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迷宮都市ラ・メイズ
24 シオンはゴブリンと戦う
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「ご主人様、ここは…、迷宮、ですか?」
「そうだ、迷宮の1層だな」
転移してきたのは迷宮の第一層。
アリの巣を大きくしたような洞窟と、思い出したかのように出現する大小の部屋。
壁が僅かに発光しており、薄暗いながらも視界は確保されている。
迷宮、と言われてまず思い浮かべるであろう、基本的な構造の区画だ。
「一瞬で迷宮まで行けるなんて、さすがご主人様です」
うむ、シオンもだいぶ俺に慣れてきたようで何よりである。それにシオンの尊敬のまなざしはなかなか心地よい。
所有物を愛でることはあっても、所有物から反応が返ってくるというのは初めての経験だ。斬新だ。
「シオン、剣を抜け」
「はい」
シオンは俺が渡した剣を腰から抜く。
丈夫なだけの鉄製の短剣だ。刃渡りは30センチほどの片刃で、切れ味と刺突性能を重視している。レベル1の冒険者装備としては上々の短剣だ。
「振ってみろ」
「はい」
シオンは短剣を片手で構え、慣れた様子で剣を振るう。
手を軽く前に出し、身体は半身。正面からだと短剣で身体が隠れて見えるだろう。
なんとなく前世のフェンシングの試合を思い出す。
常に回避を意識した足さばきと、隙を最小限にして小さな一撃を重ねるかのような振りだ。
俺は剣技には疎いが、それなりにさまになっているように思う。
大したものだ。拾い屋の仲間に教わったのだろうか。
実戦レベルでの習熟を感じる。
あの王子よりもはるかに戦い慣れているな。
これなら一気にレベルが上がったとしても、すぐに馴染むだろう。
「ご主人様、魔物です」
前方から、緑色の肌をした小人のような魔物がやってくる。
醜悪な顔、口からは涎を垂らし、こちらに対して敵意をむき出しにしている。
彼我の戦力差を考える脳も持たない、本能だけで生きている存在だ。
「うむ。ゴブリンだな。シオン、一人でやれるか?」
「はい」
ゴブリンが両手を前に突き出した態勢でドタドタと走り寄ってくる。
シオンは短剣を構え、突進してくるゴブリンを半身で待ち構える。
シオンとゴブリンの距離がみるみる縮まり、そして交差する。
半身に構えたシオンは、ゴブリンとぶつかる直前で身体を捻り突進を回避、手首を反して無防備に剥き出しになった首へナイフをあてがう。
「やぁっ!」
交差した後に残ったものは三つ。
シオンとゴブリン、そしてゴブリンの頭部だ。
頭部を失ったゴブリンはしばらく痙攣していたが、やがて身体から煙が立ち登り、次の瞬間には霧散した。
ゴブリンがいた場所にはゴブリンの牙と皮の一部、そしてゴマ粒ほどの無色の魔石が転がっている。
「見事だ」
「ありがとうございます!」
迷宮にソロで潜る場合、最低でも迷宮の階層数を超えるレベルが求められる。
今回の場合シオンのレベルは1で、階層は1階層。
シオンがゴブリンを狩れること自体は特筆すべきことではない。
だがここまで余裕をもって倒すとなると話は別だ。
シオンに渡した武器は薄い片刃の短剣だ。
切れ味に優れてはいるが、骨を断つことはできない。
シオンの力でゴブリンの首を両断するには、相手の力を利用したうえで、骨の継ぎ目に正確に刃を入れる必要がある。
ゴブリンの突進をかわしつつそれを行うとは。シオンはそれなりの修羅場をくぐってきているようだ。
「シオン、ドロップを拾え。お前が倒したものだ」
「はい」
シオンは慣れた手つきでゴブリンのドロップを拾い、無限工房の中に格納していく。
迷宮の魔物は、倒すと霧になって消滅するが、その際に魔物の一部やその魔物に由来する品がドロップとして残る。
いつも同じものがドロップされるわけではなく、ドロップは個体によってまちまちである。
また、特定の行動によりドロップを操作することも可能だ。
例えば祖白竜ミストルの鱗を剥ぎ取った場合、倒す倒さないに関わらず入手が可能である。それらの素材は【確定ドロップ】と呼ばれている。
素材によっては一定時間で消失するものもあり、これもまちまちである。
「シオン、今拾った素材を冒険者区画で売った場合、いくらになる?」
「これだけでは売れないと思います。ゴブリンのドロップは、30匹狩って1コルになれば良いほうです」
つまりゴブリン一匹3円ほどか。
一匹では串焼き一切れにもならないらしい。
ゴブリンはあれでレベル1の人族を殴り殺すほどの力を持つ。
集団で囲まれれば、身体能力の高い獣人でも危うい。
俺も宝箱として転生したばかりのころはゴブリン相手に死闘を繰り広げていた。
命を賭けてこれでは、なんとも世知辛い話である。
まぁ一階層のドロップがそれなりの値段になるのなら、乞食や拾い屋は生まれないということか。
「拾い屋はどこで稼いでいる」
「拾うだけなら3,4階層を狙うことが多いです。比較的冒険者も多いし、レベル1でも慣れれば死ににくくなります。ドロップは3匹で1コルくらいになりますし、多くの冒険者は5階層を目指すので素材が放置されていることも多いです。荷物持ちをするならさらに奥まで付いていくことになりますが、本当に命がけになります」
迷宮5階層からは特殊区画と呼ばれる区画も交じり、難易度が一気に上がる。
相応にドロップの価値も上がるのだが、レベル1では危険すぎる。
逆にある程度のレベルの冒険者にとって5階層までは旨味がないため、魔物を倒しても素材は放置する。拾い屋はそれを拾い集めるわけだな。
シオンは最大で10階層まで潜ったことがあるらしい。
【超感覚】である程度魔物を避けられるとはいえ、命知らずなことだ。
「そうだ、迷宮の1層だな」
転移してきたのは迷宮の第一層。
アリの巣を大きくしたような洞窟と、思い出したかのように出現する大小の部屋。
壁が僅かに発光しており、薄暗いながらも視界は確保されている。
迷宮、と言われてまず思い浮かべるであろう、基本的な構造の区画だ。
「一瞬で迷宮まで行けるなんて、さすがご主人様です」
うむ、シオンもだいぶ俺に慣れてきたようで何よりである。それにシオンの尊敬のまなざしはなかなか心地よい。
所有物を愛でることはあっても、所有物から反応が返ってくるというのは初めての経験だ。斬新だ。
「シオン、剣を抜け」
「はい」
シオンは俺が渡した剣を腰から抜く。
丈夫なだけの鉄製の短剣だ。刃渡りは30センチほどの片刃で、切れ味と刺突性能を重視している。レベル1の冒険者装備としては上々の短剣だ。
「振ってみろ」
「はい」
シオンは短剣を片手で構え、慣れた様子で剣を振るう。
手を軽く前に出し、身体は半身。正面からだと短剣で身体が隠れて見えるだろう。
なんとなく前世のフェンシングの試合を思い出す。
常に回避を意識した足さばきと、隙を最小限にして小さな一撃を重ねるかのような振りだ。
俺は剣技には疎いが、それなりにさまになっているように思う。
大したものだ。拾い屋の仲間に教わったのだろうか。
実戦レベルでの習熟を感じる。
あの王子よりもはるかに戦い慣れているな。
これなら一気にレベルが上がったとしても、すぐに馴染むだろう。
「ご主人様、魔物です」
前方から、緑色の肌をした小人のような魔物がやってくる。
醜悪な顔、口からは涎を垂らし、こちらに対して敵意をむき出しにしている。
彼我の戦力差を考える脳も持たない、本能だけで生きている存在だ。
「うむ。ゴブリンだな。シオン、一人でやれるか?」
「はい」
ゴブリンが両手を前に突き出した態勢でドタドタと走り寄ってくる。
シオンは短剣を構え、突進してくるゴブリンを半身で待ち構える。
シオンとゴブリンの距離がみるみる縮まり、そして交差する。
半身に構えたシオンは、ゴブリンとぶつかる直前で身体を捻り突進を回避、手首を反して無防備に剥き出しになった首へナイフをあてがう。
「やぁっ!」
交差した後に残ったものは三つ。
シオンとゴブリン、そしてゴブリンの頭部だ。
頭部を失ったゴブリンはしばらく痙攣していたが、やがて身体から煙が立ち登り、次の瞬間には霧散した。
ゴブリンがいた場所にはゴブリンの牙と皮の一部、そしてゴマ粒ほどの無色の魔石が転がっている。
「見事だ」
「ありがとうございます!」
迷宮にソロで潜る場合、最低でも迷宮の階層数を超えるレベルが求められる。
今回の場合シオンのレベルは1で、階層は1階層。
シオンがゴブリンを狩れること自体は特筆すべきことではない。
だがここまで余裕をもって倒すとなると話は別だ。
シオンに渡した武器は薄い片刃の短剣だ。
切れ味に優れてはいるが、骨を断つことはできない。
シオンの力でゴブリンの首を両断するには、相手の力を利用したうえで、骨の継ぎ目に正確に刃を入れる必要がある。
ゴブリンの突進をかわしつつそれを行うとは。シオンはそれなりの修羅場をくぐってきているようだ。
「シオン、ドロップを拾え。お前が倒したものだ」
「はい」
シオンは慣れた手つきでゴブリンのドロップを拾い、無限工房の中に格納していく。
迷宮の魔物は、倒すと霧になって消滅するが、その際に魔物の一部やその魔物に由来する品がドロップとして残る。
いつも同じものがドロップされるわけではなく、ドロップは個体によってまちまちである。
また、特定の行動によりドロップを操作することも可能だ。
例えば祖白竜ミストルの鱗を剥ぎ取った場合、倒す倒さないに関わらず入手が可能である。それらの素材は【確定ドロップ】と呼ばれている。
素材によっては一定時間で消失するものもあり、これもまちまちである。
「シオン、今拾った素材を冒険者区画で売った場合、いくらになる?」
「これだけでは売れないと思います。ゴブリンのドロップは、30匹狩って1コルになれば良いほうです」
つまりゴブリン一匹3円ほどか。
一匹では串焼き一切れにもならないらしい。
ゴブリンはあれでレベル1の人族を殴り殺すほどの力を持つ。
集団で囲まれれば、身体能力の高い獣人でも危うい。
俺も宝箱として転生したばかりのころはゴブリン相手に死闘を繰り広げていた。
命を賭けてこれでは、なんとも世知辛い話である。
まぁ一階層のドロップがそれなりの値段になるのなら、乞食や拾い屋は生まれないということか。
「拾い屋はどこで稼いでいる」
「拾うだけなら3,4階層を狙うことが多いです。比較的冒険者も多いし、レベル1でも慣れれば死ににくくなります。ドロップは3匹で1コルくらいになりますし、多くの冒険者は5階層を目指すので素材が放置されていることも多いです。荷物持ちをするならさらに奥まで付いていくことになりますが、本当に命がけになります」
迷宮5階層からは特殊区画と呼ばれる区画も交じり、難易度が一気に上がる。
相応にドロップの価値も上がるのだが、レベル1では危険すぎる。
逆にある程度のレベルの冒険者にとって5階層までは旨味がないため、魔物を倒しても素材は放置する。拾い屋はそれを拾い集めるわけだな。
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