超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

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冒険者ギルド世界を変える

137 世界という宝石箱とアリのような人間

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 スキル【擬態ノ神】を発動させる。

 種 族:モザイク・アサシネイトオクトパス(オーバード・ボックス)
 レベル:60()
 スキル:【浮遊ノ理】【認識阻害ノ鬼】(【擬態ノ神】【蒐集ノ神】【無限工房ノ主】)
 装 備:主従ノミサンガ 不死鳥の尾羽


 擬態するのはモザイク・アサシネイトオクトパス。
 迷宮32層前後に出没する魔物だ。

 タコと風船と気球を足して3で割ったような見た目をしている。

 戦闘力はそれほどではないが、周囲の認識を阻害するスキルと浮遊能力を持つ。
 奇襲を得意とし、優れた探知能力を持たないパーティを吸盤のついた足に巻き取り、その防具ごと絞め殺す危険な魔物である。

 もっとも、今回の用途は空からラ・メイズを見物するための足代わりだ。
 シオンたちを頭に乗せて空へ舞い上がる。
 重力を無視したように浮かんでいくのは良い気持ちだ。

 空の旅の参加者は俺を含めて4人。
 シオンとベルに加え、仕事漬けで消耗しているであろうコレットを呼び出した。

「すごいです。まるで鳥になったみたいです」

「い、いきなり転移で呼び出されたと思ったら空の上に…。言っても誰も信じてくれそうにないですわね…」

「いやー、ほんまにトシゾウはんといると飽きへんなぁ。ってこのセリフ何度目やろ」

 誰か一人くらいは高いところを怖がるかと思ったが…。
 足場がかなりしっかりしているからか、はたまた現実離れした景色ゆえか、全員おっかなびっくりながらも眼下の風景を楽しんでいるようだ。

 獣人は水と高所を嫌う。
 シオンも水は苦手だが、高いところは問題ないらしい。

 スキル【浮遊ノ理】が働いているため、俺の周囲は風も気温も穏やかだ。
 そのまま高度を上げ、ラ・メイズが一望できるところまで上昇する。

 ラ・メイズの中心にあるヘソのようなメインゲート。
 冒険者区画を挟んで魔物の氾濫を抑えるための歯車型の内壁。
 その外には貴族区画があり、正五角形の外壁が見える。
 外壁の外にも多くの建物が広がり、四方へ街道が伸びていく。

 その街道は多くの衛星都市を経由し、特殊区画を開放して生まれた領地を経て、やがては荒野へと至るのだろう。
 迷宮から産出した食材や資材を満載した馬車が街道を行く様子は、まるで血管を流れる栄養素のようだ。

 瘴気を迷宮が変換することによって生まれた素材が人間を生かし、その人間が宝を生み出していく。
 素晴らしいことだ。

 邪神の生み出す瘴気は人間の領域を蝕む毒でありながら、同時に人間を生かす薬なのだ。
 上空から見るとよりはっきりとそのことを意識する。
 生み出される宝を思えば、それは俺の欲求とも無関係ではない。

 …欲望のままに生きてきたが、俺も多くのものと関りを持った。
 世界のこと、迷宮のこと、邪神と瘴気のこと、今なら迷宮主から詳しい話を聞くのもやぶさかではないと感じる。

 ラ・メイズはメインゲートを擁する人族の、人間の心臓部だ。
 その心臓の動きは活発になっている。他ならぬ自分の手によってだ。
 推測だが、近いうちになんらかの変化があるだろう。根拠はないが、確信に近い考えを抱く。

 変化が起こるのはラ・メイズだけではないだろう。
 ラ・メイズから送り出された血液が、思わぬ何かを持ち帰ってくるかもしれない。
 はるか地平線の果て、荒野に目を向ける。

 陽の光を受けて輝く世界は、上空から見るとまるで宝石箱を覗き込んでいるようだ。

 魔物の跋扈する荒野、世界の外縁部に広がる広大な海、ひっそりと存在するというドワーフやエルフの領地。
 そこにもまだ見ぬ景色と宝が俺を待っているのかもしれない。
 向こうからアクションがないのなら。この場所からでは確認ができないが、いずれ訪れてみるのも良いかもしれないな。


「これが空から見たラ・メイズ…。なんだか的当て遊びの的みたいです。あ、あれが冒険者ギルドですね。すごく大きいです」

「こうして上空から見ると区画ごとにだいぶ見た目が違うのですわね。レインベルとは違って区画がすごくわかりやすいですわ」

「屋根からして金のかけ方がちゃうからな。貴族区画は屋根までキンキラキンやで。まぁこれから富を操るのはウチらやけどな。とりあえず貴族さんにはお金を吐き出してもらわんとなぁ」

 頭の上で会話をする所有物たちの声が、遠くへ飛んでいた意識を引き戻す。
 楽し気に会話をしている三人だが、割と自由に発言な飛び交いあまり噛み合っていない。それぞれ視点が異なっているのがおもしろい。

 シオンは純粋に見えた景色を評価している。
 コレットはラ・メイズの区画の違いに目が行っているようだ。
 そしてベルは相変わらずである。

「冒険者ギルドの入り口から人が蛇みたいになってます。あれってひょっとして…」

 ひとしきり上空からの景色を楽しんでいたが、シオンの言葉に全員が目的を思い出した。

「あ、良く見ると動いていますわね。壁か何かかと思っていましたわ。あの全てが人ですの?」

 コレットの指さす先にはゴマ粒ほどの大きさの点がワサワサと集まり、長い列を形成していた。
 概算だが一万人ほどは列に並んでいるのではないだろうか。

 上空から見た人間はちっぽけな存在だ。
 そしてそれは地上で見ても、やはり変わらない。
 だが、俺はそのちっぽけな人間がただのちっぽけな存在で終わらないことを知っている。
 それは前世の知識で、そして今世の経験で。

 ゴマ粒のような人間も、集めれば巨大な生き物のように強大な力を発揮する。
 時に、知恵ある魔物に匹敵する個が生まれることもある。

 眼下にある人の列は、見下すような言い方をすれば、砂糖に群がるアリのようだ。
 だが視点を変えれば、その一人一人が貪欲に力と豊かさを求める独立した個体なのだ。

 冒険者ギルドは人間のために巨大な砂糖を提供し、俺はその見返りを得るつもりだ。


「さすがしーちゃんは目がええな。あれがギルド登録の順番待ちの列やで。登録のための魔道具はトシゾウはんからたくさんもらっとるけど、あえて数と一日の登録者数を絞っとるんや。今の最後尾で三日待ちやな」

「み、三日ですか?そんなに並んでいたら、お腹が減って大変です。トイレも行けません」

「パーティに一人でも登録者がおったら最低限のサービスを利用できるから、みんな交代しながら並んどるな。並んどるうちに情報の説明や共有を進めとる。宣伝にもなるし、列の前で料理を売ればさらにガッポガッポやで」

 手で輪っかを作り、ニヤリと笑うベル。
 順番待ちの列は人の塊だ。
 人はただ存在するだけで何かを消費するため、料理班の宣伝と売り上げを兼ねて食事を販売しているらしい。たくましく頼りになることだ。

「さすがベルさんです。わざと人数を減らすなんて考えつきませんでした」

「餅は餅屋ってやつやな。この分やと登録者に配るポーション代くらいにはなりそうや。あまりトシゾウはんに頼りっぱなしっていうのも商人のプライドが傷つくしなぁ。商機は無駄にせぇへんで!」

「うぅ、レインベル領の冒険者ギルド支部の責任者もベルベットさんでしたわよね。レインベルの経済が心配になってきましたわ。どうかお手柔らかに…」

 仕事人のベルを見て目を輝かせるシオンと頭を抱えるコレット。
 今日も所有物たちの仲が良いようで何よりだ。
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