超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
15 / 172
迷宮都市ラ・メイズ

13 宝箱は串焼きを買う

しおりを挟む
「シオン、この地面についている蓋はなんだ」

「そ、それは井戸です」

「井戸。こっちの小さな穴もか?」

「えぇと、そっちのは…」

 歩きながら気になったことをシオンに尋ねていく。

 目的の屋台にはすぐ到着した。

 網の上で旨そうな串肉が焼かれている。
 垂れる肉汁が炭の上に落ち、ジュウジュウと食欲をそそる音を立てる。

「その肉をよこせ」

「らっしゃい!串焼き一本1コルだ」

 手際よく肉を焼いていたヒゲ面の店主が、俺へ向けて手を突き出してくる。

 1コル?なんのことだ。

 説明を求めてシオンを見る。

「あ、あのすいませんトシゾウ様。私、お金を持っていなくて、その…」

 俺が顔を向けたことをどう解釈したのか、シオンが申し訳なさそうな顔をする。

 あぁ、そうか。人族から物を手に入れるには、対価として硬貨を渡すのだった。

 世界が違うとはいえ、前世の俺は普通に買い物をしていたはずだが、魔物暮らしが長すぎて人の常識を忘れがちだ。

「なんだい兄ちゃん、小さな女の子に払わせる気か?男なら銅貨一枚くらい気前よく出してやりな」

 なるほど、銅貨一枚で1コルか。

 俺は懐に手を入れ、銅貨が二種類存在することに気づいた。
 大きいのと小さいのがある。
 まぁどちらも腐るほどあるし、とりあえず大きいほうを渡せば良いか。

「これで良いか?」

 俺は懐から銅貨を取り出し、店主に渡した。

「おう。10コルだな。2本でいいか?」

「うむ」

「はいよ。これが釣りだ」

 店主は串焼き2本と、小さな銅貨を8枚渡してきた。

 大きな銅貨が10コルで、小さな銅貨が1コルか。

 他の硬貨についても、何コルになるのかシオンに聞いておく必要があるな。

 トシゾウは銅貨以外にも銀貨や金貨、他にも変わった種類の硬貨を大量に持っていた。
 迷宮内で冒険者や商人から奪ったものだ。

 意外なことに、ほとんどの冒険者は金を持って迷宮に潜る。
 金貨や銀貨を一枚だけ懐に忍ばせておく者も多い。

 硬貨は重くかさばるし、ポーションのように使えるわけでもない。
 だが迷宮内で他の冒険者に助けを求めるときや、アイテムや素材のやり取りをするときに役に立つのだ。

 緊急でポーションが必要になった時、思わぬ収穫でアイテムを持ちきれないとき、そういったときに他の冒険者に金を渡して力を貸してもらうのだ。
 当然割高にはなるが、命には代えられないということだろう。

「ほら、食え」

 俺は店主から受け取った串焼きをシオンに渡す。

「頂いてもよろしいのですか?」

「もちろんだ。所有物の管理は持ち主の仕事だ。衣食住について遠慮する必要はない」

「わ、わかりました。ありがとうございます」

 シオンは串焼きを受け取ってもすぐに食べずにちらちらとこちらを見ていたが、俺が串焼きにかぶりつくのを見て自分も食べだした。

 肉は鑑定によるとオークの肉のようだ。
 味も前世で良く食べていた豚肉に似ていて、決して高価なものではない。
 肉は焼き立てだが、味付けなどは最小限だ。

 それでも…。

「旨いな」

 思えば、食事をするのは前世以来だ。
 宝箱の魔物である俺に食事は不要だった。
 だからなのか、何の変哲もない肉がやたらと美味く感じる。

「はい。美味しいです。こんなに美味しいものは久しぶりに食べました。こんなに美味しい食べものを、本当にありがとうございます」

 シオンは小さい口ではぐはぐと肉をほおばっている。
 白い尻尾が激しく揺れている。

 大げさな反応だなと思ったが、シオンは迷族に捕まっていたのだ。
 エリクサーで改善したとはいえ、一時は飢餓状態だった。

 本当に喜んでいるのだろう。

 腐るほど余っている銅貨でシオンが喜ぶのなら、割の良い取引だったと言える。

 串焼きはそれなりに大きく、子供なら一本も食べれば十分に腹が膨れるサイズだ。

 だがシオンは獣人の例に漏れず良く食べるようで、その後も何件かの屋台で買い食いをすることになった。

 俺も久しぶりの食事で食欲があったので問題ない。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...