超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
167 / 172
冒険者ギルド世界を変える

165 ベルベットは辣腕コンサルタント

しおりを挟む
「ちっ、金持ちが見せつけやがって。どうせ悪どいことして稼いだに決まってらぁ。なぁ、黒髪のあんちゃんもそう思うだろ?必死に金稼いでる冒険者を馬鹿にしてるんじゃねぇのか」

「…い、いや、これはギルド長が真っ当な戦利品だそうだぞ?それを皆に見てもらいたかったんじゃないのだろうか」

「へっ、そんなもん見せびらかしてどうするってんだ。お貴族様の考えることはわからねーぜ。だいたい建物に自分の名前を入れるやつは碌でもない奴と相場が決まってんだよ!」

 …ぐぬぬぬ。

 ほぞを噛む黒髪黒目の冒険者、もといトシゾウ。
 迷宮を出てからここまで挫折感を味わうのは初めてのことかもしれない。
 トシゾウギャラリーの素晴らしさがわからないなど、この世界は間違っていると言わざるを得ない。

 ギルドメンバーはおろか、冒険者ギルドに訪れる人間たちもほとんど関心を示さなかった。
 美しく飾られた宝の数々を見て、その輝きに一瞬目を奪われはするのだが、すぐにフンと鼻を鳴らして立ち去ってしまう。

 どうにもこの世界の人間は即物的というか、芸術に対してひねくれているというか。
 宝を鑑賞するだけで満足するという文化がないようだ。
 あるいは、高嶺の花すぎてつまらないと言うことだろうか?

 一部の貴族や富裕層、高レベルの冒険者の中には飾られた宝に興味を示す者もそれなりにいた。
 だがそれは美術館にある芸術を鑑賞するというよりは、店で商品を買い付ける時のような目線であった。
 やれ飾られている宝を購入したいだとか、やれそれをどこで手に入れたのだとかいうことばかり尋ねてくる。

 せっかくレイアウトの一つ一つから気合いを入れて設計したというのに、称賛を得られないのは片手落ちである。
 宝を手に入れるだけで満足していた頃から考えれば面白い発想ができるようになったものだと満足していたのだが、その展示した宝を誰も愛でてくれないのでは意味がない。

 前世の美術館や博物館というものはそれなりに繁盛していたはずだ。
 金を払ってでも訪れる者もたくさんいたように思うのだが、やはり文化的な所で壁があるのだろうか。

 価値のある宝を展示する、前世は美術館のような建物があれば、興味を持った人間たちがわらわらと集まってくると思っていたのだが、どうにも違うらしい。

「かつて城の兵士がシオンを所有する俺のことを羨ましがったように、自分のコレクションを見せつけることでショーケースにへばりついて宝を欲しがる者を見て悦に入りたかったのだが…」

「うん、なんというか、トシゾウはんもゲスなところあるんやな。手に入らん宝を見せつけられても誰も喜ばへんで」

 ぐぬぬ。
 悔しいが言い返すことができない。


 一応、例外もいることはいた。

「おおお、これは三代前の勇者様が愛用したと言われるシャクジョーではないか!? そしてこれはあの伝承に出てくる魔道具か?とてつもない力を感じるぞい…。あぁ、ずっとこの中で生活したいくらいじゃ…!」

「…ダストン、お前は素晴らしい人間だ。実に知的で、先進的で、物事をよくわかっている。そうだ、お前をこのギャラリーの館長に…」

「ひっ。トシゾウ殿、今のは言葉の綾というやつですじゃ。さすがにこれ以上はエリクサーがあっても過労死してしまうゆえ勘弁願いたく…」

 足早に立ち去っていくラ・メイズ宰相、もとい勇者オタク。


 閑古鳥が鳴いている。大合唱だ。…おかしい。

 単に価値ある品を見せびらかせば人が寄ってきて感心したり羨ましがると思っていた。
 そして見物料でギルドの収益にもなると考えていたのだが、どうやら見通しが甘かったらしい。

 別に誰に見られずとも自己満足のためだけにギャラリーを設置していても構わないのだが、ベルに言われた金持ちの道楽という言葉がどうにも心に引っかかった。
 冒険者ギルドの敷地内に建てる以上、一応僅かながらでも収益化をする予定だったのだが…。

「どうやら俺には商才がないらしい。背に腹は代えられんか」

 トシゾウはベルベットを呼び出した。
 その背中には、腕利きのコンサルタントに自分のふんどしを差し出す経営者のような寂しさが宿っていた。

「ベル、このギャラリーで収益を出すにはどうしたら良い。なぜここまで人が来ない」

「いや、そう言われてもなぁ」

 呼び出されたベルベットはどう答えたものかとしばらく腕を組んで唸る。

「…ようわからんけど、トシゾウはんのおった世界では美術館っちゅうやつが流行っとったんやろ?せやけどそれをこの世界の人間でも同じやと考えたらあかへんで。話を聞く限り、トシゾウはんの世界の人間は相当洗練されとるんやな。みんながみんな貴族みたいや」

「貴族か。たしかに…」

 言われてみればそうだったのかもしれないと考えるトシゾウ。

 前世日本の記憶は全て思い出せるわけではないが、この世界の人間よりははるかに良い生活をしていたのは間違いない。
 生活が安定し、宝を愛でる余裕のある者が多かったということだろうか。
 冒険者の質の向上によりこの世界の人間の生活水準は高くなりつつあるが、それでもほとんどの者は生きるだけで精いっぱいということなのかもしれない。

「例えば鍛冶屋が新しい魔法のついた武器を作るときなんかはまずパトロンを探すんや。いくら素材費だけしかかからんいうても、一鍛冶屋やと金が足りへん。今は冒険者が素材を手に入れやすくなったから、冒険者がそのまま素材を持ち込んで依頼することも増えたんやろうけど、冒険者は実用的な武器を求めるから、あんまり冒険はせえへん」

「そうだな」

「トシゾウはんのギャラリーを見たいなんて言う物好きは、いわばそのパトロンになるような人種やろな。新しいものが好きで、それに金や労力をかけようっちゅうもんは少ないけどおる」

「…うむ」

 迷宮の深層から提供される良質の素材があっても、ただ素材があるだけでは良い宝は生まれないということなのだろう。
 より高い水準の宝を求める人間が増えなければ、宝の質は上がらないのだ。
 金持ちの道楽が素晴らしい発明や宝を生むということは往々にして起こり得る。
 馬鹿貴族の唯一の利点と言っても良い。

「あとは話を聞いとって思いついたんやけど、美術館には価値のあるもんを失わないように保存するっちゅう意味もあるんやないか?あとは最新の技術を展示して何かの参考にするとか」

「たしかにその通りだ」

「そういった学術的な価値のあるもんを中心に展示すれば識者層に一定の需要はあるんちゃうかな。まぁ普通に考えてこのままやと万人が喜んで見に来るような性質のもんではないなぁ」

 言われてみれば前世は日本の美術館も、見学料だけではなくもっと他の所からの補助などで運営していたのではなかったか。
 研究目的の入館を無償としていた場所もあったはずだ。
 美術館や博物館に訪れる者も、なんとなく上流階級の雰囲気を漂わせていた気がする。

「つまり単なる見せ物だけで客を得るのは難しいということか」

「そういうことやな。ウチが思うに、客層とニーズに対する認識がズレとるんやないか。そもそも貴族区画ならまだしもここは冒険者区画やからな。まぁトシゾウはんがおるなら別に維持費がかかるわけでもなし、収益化は気にせんでもええんやけどな。それでも人を呼びたいなら、その宝もんをエサにして他の客を釣り上げるなり、冒険者への褒賞にしてやる気を出させるなりするとええんとちゃうか」

「なるほど。さすがベルは優秀だな。この上はエサをばら撒くのもやむを得ないだろう。最初はエサに釣られて来ようが、中には純粋に宝を愛でることの良さに気付く賢者がいるかもしれん。それで具体的にどうする」

「せやなぁ…。まずはエサになる宝を用意して、適当に広告打ってサクラを使って…」

 ブツブツと呟きながら頭のソロバーンを弾き出すベル。
 かくしてトシゾウギャラリーは開館数日にしてコンサルタントのテコ入れを入れることになったのである。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...