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人間を手に入れ迷宮を出る
07 シオンとコレット
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まぁ、こんなものか。
レベルが平均5、最大で10程度の迷族の群れなどこの程度だろう。
低階層で低レベルの冒険者や行商人を狙う、ケチな集団だ。
俺は基本的に冒険者を殺さない。
殺したら迷宮に持ち込まれる宝の量が減る。
キャッチアンドリリースだ。資源は大切にしないとな。
だが迷族は別だ。
冒険者が金の卵を産む鶏ならば、迷族は鶏ごと卵を盗む害獣だ。
俺は元人間だが、今はオーバード・ボックス。魔物だ。迷宮暮らしも長い。
人間にまったく情がないわけではないが、宝の蒐集が第一で、そのためなら殺しも厭わない。
迷族が全滅しているのを確認し、次にめぼしい宝物がないか探す。
三人称視点と言えばよいのか。宝箱型の時は、上空に設置されたカメラから周囲を見渡すような視界になる。
スキル【蒐集ノ神】と組み合わせることで価値のあるアイテムを残らず攫うことができる。
うーん、微妙だな。
量はそれなりにある。酒、食料、衣類、ポーション類。装備に、雑貨類まで。
いずれもあまり程度の良いものではないが、捨てるのも惜しい。
迷宮主に家賃代わりにくれてやっても良いのだが、これから迷宮の外に出ることを考えれば何かの役に立つかもしれない。
全て持っていくか。
宝箱から触手を伸ばし、片っ端から箱の中に収納していく。
迷族の装備は、迷族が迷宮に吸収されてから、残った装備だけを収納していく。
アイテムよりも生き物の方が早く吸収される。豆知識だ。
【無限工房ノ主】があれば、容量は無制限、永久保存、修理、品質向上も可能だ。
しばらく収納しておけば、汚れ傷ついた装備も新品同様になる。
全てを収納し終えた時、迷宮の大部屋はすっかり元の姿を取り戻していた。
さて、次はと。
迷族に囚われていた二人の女に目をやる。
【蒐集ノ神】発動。
コレット・レインベル
年齢:17
種族:人
レベル:3
スキル:
状態:衰弱
シオン
年齢:14
種族:獣人(白狼種)
レベル:1
スキル:【超感覚】
状態:部位欠損 性病 衰弱 飢餓 奴隷紋:レベル上昇制限
オーバード・ボックスになってから手に入れた【蒐集ノ神】は便利なスキルだ。
鑑定、アイテムやアイテムを持つ者の探知など、応用の効く複合スキルである。
今回の鑑定は最低限のものだが、その気になれば対象の詳細な能力を知ることも可能だ。
頭の中に表示される情報を確認しつつ観察する。
コレット・レインベル。
青い瞳の人族の女だ。名字があるのは人族において貴族であるということらしい。
白い肌に、意志の強そうな印象を受ける整った容姿。長い金髪。今は薄汚れているが、なるほど変態貴族が喜びそうな見目をしている。
それなりに弱っているようだが、迷族に捕らえられていた割にはマシなほうだ。
レベルは3。駆け出し冒険者のレベルだ。
シオン。
白い髪、白い犬耳、白く豊かな尾に紫の瞳を持つ少女だ。
もっとも今は薄汚れて、泥沼を泳いだ犬のようだが。
左手が肘の先から欠けており、さらに両足は腱が切れている。
状態を見るに左手は以前から、両足は迷族の手によるものだろう。
状態異常と認められるほどの飢餓状態で、さらに病に侵されており顔に生気がない。
迷族に捕まった女の末路、死の一歩手前というやつだな。
白狼種の女で、スキル持ちか。なかなか珍しい。
【超感覚】は、いわゆる第六感とでも言うような感知能力を得て、さらに五感を強化するスキルだ。
レベルは1だが、スキルの有無は5レベルの差くらいは覆す。
スキル持ちでレベル1のシオンと、スキル無しでレベル3のコレットが戦えば、シオンの方が強いだろう。
奴隷紋という状態異常には覚えがない。後で確認する必要がありそうだ。
二人とも身に着けているのは粗末なボロ布だ。
危険がないように装備は取り上げられていたのだろう。
二人は何があったのかまったく理解できていない様子だ。
ただ呆然として座り込んでいる。
呆然とするのも無理はない。
迷族から圧倒的な理不尽と暴力を受けたと思ったら、次の瞬間には迷族が一瞬で絶命。
それをしたのがどこぞの王子様ならともかく、謎の宝箱だ。
さらに宝箱が部屋を更地にして、残った自分たちを睥睨している状況である。
自分がどのような状況下にあるか、どうすべきか理解することは不可能だろう。
脳裏にあるのは迷族が全滅したことへの安堵か、次の瞬間に殺されるかもしれない恐怖か。
まぁ錯乱して走り出すわけでもない。固まっているだけなら好都合だ。
俺は【擬態ノ神】を使用して、人族の姿になる。
姿を偽る魔法は人族には不可能だが、エルフ、海人ならば不可能ではない。
二人は宝箱が人の姿になることに驚いたようだが、自分たちと同じような姿になった俺に、僅かながら警戒を解いたようだった。
「俺はトシゾウという。敵じゃない。安心しろ。まずはこれを飲んで落ち着け」
努めて優しく話しかけ、飲み物を差し出す。
「…あ、ありがとう。助かりましたわ」
人族の女性は恐る恐る飲み物を受け取った。
獣人の少女はまだ警戒しているようだ。
警戒のためか瞳が大きく開いているが、最初の死を悟った瞳よりはずいぶんマシだ。
俺は地面に飲み物を置いて、少し距離を取って座る。
少女はしばらく俺を観察していたが、ゆっくりと体を動かし飲み物を拾った。
俺から一時も目を離さないあたり、なかなか優秀だと言える。
「回復薬だ。傷が治り、心も落ち着く。飲むと良い」
そう言って俺は同じ飲み物を呷る。
俺が飲み終わっても、二人は飲み物を口にしようとしない。
「警戒心が強いのは良いことだ。だが、俺はお前たちの敵でなくても味方ではない。それを飲まないのなら、そこで俺の用件は終わりだ。俺は去るから、後は勝手にすると良い」
俺は突き放すように宣言する。
当たり前だ。この二人を助けるのは将来の獲物になるかもしれないという打算と、僅かな良心によるものだ。
拒むのなら言葉通り放置することになるだろう。
迷宮5階層を探索するにあたり、推奨されるレベルは5以上。階層数と同じだ。
もちろんこれはレベル5相当の装備や消耗品を揃えた上での話だ。
「す、すいません。頂きますわ」
「飲み、ます」
二人は慌てて飲み物を口に運ぶ。
裸同然で放置されたらどうなるか、二人にも理解できたらしい。
「すごい、身体に染み入るような味ですわ」
「…甘くて美味しいです」
腹も減り、喉も乾いていたのだろう。
コレットとシオンは飲み物に口を付けると、そのまま一気に飲み干す。
「あ、あの。トシゾウ様、とおっしゃいましたか。このたびは…」
「きゃっ!?」
「シオン!?」
コレットがお礼を言いかけたが、シオンの悲鳴を聞いて慌てて振り返る。
「あ、熱いです!左手が…。足も!」
「シオン!大丈夫ですか!?ま、まさか毒を…」
「落ち着け。殺すつもりならもう殺している。その熱さは左手が再生する時の熱だ」
「っ、あなたっ…!なにをふざけて!」
「待って!コレット」
シオンがコレットを両手で制止する。
「シオン!?あなた左手が!ま、まさか本当にエリクサーを!?」
「はい…。治ったみたいです。お腹が減って死にそうだったのも」
「治ったって、それ、たしかに…。エリクサーはあらゆる状態異常を癒すから、飢餓ですら…。で、でもエリクサーなんて、私の領地でも年に一本精製できるかどうか…。信じられないですわ…。でも、そんな高価なもの…」
慌てふためくコレットを尻目に、シオンは左手の感触を試すように動かしたり、足の様子を確認するように飛び跳ねたりしている。
足はともかく、生えた腕はそうすぐに自由に動かせないはずなのだが…。
【超感覚】の補助か、あるいは生来の素質によるものか。シオンは何事もなかったかのように左手を操っていた。
「でも良かった。良かったですわシオン」
「ありがとうコレット。でも、まだ助かったわけじゃないです」
「そ、そうですわね」
戸惑いながらもシオンの回復を喜ぶコレットと、自分のことなのにどこか他人事のようなシオン。
トシゾウは、貴族の人族と獣人なのにこいつら仲良いなー。と思いながら様子を見ていた。
こうやって人と関わるのは久しぶりだ。刺激があるのは悪くない。
コレットは少し気が強そうな見た目だが、自分だけではなくシオンのことをよく気にかけているようだ。
頭の回転も悪くない。
エリクサーの価値を考え、返済のことまで考えて顔を青くするあたり、能天気な貴族のお嬢様というわけでもないらしい。
シオンも瀕死から欠損ごと回復したにしてはかなり冷静だ。
純粋に喜ぶわけではなく、いまだこちらの様子をうかがっていることがわかる。
こいつら、思ったより役に立つかもしれないな。
レベルが平均5、最大で10程度の迷族の群れなどこの程度だろう。
低階層で低レベルの冒険者や行商人を狙う、ケチな集団だ。
俺は基本的に冒険者を殺さない。
殺したら迷宮に持ち込まれる宝の量が減る。
キャッチアンドリリースだ。資源は大切にしないとな。
だが迷族は別だ。
冒険者が金の卵を産む鶏ならば、迷族は鶏ごと卵を盗む害獣だ。
俺は元人間だが、今はオーバード・ボックス。魔物だ。迷宮暮らしも長い。
人間にまったく情がないわけではないが、宝の蒐集が第一で、そのためなら殺しも厭わない。
迷族が全滅しているのを確認し、次にめぼしい宝物がないか探す。
三人称視点と言えばよいのか。宝箱型の時は、上空に設置されたカメラから周囲を見渡すような視界になる。
スキル【蒐集ノ神】と組み合わせることで価値のあるアイテムを残らず攫うことができる。
うーん、微妙だな。
量はそれなりにある。酒、食料、衣類、ポーション類。装備に、雑貨類まで。
いずれもあまり程度の良いものではないが、捨てるのも惜しい。
迷宮主に家賃代わりにくれてやっても良いのだが、これから迷宮の外に出ることを考えれば何かの役に立つかもしれない。
全て持っていくか。
宝箱から触手を伸ばし、片っ端から箱の中に収納していく。
迷族の装備は、迷族が迷宮に吸収されてから、残った装備だけを収納していく。
アイテムよりも生き物の方が早く吸収される。豆知識だ。
【無限工房ノ主】があれば、容量は無制限、永久保存、修理、品質向上も可能だ。
しばらく収納しておけば、汚れ傷ついた装備も新品同様になる。
全てを収納し終えた時、迷宮の大部屋はすっかり元の姿を取り戻していた。
さて、次はと。
迷族に囚われていた二人の女に目をやる。
【蒐集ノ神】発動。
コレット・レインベル
年齢:17
種族:人
レベル:3
スキル:
状態:衰弱
シオン
年齢:14
種族:獣人(白狼種)
レベル:1
スキル:【超感覚】
状態:部位欠損 性病 衰弱 飢餓 奴隷紋:レベル上昇制限
オーバード・ボックスになってから手に入れた【蒐集ノ神】は便利なスキルだ。
鑑定、アイテムやアイテムを持つ者の探知など、応用の効く複合スキルである。
今回の鑑定は最低限のものだが、その気になれば対象の詳細な能力を知ることも可能だ。
頭の中に表示される情報を確認しつつ観察する。
コレット・レインベル。
青い瞳の人族の女だ。名字があるのは人族において貴族であるということらしい。
白い肌に、意志の強そうな印象を受ける整った容姿。長い金髪。今は薄汚れているが、なるほど変態貴族が喜びそうな見目をしている。
それなりに弱っているようだが、迷族に捕らえられていた割にはマシなほうだ。
レベルは3。駆け出し冒険者のレベルだ。
シオン。
白い髪、白い犬耳、白く豊かな尾に紫の瞳を持つ少女だ。
もっとも今は薄汚れて、泥沼を泳いだ犬のようだが。
左手が肘の先から欠けており、さらに両足は腱が切れている。
状態を見るに左手は以前から、両足は迷族の手によるものだろう。
状態異常と認められるほどの飢餓状態で、さらに病に侵されており顔に生気がない。
迷族に捕まった女の末路、死の一歩手前というやつだな。
白狼種の女で、スキル持ちか。なかなか珍しい。
【超感覚】は、いわゆる第六感とでも言うような感知能力を得て、さらに五感を強化するスキルだ。
レベルは1だが、スキルの有無は5レベルの差くらいは覆す。
スキル持ちでレベル1のシオンと、スキル無しでレベル3のコレットが戦えば、シオンの方が強いだろう。
奴隷紋という状態異常には覚えがない。後で確認する必要がありそうだ。
二人とも身に着けているのは粗末なボロ布だ。
危険がないように装備は取り上げられていたのだろう。
二人は何があったのかまったく理解できていない様子だ。
ただ呆然として座り込んでいる。
呆然とするのも無理はない。
迷族から圧倒的な理不尽と暴力を受けたと思ったら、次の瞬間には迷族が一瞬で絶命。
それをしたのがどこぞの王子様ならともかく、謎の宝箱だ。
さらに宝箱が部屋を更地にして、残った自分たちを睥睨している状況である。
自分がどのような状況下にあるか、どうすべきか理解することは不可能だろう。
脳裏にあるのは迷族が全滅したことへの安堵か、次の瞬間に殺されるかもしれない恐怖か。
まぁ錯乱して走り出すわけでもない。固まっているだけなら好都合だ。
俺は【擬態ノ神】を使用して、人族の姿になる。
姿を偽る魔法は人族には不可能だが、エルフ、海人ならば不可能ではない。
二人は宝箱が人の姿になることに驚いたようだが、自分たちと同じような姿になった俺に、僅かながら警戒を解いたようだった。
「俺はトシゾウという。敵じゃない。安心しろ。まずはこれを飲んで落ち着け」
努めて優しく話しかけ、飲み物を差し出す。
「…あ、ありがとう。助かりましたわ」
人族の女性は恐る恐る飲み物を受け取った。
獣人の少女はまだ警戒しているようだ。
警戒のためか瞳が大きく開いているが、最初の死を悟った瞳よりはずいぶんマシだ。
俺は地面に飲み物を置いて、少し距離を取って座る。
少女はしばらく俺を観察していたが、ゆっくりと体を動かし飲み物を拾った。
俺から一時も目を離さないあたり、なかなか優秀だと言える。
「回復薬だ。傷が治り、心も落ち着く。飲むと良い」
そう言って俺は同じ飲み物を呷る。
俺が飲み終わっても、二人は飲み物を口にしようとしない。
「警戒心が強いのは良いことだ。だが、俺はお前たちの敵でなくても味方ではない。それを飲まないのなら、そこで俺の用件は終わりだ。俺は去るから、後は勝手にすると良い」
俺は突き放すように宣言する。
当たり前だ。この二人を助けるのは将来の獲物になるかもしれないという打算と、僅かな良心によるものだ。
拒むのなら言葉通り放置することになるだろう。
迷宮5階層を探索するにあたり、推奨されるレベルは5以上。階層数と同じだ。
もちろんこれはレベル5相当の装備や消耗品を揃えた上での話だ。
「す、すいません。頂きますわ」
「飲み、ます」
二人は慌てて飲み物を口に運ぶ。
裸同然で放置されたらどうなるか、二人にも理解できたらしい。
「すごい、身体に染み入るような味ですわ」
「…甘くて美味しいです」
腹も減り、喉も乾いていたのだろう。
コレットとシオンは飲み物に口を付けると、そのまま一気に飲み干す。
「あ、あの。トシゾウ様、とおっしゃいましたか。このたびは…」
「きゃっ!?」
「シオン!?」
コレットがお礼を言いかけたが、シオンの悲鳴を聞いて慌てて振り返る。
「あ、熱いです!左手が…。足も!」
「シオン!大丈夫ですか!?ま、まさか毒を…」
「落ち着け。殺すつもりならもう殺している。その熱さは左手が再生する時の熱だ」
「っ、あなたっ…!なにをふざけて!」
「待って!コレット」
シオンがコレットを両手で制止する。
「シオン!?あなた左手が!ま、まさか本当にエリクサーを!?」
「はい…。治ったみたいです。お腹が減って死にそうだったのも」
「治ったって、それ、たしかに…。エリクサーはあらゆる状態異常を癒すから、飢餓ですら…。で、でもエリクサーなんて、私の領地でも年に一本精製できるかどうか…。信じられないですわ…。でも、そんな高価なもの…」
慌てふためくコレットを尻目に、シオンは左手の感触を試すように動かしたり、足の様子を確認するように飛び跳ねたりしている。
足はともかく、生えた腕はそうすぐに自由に動かせないはずなのだが…。
【超感覚】の補助か、あるいは生来の素質によるものか。シオンは何事もなかったかのように左手を操っていた。
「でも良かった。良かったですわシオン」
「ありがとうコレット。でも、まだ助かったわけじゃないです」
「そ、そうですわね」
戸惑いながらもシオンの回復を喜ぶコレットと、自分のことなのにどこか他人事のようなシオン。
トシゾウは、貴族の人族と獣人なのにこいつら仲良いなー。と思いながら様子を見ていた。
こうやって人と関わるのは久しぶりだ。刺激があるのは悪くない。
コレットは少し気が強そうな見た目だが、自分だけではなくシオンのことをよく気にかけているようだ。
頭の回転も悪くない。
エリクサーの価値を考え、返済のことまで考えて顔を青くするあたり、能天気な貴族のお嬢様というわけでもないらしい。
シオンも瀕死から欠損ごと回復したにしてはかなり冷静だ。
純粋に喜ぶわけではなく、いまだこちらの様子をうかがっていることがわかる。
こいつら、思ったより役に立つかもしれないな。
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