超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
152 / 172
冒険者ギルド世界を変える

150 服屋の店主は棚ぼたを貪る

しおりを挟む
「すごい、レインベルの水上マーケットのような活気ですわね」

 雑多な屋台が立ち並ぶ冒険者区画を珍しそうに眺めながら歩くコレットと、コレットの様子になんとなく得意げな表情を浮かべるシオン。
 気持ち良い秋晴れのラ・メイズを二人の有名人が歩いている。
 最初の目的地は王城だ。

「シオン様だ。今日は私服だぞ」

「か、かわいい…ハァハァ」

「となりはもしかしてコレット様かしら」

「ああ、この前シオン様と一緒に獣人を倒した人族の勇者か。たしか指一本で屈強な男を弾き飛ばせるらしい」

「あっ!シオン様ですぅ。私も一緒に…」

「換金が先だ。ケガもしているだろう」

「痛いですぅ!傷が開くですぅ!」


「…なんだかすごく人目を感じますわ」

「みんな私たちの噂をしているようです。もう慣れました」

 大通りを歩く二人は早くも注目を集めていた。
 二人が有名なのは事実だが、道行く人も最初から二人の正体に気付いているわけではない。
 最初に注目が集まるのは、二人の優れた容姿によるものだ。
 すれ違った麗しい女性に思わず振り返り、その正体に気付いて視線が釘付けになるのである。

「レインベル領ならともかく、ラ・メイズで注目されるのは少し落ち着きませんわ。目立たないようにローブでも着込みましょうか」

「それならあっちに服屋さんがあります」

 二人は小さな目的を追加し、冒険者区画探索を楽しんだ。


「まいど!」

 シオンとコレットは屋台でローブを物色する。
 適当なパイプをつなぎ合わせて作った安っぽい陳列台に、茶褐色や濃い緑色などの目立たない色合いの服が無造作に陳列されている。
 半分は古着で、染みやほつれのあるものも多い。

 普通、立場のある者が冒険者区画で衣服を買うことは少ない。

 冒険者区画は掘り出し物が転がっているものの、防具でもない衣服については冒険者や一般の労働者が買い求めるような安物の品が多いからだ。
 貴族や富裕層は専ら貴族区画の高級店や御用商人を利用する。

 領主と副ギルドマスター、さらに勇者の肩書を持つ二人は、すでに格の上ではその辺りの貴族に勝っている。
 屋台で安物のローブを求めるというのは常識から外れているのだが、二人はそれを気にすることはない。

 コレットは自覚があっても見栄より実を取る。
 見栄が必要な時もあることは知っているが、その必要がなければ華美な服装にそれほどの興味は持たない。

 シオンはまだ自分の格について自覚が薄い。
 シオンが拾い屋であった頃は、屋台の衣服ですら手が出ないほど高価な品だったのだ。

「シオンにはこの草色のローブの方が似合っていますわ」

「うーん、でもちょっと高いです。それよりこっちのフード付きの方が丈夫そうです」

 見た目は二の次で、縫製や値札ばかりに目をやっているシオンに苦笑するコレット。

「もう、シオンはよく働いているし今はお金持ちなんだから、少しくらい贅沢しても罰は当たりませんわ」

「うん…。お給料も頂いているし、自分で稼げるようにもなって。ご主人様にもお金の遠慮をする必要はないと言われているんだけど…。拾い屋の時にこれを買おうと思ったらどれだけ大変か考えると手が引っ込んじゃうの」

「ふふ、シオンらしい。私も仕事柄お金を使う時は使うけれど、必要ない時は使いませんもの。…でもトシゾウ様の隣にいるのなら、お金の使い方も覚えていかないといけないわね。隣に立つ者がボロボロの服を着ていたら、トシゾウ様の格を落とすことになりますわ」

「そ、それはダメです。コレット、またいろいろ教えてください」

「もちろんですわ。まぁ今日はお忍びですし、目立たない新品のローブを買いましょう」

「うん、わかった」

 シオンとコレットの主人であるトシゾウは、すでに経済をコントロールできる立場にいる。
 極端に言えば金などいくら使ってもなくならないし、むしろ派手に使うことで経済が活性化するくらいだ。
 それを頭では理解しつつも、昔の貧乏性が抜けないシオンであった。

 あれでもないこれでもないと、立ち寄ったお店の半分の商品をひっくり返した二人は最終的に頭をスッポリ覆うフード付きのローブを購入した。地味だが新品だ。

 装飾もほとんどない目立たない色合いのローブは二人を街に溶け込ませる。
 町娘の姉妹のようになった二人は、ニコニコしながら去っていった。

「おい店主、俺にも服を一着くれ!」

「シオン様と、シオン様と同じローブをください!」

「まいど!これはちょいと高いよ!」

「かまわん、売ってくれ!」

 商魂たくましい屋台の店主はシオンとコレットが買うか悩んだ服を一斉に値上げし、二人の様子を遠目に見守っていた者たちにすべて売りつけることに成功したのであった。
 思わぬ幸運に恵まれた店主は早めに店を畳み、馴染みの酒場へ飲みに繰り出した。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...