超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

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人間を手に入れ迷宮を出る

05 迷族は宝箱を拾う

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 迷族とは、迷宮を根城にする盗賊のことである。

 この世界は発展途上だ。人間の命は軽い。
 盗賊が狙うのは宝石だけではないのだ。

 王都であっても、夜道を若い女が一人で歩くことはそれなりの危険を伴う。
 街から街への移動は盗賊が出没する。護衛を雇わないのは自殺行為だ。

護衛がいなければ、商人は積み荷と一緒に売り飛ばされることになるだろう。

 そんな世界の中でなお、迷宮は特別に危険な場所だ。

 迷宮で死んだ場合、少しの間を置いて死体はその装備ごと迷宮に吸収される。
 戦いの跡もすぐに修復され、証拠など何も残らない。

 深層に行くほど冒険者の数は少なくなり、何かあっても人目に付くことはない。

 仮に何かあっても魔物のせいにしてしまえばよい。

 自分は必死に戦ったが、仲間は死んでしまった。この装備はその遺品だ。
 …とでも言えば、たとえ仲間殺しだろうが同情とともに迎えられるのだ。

 これほど犯罪に適した場所はないだろう。

 暗く入り組んだ構造は待ち伏せに最適だ。
 魔物が跋扈する空間は捜査の手も及ばず、さらに獲物は勝手に疲弊してくれる。

 迷宮は、人族の領域の地下全体に広がる逆三角錐構造である。
 その気になれば迷宮を伝っての逃亡や、闇取引も可能だ。

 迷宮で繰り返される大小の犯罪に、迷族は深いかかわりを持っている。

 流通や冒険を妨害する迷族の存在は、人族、迷宮双方にとって邪魔な存在であった。


 楽しい宝集めの時間だ。トシゾウは嗤う。

 迷族は邪魔な存在。
 トシゾウにとってもそれは同じだが、迷族は奪った宝を蓄えていることもある。
 まるっきり邪魔なだけというわけでもない。

 蜂蜜を集める蜂くらいには役に立つこともあるとトシゾウは考えている。

 …どうやら、働き蜂がやってきたようだ。トシゾウは動きを止めた。

「ちっ、どうせこんな所に来るやつなんざいやしねーのに、見回りなんて面倒だぜ」

「まったくだ。さっさと切り上げてアジトで一杯やろうや」

「いいねぇ、またあの獣人のガキをヒィヒィ鳴かしてやろうぜ」

「けっ、物好きな奴だ。あんなガキじゃなくて、あの貴族の姉ちゃんの方が良い具合に決まってらぁ」

「あっちはダメだ。処女なら高値で引き取る当てがあるんだと。大人しく酒飲んで寝るんだな」

「でもよぉ…。ちっとくらい…」

 迷宮5層を巡回する迷族の声が壁を反響して伝わってくる。
 例外もあるが、迷宮の壁は固い土か石でできているため音がよく響く。

 酒に、女か。貴族を襲ったのなら、宝飾品の類くらいは蓄えているかもしれないな。

 迷族の装備は方手斧に槍。鉄をメインに一部低階層の魔物素材。防具も同程度か。
 その身のこなしは【鑑定】を使うにも値しない。

 5階層の魔物程度なら倒せるのだろうが、もう少し深い階層の魔物なら話にならないだろう。

 宝箱の形態で情報収集をしつつ、巡回する迷族を待ち構える。
 情報収集は、トシゾウが今よりもはるかに弱い時には必須のスキルであった。

 奇襲をする前に冒険者の会話などから冒険者の役割や人間関係を把握し、弱点を責める。
 そうしなければ今ここにトシゾウは存在していないだろう。

 オーバード・ボックスとなった今でも身に染みついた習慣であった。

「お、おい見ろよ!宝箱だぜ!」

「まじかよ!?」

 巡回していた二人の迷族は宝箱の存在に気づいたようだ。
 降って湧いた幸運に歓喜している。

 迷宮において、宝箱は唐突に出現する。巡り合えるかどうかは完全な運であり、当たりを引いたなら一攫千金も夢ではない。
 階層が深まるほど貴重な宝が増えると言われているが、低階層でも当分遊んで暮らせるほどの宝が出ることもある。

 迷族二人は宝箱に駆け寄り、蓋を乱暴にこじ開けようとする。

「ちっ、開かねぇ。鍵がかかってるようだ。鍵付きだと罠がある可能性がある。仕方ない、アジトへ持って帰るか」

「もうぶっ壊しちまえよ。どうせ5階層の宝箱に危険な罠なんてありゃしねぇよ」

「そうだな、持って帰ったらボスが総取りか、良くて山分けだ。ここで無理矢理開けたほうが、多少中身が壊れても取り分が大きいだろう」

斧を装備した迷族は斧を振りかぶり、宝箱に向けて思いきり振り下ろした。

「ぐっ、か、かてぇ…」

 鈍い音とともに弾かれる斧。男は手が痺れ、斧を取り落とした。

「なんでたかだか木と鉄の箱がこんなに硬いんだよ」

「アジトに持って帰るしかないだろ。女の順番が早く回ってくる程度の分け前はもらえるかもな」

 迷宮のアイテムや宝箱は近くに人がいないと一定時間で消失するため、一時的に隠しておくことも不可能である。
 しばらく宝箱に武器を叩きつけていた二人だったが、やがて諦めてアジトに持ち帰ることにした。
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