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冒険者ギルド世界を変える
158 女子会とかいう最高評議会
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夜 貴族区画 風見鶏の寄木亭
「ほっほっほ、いらっしゃいませ」
黒の燕尾服を着こなした初老の紳士がシオンたちをにこやかに出迎える。
風見鶏の寄木亭は貴族区画にある三階建ての木造の建物だ。
高級な素材や調度品を惜しむことなく配置しながらも、主人であるラザロのセンスにより落ち着いた雰囲気を感じさせる場所となっている。
本来は貴族や裕福な平民向けの宿だが、食事だけの利用も可能である。
店主の身分が身分だけにラ・メイズでも指折りの高級店であるが、本日は女子会に参加する王女サティアがコネとカネにモノを言わせて貸し切りにしている。
参加者はシオン、コレット、ベルベット、サティア、クラリッサ、アイシャの6人。
あえて肩書で表すならば、勇者かつギルドの副マスター、勇者かつ領主、ギルドの財務代表、人族王女、知恵ある魔物、最後に知恵ある魔物の保護者役の娼婦が一つのテーブルを囲っていることになる。
武力、財力、権力。
下手をするとこの集まりで飛び出した議題…もとい話題一つがラ・メイズを動かしかねないのだが。
幸か不幸か本人たちにその気はない。
これはあくまでもトシゾウの前世で言うところの女子会なのであって、権力者たちのサロンではないのである。
とはいえ、参加者が参加者だ。
飛び出す話題は聞く者によっては千金の値が付くことが予想される。
いろいろと問題がないように店を貸切りにした次期女王の判断はさすがであった。
あらかじめ下ごしらえを済ませていたのだろう、樹の形をした上位の魔物、エルダートレントの素材を利用してテーブルの上に色彩豊かな料理が並べられていく。
「よっしゃ!みんな酒は持ったな?あ、しーちゃんはジュースな。では僭越ながらウチが乾杯の音頭を取らせてもらうで。…かんぱい!」
「「かんぱーい!」」
ハイテンションなベルの声に負けじと全員がグラスを打ち鳴らした。
シオンはジュース。あとは全員アルコール入りだ。
“とりあえずビール”なる言葉があるのか不明だが、最初の一杯はグラスになみなみと注がれたエールである。
シビルフィズ領産の麦を発酵させたエールは、麦の深いコクを残しつつもフルーティな味わいが特徴だ。
トシゾウの前世のグラスには及ばないものの、迷宮のアイスゴーレムの素材を加工した透明のグラスがエールを適温に保ち、そのエールを口に含んだ者に爽やかな清涼感を届けることに一役買っている。
こだわっているのはエールだけではない。
壁の一画には様々な高級酒が等間隔にズラリと並び、酒に一家言ある者ならそれを眺めるだけで一日を潰せるだろう。
人族の酒だけでなく、ドワーフ領の火酒、エルフ領の熟成ワインなども取り揃えられている。
次々とテーブルに運ばれる料理も酒に負けるものではない。
人間の領域の全てを網羅せんとばかりに用いられた食材が、鮮度を保ったままに美しい皿の上で芸術作品のごとく盛り付けられている。
それでいてカロリー高めの大皿がさりげなくシオンの近くに配置されているのはラザロが無駄に発揮した観察眼によるものだ。
気付けば必要な物が必要な場所に揃っている。
最高級の宿、風見鶏の寄木亭の面目躍如と言ったところか。
「ほっほっほ、最近は質の高い食材が流通するようになっておりますからな。それもここにいらっしゃる皆様の尽力あってのことです。本日は存分にお楽しみください」
女性たちが思い思いに自由に料理へ手を伸ばし始めることを確認し、自ら給仕を務めたラザロが微笑みながら退出していった。
「かーっ!うまい!さすが王女様プロデュースの店は一味ちがうなぁ」
「とても美味しいですねクラリッサ様。こんなお食事を食べたのは初めてです」
「うむ、ときどきユーカクに招待して料理を振る舞ってほしいくらいなのじゃ」
「はぐはぐはぐはぐ」
「シオン、はしたないですわ。たくさんあるからゆっくり食べなさいな」
「うん、たくさん知らない食べ物があるからつい食べてみたくて」
「いいじゃない。ボクもこんなにたくさんの女の子とお酒を飲むのは初めてだからワクワクするよ。ラザロおじさんにお願いしたらすごく張り切って準備してくれたんだ。お城の節約料理よりよっぽど豪華で笑っちゃったよ。パーティだと食事が豪華でもおじいちゃんばっかりだし、気軽に話せる女友達も少なくてね。誘ってくれてありがとね」
「あー、たしかにトシゾウはんがブイブイいわすまでは国庫が削れてる感じやったもんなぁ」
「わかる?やっぱりベルにはお見通しだったみたいだね。人族の社会システムは人族が発展し続けることを前提に作られているからね。特殊区画が荒野に戻って人が溢れると、もうその保護だけで国庫がパンクしちゃうんだ。昔は特殊区画の開放されることの方が圧倒的に多かったから、仮にそうなってもそっちへ開拓民として回せば良かったみたいなんだけどね」
そうなるとやっぱり削れるところから削らないとね、と恥ずかし気に笑うサティア。
「政策とか兵士の給与とかを追えば誰でもわかるから、そんなに偉そうな話でもないんやけどな。実際の数字を見ればすぐにわかるくらい先細り一直線やったからなぁ。もしレインベル領が荒野に呑まれたらもう見捨てるしかなかったはずや。その現実をちゃんと直視して王族自らが倹約に勤めとると言うことはすごい立派なことや」
「まぁそれも過去の話で、トシゾウが全てひっくり返しちゃったけどね」
「はは、ほんまやなぁ」
グラスを半分ほど開けたバルベットは上機嫌に笑う。
「そうそう。予算編成なんて最初からやり直しでね。その仕事も振られた爺はかなり忙しそうだけど、心労は軽くなったと思うよ。どうせ忙しいなら明るい未来に向かう忙しさの方が良いよね。ほんとトシゾウのおかげだよ」
「ええ、トシゾウ様には救われてばかりですわ。少しでも働いて恩をお返ししなくてはなりませんわね。…そういえば今日集まった皆さんも、みんなトシゾウ様繋がりで…あ、そういえばまだちゃんと自己紹介を済ませていませんでしたわね。私はアイシャさんやクラリッサさんとは初対面ですわ」
「うふふ、そうですね。皆さん接しやすくてついつい自然に話していました。でも皆様の立ち振る舞いを見ていると、やはり貴族家の方なのでしょうか。……え、領主様?…王女様?もう、からかっているのですね」
「アイシャ、どうやら本当に王女様らしいのじゃー」
「え、ええ?」
「まぁ気にすることはない。アイシャもダユーだから偉いのじゃ。それにトシゾウの初めての女というのはこの中で一番の誉れなのじゃ。羨ましいのじゃー」
「え、まって!それ詳しく聞きたい!王女様命令だよ!」
「そうでしたわ、さぁ詳しくお話しなさい。レインベル領主の名において命じますわ」
「はぐはぐ、私も次の誕生日の時のためにいろいろ教えて欲しいです」
「え、ええと。いくら知り合いでも、いえ、知り合いだからこそお客様の個人情報はお話しできませんので、ユーカクで教育している基本的なテクニックなら…かまいませんか、クラリッサ様」
「うむ、アイシャのテクニックはダユーの中でも随一じゃからの。妾もアイシャの話を聞いて来るべき本番のために備えるのじゃ」
「ユーカク仕込みのテクニックはウチも気になるなぁ。…ん、なんでクラリッサはんが聞く必要あるんや?ユーカクの一番人気なんやろ?」
「なんじゃ、トシゾウから聞いておらんのかや。妾はたしかにユーカクでもトップのユージョなのじゃが、まだ誰にも身体を許したことはないのじゃー」
「股開かんとそれ以外でアタマ獲ったってことか?そらすごいなぁ」
「いえ。股、どころか、クラリッサ様は殿方に一切触れることなく一番人気を獲得しておられるのです」
「うむ、妾はピッチピチの処女でありんす」
“股”のあたりで若干恥じらいが覗くアイシャと、その横で堂々と生娘宣言をするクラリッサ。
「はぁ?どういうことや、八百長か?」
「八百長ではないのじゃ。妾の持つ幻覚スキルにかかれば、言うならば自由に夢が見られるようなもの、普通はできないあんなことやこんなことも思いのままなのじゃ。頭の中が幸せでいっぱいになるのじゃー」
「ええ、でもそれはただの夢やんか。幻でもええんか?」
「クラリッサ様が一番人気なのは事実ですよ。殿方によると、まるで自分が自分でなくなったような感覚が素晴らしいのだそうです。どんな夢を見ておられるのでしょうか」
「そうじゃな、やはりハーレムで酒池肉林の夢を見る者が多いかの。おなごの身体になって苛められたいとか、エッチな魔物に襲われたいというのも多いのじゃ」
「…男の人ってみんなヘンタイだよね」
サティアの目からハイライトが消える。
「あらあら、でもクラリッサ様のお客様には女性の方も多いのですよ?」
「あー、なんやすごそうやな。ウチもいっちょ体験してみようかな…」
「…人間って」
自分の知らない世界を知り、人間に絶望する王女様。
「はぐはぐ…女の人は知らないけど、男の人は自分が気持ち良くなれれば何でも良いと思っています」
「な、なんやしーちゃんのセリフ、やけに説得力あるなぁ」
「うむ、シオンはわかっておるのう。実際に体を重ねたとてそれは一夜の夢、幻覚と同じものでありんす。妾なら相手が望む幸せの夢を思う存分見せてやることができる。得られる多好感は脳を痺れさせ、事後もその情事を夢と思わせぬ。ユーカクを出るときに、楽しい夢だと気付くか、それとも実体験として記憶するかは事前に選択できるのじゃ、他にもオプションマシマシなのじゃ。無論、どのような幻覚であれ客が廃人になっては迷宮のためにならぬので加減しておるがの。くふふ、艶淵狐の二つ名は伊達ではないのじゃー!」
薄い胸を張るクラリッサ。
そこに知恵ある魔物の威厳があるかはともかく、その能力が強力無比であることは疑いようがない。
その気になれば集団洗脳からの国家転覆もお手の物である。
「うーん、やっぱりクラリッサも知恵ある魔物なんだね。酔いが吹っ飛んだよ」
「最初から最後まで夢の中での出来事ってことやんな。えげつないなー」
「まぁ、相当に格の差がないと簡単にレジストされる使い所が難しい能力なのじゃ。条件を揃えないと普通の冒険者ですらレジストされることがありんす。もちろんトシゾウにはどうやっても効かんのじゃー…」
「うふふ、ですからクラリッサ様もしっかり覚えてくださいね?」
「ご主人様はあの時すごくスッキリした顔をしていました。だからアイシャさんに教えてもらえば安心だと思います」
「なるほど…。ボクも将来の旦那様のために頑張って覚えないとね!」
「アイシャさんのテクニックを使って次こそトシゾウ様に一矢報いてやりますわ!先生お願いします」
「うぅ…、い、一応ボクも聞いておこうかな、一応ね!」
「むっつりスケベがいますわ」
「んなっ…」
普段からかわれることが多いコレットがここぞとばかりにいじりにかかる。
「うふふ、まぁまぁ。それでは最初の雰囲気の作り方から…」
雰囲気が尖りかければアイシャがクルリと丸めていく。
かくしてアイシャ師範のトシゾウ口座へ話題が移っていく。
飲み会はまだまだ始まったばかりであった。
「ほっほっほ、いらっしゃいませ」
黒の燕尾服を着こなした初老の紳士がシオンたちをにこやかに出迎える。
風見鶏の寄木亭は貴族区画にある三階建ての木造の建物だ。
高級な素材や調度品を惜しむことなく配置しながらも、主人であるラザロのセンスにより落ち着いた雰囲気を感じさせる場所となっている。
本来は貴族や裕福な平民向けの宿だが、食事だけの利用も可能である。
店主の身分が身分だけにラ・メイズでも指折りの高級店であるが、本日は女子会に参加する王女サティアがコネとカネにモノを言わせて貸し切りにしている。
参加者はシオン、コレット、ベルベット、サティア、クラリッサ、アイシャの6人。
あえて肩書で表すならば、勇者かつギルドの副マスター、勇者かつ領主、ギルドの財務代表、人族王女、知恵ある魔物、最後に知恵ある魔物の保護者役の娼婦が一つのテーブルを囲っていることになる。
武力、財力、権力。
下手をするとこの集まりで飛び出した議題…もとい話題一つがラ・メイズを動かしかねないのだが。
幸か不幸か本人たちにその気はない。
これはあくまでもトシゾウの前世で言うところの女子会なのであって、権力者たちのサロンではないのである。
とはいえ、参加者が参加者だ。
飛び出す話題は聞く者によっては千金の値が付くことが予想される。
いろいろと問題がないように店を貸切りにした次期女王の判断はさすがであった。
あらかじめ下ごしらえを済ませていたのだろう、樹の形をした上位の魔物、エルダートレントの素材を利用してテーブルの上に色彩豊かな料理が並べられていく。
「よっしゃ!みんな酒は持ったな?あ、しーちゃんはジュースな。では僭越ながらウチが乾杯の音頭を取らせてもらうで。…かんぱい!」
「「かんぱーい!」」
ハイテンションなベルの声に負けじと全員がグラスを打ち鳴らした。
シオンはジュース。あとは全員アルコール入りだ。
“とりあえずビール”なる言葉があるのか不明だが、最初の一杯はグラスになみなみと注がれたエールである。
シビルフィズ領産の麦を発酵させたエールは、麦の深いコクを残しつつもフルーティな味わいが特徴だ。
トシゾウの前世のグラスには及ばないものの、迷宮のアイスゴーレムの素材を加工した透明のグラスがエールを適温に保ち、そのエールを口に含んだ者に爽やかな清涼感を届けることに一役買っている。
こだわっているのはエールだけではない。
壁の一画には様々な高級酒が等間隔にズラリと並び、酒に一家言ある者ならそれを眺めるだけで一日を潰せるだろう。
人族の酒だけでなく、ドワーフ領の火酒、エルフ領の熟成ワインなども取り揃えられている。
次々とテーブルに運ばれる料理も酒に負けるものではない。
人間の領域の全てを網羅せんとばかりに用いられた食材が、鮮度を保ったままに美しい皿の上で芸術作品のごとく盛り付けられている。
それでいてカロリー高めの大皿がさりげなくシオンの近くに配置されているのはラザロが無駄に発揮した観察眼によるものだ。
気付けば必要な物が必要な場所に揃っている。
最高級の宿、風見鶏の寄木亭の面目躍如と言ったところか。
「ほっほっほ、最近は質の高い食材が流通するようになっておりますからな。それもここにいらっしゃる皆様の尽力あってのことです。本日は存分にお楽しみください」
女性たちが思い思いに自由に料理へ手を伸ばし始めることを確認し、自ら給仕を務めたラザロが微笑みながら退出していった。
「かーっ!うまい!さすが王女様プロデュースの店は一味ちがうなぁ」
「とても美味しいですねクラリッサ様。こんなお食事を食べたのは初めてです」
「うむ、ときどきユーカクに招待して料理を振る舞ってほしいくらいなのじゃ」
「はぐはぐはぐはぐ」
「シオン、はしたないですわ。たくさんあるからゆっくり食べなさいな」
「うん、たくさん知らない食べ物があるからつい食べてみたくて」
「いいじゃない。ボクもこんなにたくさんの女の子とお酒を飲むのは初めてだからワクワクするよ。ラザロおじさんにお願いしたらすごく張り切って準備してくれたんだ。お城の節約料理よりよっぽど豪華で笑っちゃったよ。パーティだと食事が豪華でもおじいちゃんばっかりだし、気軽に話せる女友達も少なくてね。誘ってくれてありがとね」
「あー、たしかにトシゾウはんがブイブイいわすまでは国庫が削れてる感じやったもんなぁ」
「わかる?やっぱりベルにはお見通しだったみたいだね。人族の社会システムは人族が発展し続けることを前提に作られているからね。特殊区画が荒野に戻って人が溢れると、もうその保護だけで国庫がパンクしちゃうんだ。昔は特殊区画の開放されることの方が圧倒的に多かったから、仮にそうなってもそっちへ開拓民として回せば良かったみたいなんだけどね」
そうなるとやっぱり削れるところから削らないとね、と恥ずかし気に笑うサティア。
「政策とか兵士の給与とかを追えば誰でもわかるから、そんなに偉そうな話でもないんやけどな。実際の数字を見ればすぐにわかるくらい先細り一直線やったからなぁ。もしレインベル領が荒野に呑まれたらもう見捨てるしかなかったはずや。その現実をちゃんと直視して王族自らが倹約に勤めとると言うことはすごい立派なことや」
「まぁそれも過去の話で、トシゾウが全てひっくり返しちゃったけどね」
「はは、ほんまやなぁ」
グラスを半分ほど開けたバルベットは上機嫌に笑う。
「そうそう。予算編成なんて最初からやり直しでね。その仕事も振られた爺はかなり忙しそうだけど、心労は軽くなったと思うよ。どうせ忙しいなら明るい未来に向かう忙しさの方が良いよね。ほんとトシゾウのおかげだよ」
「ええ、トシゾウ様には救われてばかりですわ。少しでも働いて恩をお返ししなくてはなりませんわね。…そういえば今日集まった皆さんも、みんなトシゾウ様繋がりで…あ、そういえばまだちゃんと自己紹介を済ませていませんでしたわね。私はアイシャさんやクラリッサさんとは初対面ですわ」
「うふふ、そうですね。皆さん接しやすくてついつい自然に話していました。でも皆様の立ち振る舞いを見ていると、やはり貴族家の方なのでしょうか。……え、領主様?…王女様?もう、からかっているのですね」
「アイシャ、どうやら本当に王女様らしいのじゃー」
「え、ええ?」
「まぁ気にすることはない。アイシャもダユーだから偉いのじゃ。それにトシゾウの初めての女というのはこの中で一番の誉れなのじゃ。羨ましいのじゃー」
「え、まって!それ詳しく聞きたい!王女様命令だよ!」
「そうでしたわ、さぁ詳しくお話しなさい。レインベル領主の名において命じますわ」
「はぐはぐ、私も次の誕生日の時のためにいろいろ教えて欲しいです」
「え、ええと。いくら知り合いでも、いえ、知り合いだからこそお客様の個人情報はお話しできませんので、ユーカクで教育している基本的なテクニックなら…かまいませんか、クラリッサ様」
「うむ、アイシャのテクニックはダユーの中でも随一じゃからの。妾もアイシャの話を聞いて来るべき本番のために備えるのじゃ」
「ユーカク仕込みのテクニックはウチも気になるなぁ。…ん、なんでクラリッサはんが聞く必要あるんや?ユーカクの一番人気なんやろ?」
「なんじゃ、トシゾウから聞いておらんのかや。妾はたしかにユーカクでもトップのユージョなのじゃが、まだ誰にも身体を許したことはないのじゃー」
「股開かんとそれ以外でアタマ獲ったってことか?そらすごいなぁ」
「いえ。股、どころか、クラリッサ様は殿方に一切触れることなく一番人気を獲得しておられるのです」
「うむ、妾はピッチピチの処女でありんす」
“股”のあたりで若干恥じらいが覗くアイシャと、その横で堂々と生娘宣言をするクラリッサ。
「はぁ?どういうことや、八百長か?」
「八百長ではないのじゃ。妾の持つ幻覚スキルにかかれば、言うならば自由に夢が見られるようなもの、普通はできないあんなことやこんなことも思いのままなのじゃ。頭の中が幸せでいっぱいになるのじゃー」
「ええ、でもそれはただの夢やんか。幻でもええんか?」
「クラリッサ様が一番人気なのは事実ですよ。殿方によると、まるで自分が自分でなくなったような感覚が素晴らしいのだそうです。どんな夢を見ておられるのでしょうか」
「そうじゃな、やはりハーレムで酒池肉林の夢を見る者が多いかの。おなごの身体になって苛められたいとか、エッチな魔物に襲われたいというのも多いのじゃ」
「…男の人ってみんなヘンタイだよね」
サティアの目からハイライトが消える。
「あらあら、でもクラリッサ様のお客様には女性の方も多いのですよ?」
「あー、なんやすごそうやな。ウチもいっちょ体験してみようかな…」
「…人間って」
自分の知らない世界を知り、人間に絶望する王女様。
「はぐはぐ…女の人は知らないけど、男の人は自分が気持ち良くなれれば何でも良いと思っています」
「な、なんやしーちゃんのセリフ、やけに説得力あるなぁ」
「うむ、シオンはわかっておるのう。実際に体を重ねたとてそれは一夜の夢、幻覚と同じものでありんす。妾なら相手が望む幸せの夢を思う存分見せてやることができる。得られる多好感は脳を痺れさせ、事後もその情事を夢と思わせぬ。ユーカクを出るときに、楽しい夢だと気付くか、それとも実体験として記憶するかは事前に選択できるのじゃ、他にもオプションマシマシなのじゃ。無論、どのような幻覚であれ客が廃人になっては迷宮のためにならぬので加減しておるがの。くふふ、艶淵狐の二つ名は伊達ではないのじゃー!」
薄い胸を張るクラリッサ。
そこに知恵ある魔物の威厳があるかはともかく、その能力が強力無比であることは疑いようがない。
その気になれば集団洗脳からの国家転覆もお手の物である。
「うーん、やっぱりクラリッサも知恵ある魔物なんだね。酔いが吹っ飛んだよ」
「最初から最後まで夢の中での出来事ってことやんな。えげつないなー」
「まぁ、相当に格の差がないと簡単にレジストされる使い所が難しい能力なのじゃ。条件を揃えないと普通の冒険者ですらレジストされることがありんす。もちろんトシゾウにはどうやっても効かんのじゃー…」
「うふふ、ですからクラリッサ様もしっかり覚えてくださいね?」
「ご主人様はあの時すごくスッキリした顔をしていました。だからアイシャさんに教えてもらえば安心だと思います」
「なるほど…。ボクも将来の旦那様のために頑張って覚えないとね!」
「アイシャさんのテクニックを使って次こそトシゾウ様に一矢報いてやりますわ!先生お願いします」
「うぅ…、い、一応ボクも聞いておこうかな、一応ね!」
「むっつりスケベがいますわ」
「んなっ…」
普段からかわれることが多いコレットがここぞとばかりにいじりにかかる。
「うふふ、まぁまぁ。それでは最初の雰囲気の作り方から…」
雰囲気が尖りかければアイシャがクルリと丸めていく。
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