超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
34 / 172
迷宮都市ラ・メイズ

32 シオンは力を示す

しおりを挟む
「では訓練開始だ。シオン」

「はい、行きます!」

 シオンが助走のために身をかがめる。華奢な身体に見合わない強烈な踏み込み。踏み固められた地面が蹴り砕かれ、生じた爆音とともに白銀の閃光が奔る。

 一瞬で前衛と肉薄するシオン。

 最前列はレベル15の屈強な兵が固めている。
 兵士は辛うじてシオンの突撃に対応し、左手に構えた盾をシオンと自分の間に割り込ませる。

 ぶつかる。

 シオンは勢いをそのままに、逆手で握った短剣を順手に持ち変え、短剣の柄頭で盾を強打した。

 ドグシャッ

 高速で走るトラックが正面衝突したような鈍く巨大な音が響く。
 盾に蜘蛛の巣状のヒビが入り、そのまま微塵に砕け散る。短剣の柄頭はそのまま突き進み、全身鎧をも粉砕しつつ、対峙する兵士を吹き飛ばした。

 冗談のような光景に固まる周囲の兵士。
 シオンはその隙を見逃さず、剣を、手を、足を瞬かせる。

 それは白銀の嵐。
 対峙した兵士は例外なく、風に舞う木の葉のように宙を舞う。
 縦横無尽に暴れまわる銀閃が、前衛の兵士を蹂躙していった。

 シオン
 年 齢:14
 種 族:獣人(白狼種)
 レベル:28
 スキル:【超感覚】【竜ノ心臓】
 装 備:祖白竜の鎧、祖白竜の短剣、祖白竜の手甲 白王狼の靴 不死鳥の尾羽


「なっ、何が起こっている!?」

「怯むな!前衛部隊後退、防衛だ!スパイクを打ち槍衾を組め!後衛部隊は隙間を埋めろ!ダストン!」

 動揺するアズレイ王子と、冷静に指示を出すドルフ。

 兵士の練度は高い。
 ドルフの指示に従い、即座に陣形を組み替える。
 包囲の円を拡大させ、銀の嵐を包み込むように広がる。

 包囲を広げたため各所が薄くなるが、それでも1000の部隊の包囲は厳重だ。

 前衛の兵士が装備しているのは全身を覆う鎧。そして大盾と槍。
 盾は下部に突起、上部に規則的な凹凸があるスパイクシールド、槍の長さは1メートルから3メートルまで、規則的に配置されている。
 対魔物に特化した兵装だ。

 最前列の兵士はスパイクシールドを地面に突き刺し、上部の凹凸に1メートルの短槍を乗せ引き絞る。
 後列の兵士は2メートルの槍を同じように最前列のスパイクシールドに設置し、さらに後列の兵士は3メートルの槍を斜めに構える。
 後衛は剣を装備し、包囲の綻びを埋めるように前衛と並ぶ。

 波が引くようにシオンの周りに空白地帯ができる。

「今じゃ!第一、第三部隊放てぃ!第二部隊は負傷者へ援護魔法じゃ。そのまま下がらせよ!」

 魔法部隊長ダストンの指示に従い、シオンへ向けて無数の火魔法が放たれる。

 放たれたのは、範囲が狭く威力の高い火弾だ。
 友軍に命中する危険を極力減らし、かつ単体の敵に大ダメージを与えることを目的としている。

 人族が使える魔法は火魔法のみ。それも一部の才能を持つ者だけだ。
 魔石を使用することで他属性の魔法を使うこともできるが、コストパフォーマンスに劣るため、火が有効な敵に対しては火魔法で統一されている。

 複数の魔法使いから放たれた火弾が雨のようにシオンに降り注ぐ。

 トシゾウは一瞬シオンを援護しようかと思ったが、シオンの冷静な表情を見て考え直す。
 シオンに援護は必要ないようだ。
 いざとなれば不死鳥の尾羽もある。

 雨を避ける。
 比喩でもなんでもない。

 シオンは赤く降り注ぐ火弾の間を縫うように駆け抜ける。

 先ほどの嵐のような動きと違って、しなやかに赤の雨を掻い潜る様はまるで踊っているようだ。

 すべての火弾を危なげなく回避しきり、自らを包囲し突き殺さんとする槍衾へ肉薄する。地面に突き刺された盾に足をかけ、突き出される槍に向かって回転しながら飛び込む。

 無数の槍を短剣と手甲で叩き折り、強固な槍衾は爆竹ではじけ飛んだかのように崩壊した。


 翻る白髪、鈍く残光を引く銀閃。

 包囲を千切り、食い破る。
 シオンは剣林弾雨を一人で駆け抜ける。

 レベルが上がったことによる身体の違和感はない。

 ご主人様の言った通りです。これが高レベルで使う【超感覚】。私の力、私の価値の一端…。

 レベルが上がったとはいえ、いきなりの集団戦闘。
 軍を相手にすることに不安を覚えたシオンにトシゾウがかけた言葉はシンプルだ。

 シオンなら問題ない。【超感覚】に従い、今までと同じように戦え。

 迷いが消えた。
 ご主人様が問題ないと言えば、それは本当に問題ないのだ。

 視える。敵の視線、槍の穂先。
 聴こえる。敵の息遣い、筋肉の動き。
 解る。陣形の急所、自分の身体の動かし方。

 【超感覚】により強化された知覚が、数多繰り出される攻撃の避け方と敵の弱点を教えてくれる。

 【超感覚】は本来戦闘向けのスキルだ。
 言葉の虚偽を見抜く、遠方から情報を収集するなどの用途は、あくまでも副次的なものに過ぎない。

 シオンがレベル1のまま培った経験と、スキルによる補正がどれほどのものか、トシゾウにはすべてわかっていたのだろう。

 たとえレベルが上がらなくても、頑張って生きてきた経験は無駄ではなかった。
 これまでの辛い経験がすべて報われたような気がして、シオンは戦いながら笑みを浮かべる。

 努力と才能、そして幸運。シオンの力は早くも人外の域に達そうとしている。

 シオンには1000の敵と対峙しながらも、なお別のことを考える余裕があった。

「さすがご主人様です」

 シオンは、自分の力がトシゾウに与えられたものだということをよく理解していた。
 自分の力に驕らず、これからも自らの主の役に立つために頑張ろうと決意する。

 射程に捕らえた標的に狙いを定め、ますます苛烈に剣を振るう。

 激しくもどこか美しいその奔流に飲まれ、兵士たちの士気はくじけ、その銀閃は強烈な印象を持って彼らの胸に焼き付けられることになる…。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...