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遠征軍と未踏の特殊区画と人の悪意
94 コレットは決意を示す
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ヒュッ
コレットが何気ない仕草でレイピアを振るう。
ボト、ボト
次の瞬間、男の両手が地面に転がった。
「て、手がぁぁあ!私の手がああああ!」
男の断面から血が溢れ流れだす。コレットはその様子を冷めた目で見ている。
「…警告はしました。お父様を侮辱することは許しません。他種族との友好は、レインベル開闢から続く伝統。特殊区画を開放した全種族への敬意が込められています。あなたの領地も同様に、他種族の力あって開放を成し遂げたのです。そのことを忘れ、迷宮の富をただ貪ることの醜さを知りなさい」
「くそ、この、この…。こんなことをして、我々を敵に回すとどうなるか…!」
「レインベルは人族至上主義者と完全に決別しますわ。レインベルよりも、自分たちの領地を心配なさい」
コレットが再びレイピアを動かす。先ほどと違う直線の軌道。
青の切っ先が、男の眉間に風穴を開けた。
崩れ落ちる男。
「ひ、ひぃぃぃ!」
迷宮入口を封鎖していた兵士たちが逃げ出す。
領主が自分たちを殺そうとする以上、後のことはともかく、この場にいれば命がないことくらいは彼らにも理解できる。
「あなた方の飼い主に伝えなさい。コレット・レインベルがいずれ会いに行くと」
コレットは逃げる兵士たちを追わず、代わりにレイピアを真後ろに向けて突き出した。
レイピアが、後ろからコレットを殺そうと近づいていた暗殺者の心臓を貫く。
「馬鹿な…、貴様はレベル3のはず。なぜ…」
驚愕に目を見開き、絶命する暗殺者。
「おかげさまで、先ほどレベルが5になりましたわ」
コレットはレイピアの血を払い、鞘に納める。
「まさか人を殺してレベルが上がる日が来るとは思っていませんでしたわ。…これで、もう後戻りはできません。いえ、元より退路などないのでしたか。抵抗しなければ滅びるのを待つのみでしたもの。レインベルは人族至上主義者との戦いにおいて先鋒を務めることになるのでしょうね」
これもトシゾウ様の思惑通りなのでしょうか。そう呟くコレットの頭の上で、赤色の髪飾りが返事をするように輝いた。
そうだな。確かに思惑通りだ。だが、後悔はさせない。何も問題はない。
そんな誰かの言葉が聞こえてくるようだとコレットは思った。
「それでは改めて参りましょう」
コレットは先陣を切って迷宮に入っていく。
その後に遠征軍が続く。声援は止まない。
領民たちは、前領主を侮辱した男を断罪したコレットを誇らしく思っているようだ。
人族至上主義の貴族とレインベル家の確執は領民たちも肌で感じていることであり、それは何代にもわたって続いてきたことでもあるらしい。
領民は良く事情を心得ている。
領主が率いる、領を守るための行軍を邪魔立てした者を擁護する者は一人もいなかった。
「コレットは大きくなったな。私たちに決意と力を示してくれたらしい。エルフは本当に良い同盟者を得たものだ。もうお嬢ちゃんとは呼べないな、ドワグルよ」
「そうだなエルフの。俺のカミさんの次におっかない女に成長したようだ。美しく、芯がある所もカミさんにそっくりだ。まぁ、力についてはちょっとズルをしているようだが。今後に期待だわい」
「ルシアだ。…あと私は独身だ。さりげないのろけ話を聞かされるのは不快だから口を閉じろ」
「話しかけてきたのはルシアの方ではないか。まったく、エルフは冗談が通じん」
弓と杖を装備したエルフと、斧を背負ったドワーフが後に続いて迷宮へ潜っていく。
「実に痛快な見世物だった。コウエンよ、これもトシゾウ閣下の力とやらか?」
「その通りだゴルオンよ。閣下は我々に力と、力を振るう場所を与えてくださる」
「なるほどな。お前ほどの男が心酔しているのだ、やはり俺の判断は間違っていなかったらしい」
戦闘班長のコウエンと獣人代表のゴルオンは早くも打ち解けたらしい。
「ご主人様がコレットの頭の上に。羨ましいです羨ましいです。私もレベルが低ければご主人様に守って…。はっ、私は何を。ご主人様のお役に立つことこそ私の、でもでもそれではご主人様にくっつけません」
従者の立場と乙女心の狭間でグルグルと思考が混乱しているシオン。
遠征軍はそれぞれの関係を少しずつ変化させながら、迷宮へ潜っていったのであった。
コレット・レインベル
年 齢:17
種 族:人
レベル:5
スキル:
装 備:青竜のレイピア 青竜の鎧 白王狼の靴 不死鳥の尾羽 髪飾りのトシゾウ
コレットが何気ない仕草でレイピアを振るう。
ボト、ボト
次の瞬間、男の両手が地面に転がった。
「て、手がぁぁあ!私の手がああああ!」
男の断面から血が溢れ流れだす。コレットはその様子を冷めた目で見ている。
「…警告はしました。お父様を侮辱することは許しません。他種族との友好は、レインベル開闢から続く伝統。特殊区画を開放した全種族への敬意が込められています。あなたの領地も同様に、他種族の力あって開放を成し遂げたのです。そのことを忘れ、迷宮の富をただ貪ることの醜さを知りなさい」
「くそ、この、この…。こんなことをして、我々を敵に回すとどうなるか…!」
「レインベルは人族至上主義者と完全に決別しますわ。レインベルよりも、自分たちの領地を心配なさい」
コレットが再びレイピアを動かす。先ほどと違う直線の軌道。
青の切っ先が、男の眉間に風穴を開けた。
崩れ落ちる男。
「ひ、ひぃぃぃ!」
迷宮入口を封鎖していた兵士たちが逃げ出す。
領主が自分たちを殺そうとする以上、後のことはともかく、この場にいれば命がないことくらいは彼らにも理解できる。
「あなた方の飼い主に伝えなさい。コレット・レインベルがいずれ会いに行くと」
コレットは逃げる兵士たちを追わず、代わりにレイピアを真後ろに向けて突き出した。
レイピアが、後ろからコレットを殺そうと近づいていた暗殺者の心臓を貫く。
「馬鹿な…、貴様はレベル3のはず。なぜ…」
驚愕に目を見開き、絶命する暗殺者。
「おかげさまで、先ほどレベルが5になりましたわ」
コレットはレイピアの血を払い、鞘に納める。
「まさか人を殺してレベルが上がる日が来るとは思っていませんでしたわ。…これで、もう後戻りはできません。いえ、元より退路などないのでしたか。抵抗しなければ滅びるのを待つのみでしたもの。レインベルは人族至上主義者との戦いにおいて先鋒を務めることになるのでしょうね」
これもトシゾウ様の思惑通りなのでしょうか。そう呟くコレットの頭の上で、赤色の髪飾りが返事をするように輝いた。
そうだな。確かに思惑通りだ。だが、後悔はさせない。何も問題はない。
そんな誰かの言葉が聞こえてくるようだとコレットは思った。
「それでは改めて参りましょう」
コレットは先陣を切って迷宮に入っていく。
その後に遠征軍が続く。声援は止まない。
領民たちは、前領主を侮辱した男を断罪したコレットを誇らしく思っているようだ。
人族至上主義の貴族とレインベル家の確執は領民たちも肌で感じていることであり、それは何代にもわたって続いてきたことでもあるらしい。
領民は良く事情を心得ている。
領主が率いる、領を守るための行軍を邪魔立てした者を擁護する者は一人もいなかった。
「コレットは大きくなったな。私たちに決意と力を示してくれたらしい。エルフは本当に良い同盟者を得たものだ。もうお嬢ちゃんとは呼べないな、ドワグルよ」
「そうだなエルフの。俺のカミさんの次におっかない女に成長したようだ。美しく、芯がある所もカミさんにそっくりだ。まぁ、力についてはちょっとズルをしているようだが。今後に期待だわい」
「ルシアだ。…あと私は独身だ。さりげないのろけ話を聞かされるのは不快だから口を閉じろ」
「話しかけてきたのはルシアの方ではないか。まったく、エルフは冗談が通じん」
弓と杖を装備したエルフと、斧を背負ったドワーフが後に続いて迷宮へ潜っていく。
「実に痛快な見世物だった。コウエンよ、これもトシゾウ閣下の力とやらか?」
「その通りだゴルオンよ。閣下は我々に力と、力を振るう場所を与えてくださる」
「なるほどな。お前ほどの男が心酔しているのだ、やはり俺の判断は間違っていなかったらしい」
戦闘班長のコウエンと獣人代表のゴルオンは早くも打ち解けたらしい。
「ご主人様がコレットの頭の上に。羨ましいです羨ましいです。私もレベルが低ければご主人様に守って…。はっ、私は何を。ご主人様のお役に立つことこそ私の、でもでもそれではご主人様にくっつけません」
従者の立場と乙女心の狭間でグルグルと思考が混乱しているシオン。
遠征軍はそれぞれの関係を少しずつ変化させながら、迷宮へ潜っていったのであった。
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