛団がメインなので、協力体制を取りつつ比較的自由に巡回をしているようだ。
そのこともありジェイクは団服に身を包み、レイモンドが話していた時計台近辺からアントレーヌの工房を中心に歩き回ることにして、非番の時は時計台前広場に隣接するオープンカフェで時間をつぶした。
しかしアントレーヌは貴族街の中でも上級の部類に入る洋装店だ。そうなると客を装うにも自分の給金ではとてもじゃないが手が出るようなものは無いだろうから、店に入るのは無理があるだろう。
下調べをした資料にはエデン地区に工房があると書いてあったのを思い出し、そこへ一度行ってみようとジェイクは馬車へと乗り込んだ。
馬に乗って行けば早いが行った先で馬の扱いに困るのも…と考えて大人しく馬車にした。馬車代は経費として請求するためにきちんと記録も取っておく事は忘れない。
エデン地区には昼には着いたので、とりあえず腹ごしらえをしてからアントレーヌの工房へと向かった。
すると工房には庶民向けの店も併設されていて、ここなら自分でも手が出せるような小物なら売っているかもと思わず足を踏み入れる。
店にいたのは店主ではなく、少し年配で自分の母より少し若いくらいの女性が商品の説明をしてくれた。
商品棚に飾られた小さなポーチは可愛らしい花の刺繍があしらわれていて、提示されている価格はそこそこ値は張るが一般市民でも買えないほどではないというものだった。
ハンカチはそれこそ気軽に買える価格帯だが、刺繍の大きさやその熟練度合いによって倍ほどの金額差があるようだが、見ているだけでも選ぶのが困るほどの種類がある。
女性用だけでなく男性用のもあったので、これでも買って話を繋げるかと考えた。残念ながら今のところジェイクに彼女はいないので、たくさんある女性用を購入したとしても贈る相手がいないのだ。
「すみません。このリーフが刺繍されたハンカチをいくつか見せてください」
そうしてテーブルの上には五種類ほどのハンカチが並べられた。店員が勧めるのは一番高額な品だが、それは出来が他のものと明らかに違う。
「この刺繍、素晴らしいですね」
「お分かりになりますか?こちらは、先達ての領主様御子息のアニバーサリーカードも手がけた刺繍師が作った品ですわ」
「領主様の?これだけの品を作られるのであれば年配の方なんでしょうね」
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そんな感じで話を続け、彼女の名前がエミリアで息子がレイモンドだとわかった。口が軽い店員はダメだろう。だがおそらく彼女は話したことに気が付いていないくらいジェイクの話術は上手かった。
そしてエミリアの手がけたハンカチを購入してから、エデン地区の騎士団の詰所へと顔を出した。
エデン地区の責任者にはアーサーがすぐに連絡を入れていたようで、詰所の二階の宿舎に部屋と団服が準備されていた。巡回などもアンスリー地区とは違い自衛団がメインなので、協力体制を取りつつ比較的自由に巡回をしているようだ。
そのこともありジェイクは団服に身を包み、レイモンドが話していた時計台近辺からアントレーヌの工房を中心に歩き回ることにして、非番の時は時計台前広場に隣接するオープンカフェで時間をつぶした。
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