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3章 加護を受けた人
戦いの神②
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円卓の場に集まったのは、みこと、村の代表、そしてディルク。
「まずは、なぜ我々を“敵”と見なすのか、その理由を聞かせてください」
村の代表が丁寧に問うた。
ディルクは腕を組み、迷いなく言い放った。
「我らの周辺の村々は飢えている。雨は降らず、土地は痩せ、作物は実らない。にもかかわらず、この村だけが、季節を問わず豊かであるというのは──不自然だ」
「それは……女神様の豊穣の加護によるものです。わたしたちは、何も不正を──」
「それを証明できるのか?」
ディルクは、吐き捨てるように言った。
「お前たちはただ、“神の奇跡”とやらで富を囲い、他を救おうとはしない。つまり、選ばれし者の顔をして、下の者を見下している!」
「そんなこと……!」
みことが口を開いた。
「この村は、誰かを差別したことなんてないよ。助けを求めてきた人には、食べ物だって分けた。知ってる? 去年、道に迷った旅人の子に、みんなで……」
「知らん!」
ディルクの声が怒気をはらんだ。
「綺麗ごとを並べるな! 我々が欲しいのは“証拠”ではない、“救済”だ! 誰もが腹を満たせるだけの富だ!」
「だからって、奪っていい理由には──」
「奪うのではない。正しく分配するのだ。我々の神もそうおっしゃっている!」
彼は言葉を重ねるたびに、声を荒げ、主張を押し通すことしか考えていなかった。
みことが何度も言葉を差し挟もうとしても、そのたびに遮られ、否定される。
「……そうやってずっと、自分の正義だけを押しつけてきたんだね」
みことの声が、静かに震えた。
「話し合いって、相手の言葉も受け取ってからするものだと思ってたけど……あなたには、まだそれができないみたい」
---
その夜。みことは、村のはずれの高台でひとり女神に語りかけた。
「女神様……もう、無理かも。あの人、自分のことしか見てない。言い分を通すために敵を作って、他人を悪者にすることしか、できない……」
《では、あなたは諦めるの?》
「……ううん。ちがう。私ね……あの人に、“本当の他人”を見てほしいの」
《他人を“痛みを持つ存在”として感じる力──それを、授けましょうか?》
「うん。お願い、女神様……ディルクさんが、“人の気持ち”に気づけるようにして」
---
「まずは、なぜ我々を“敵”と見なすのか、その理由を聞かせてください」
村の代表が丁寧に問うた。
ディルクは腕を組み、迷いなく言い放った。
「我らの周辺の村々は飢えている。雨は降らず、土地は痩せ、作物は実らない。にもかかわらず、この村だけが、季節を問わず豊かであるというのは──不自然だ」
「それは……女神様の豊穣の加護によるものです。わたしたちは、何も不正を──」
「それを証明できるのか?」
ディルクは、吐き捨てるように言った。
「お前たちはただ、“神の奇跡”とやらで富を囲い、他を救おうとはしない。つまり、選ばれし者の顔をして、下の者を見下している!」
「そんなこと……!」
みことが口を開いた。
「この村は、誰かを差別したことなんてないよ。助けを求めてきた人には、食べ物だって分けた。知ってる? 去年、道に迷った旅人の子に、みんなで……」
「知らん!」
ディルクの声が怒気をはらんだ。
「綺麗ごとを並べるな! 我々が欲しいのは“証拠”ではない、“救済”だ! 誰もが腹を満たせるだけの富だ!」
「だからって、奪っていい理由には──」
「奪うのではない。正しく分配するのだ。我々の神もそうおっしゃっている!」
彼は言葉を重ねるたびに、声を荒げ、主張を押し通すことしか考えていなかった。
みことが何度も言葉を差し挟もうとしても、そのたびに遮られ、否定される。
「……そうやってずっと、自分の正義だけを押しつけてきたんだね」
みことの声が、静かに震えた。
「話し合いって、相手の言葉も受け取ってからするものだと思ってたけど……あなたには、まだそれができないみたい」
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その夜。みことは、村のはずれの高台でひとり女神に語りかけた。
「女神様……もう、無理かも。あの人、自分のことしか見てない。言い分を通すために敵を作って、他人を悪者にすることしか、できない……」
《では、あなたは諦めるの?》
「……ううん。ちがう。私ね……あの人に、“本当の他人”を見てほしいの」
《他人を“痛みを持つ存在”として感じる力──それを、授けましょうか?》
「うん。お願い、女神様……ディルクさんが、“人の気持ち”に気づけるようにして」
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