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3章 加護を受けた人
やさしい神様のいる世界
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村を後にする朝。
空にはやわらかな雲が流れ、陽は緩やかに昇り始めていた。
みことは村の門の前で、名残惜しそうに振り返る。
「本当にありがとう、みことちゃん!」「また来てね!」「元気でねー!」
収穫祭のような別れだった。
誰もが笑顔で、手を振って見送ってくれる。
心の奥に、あたたかい光がぽっと灯るような、そんな時間だった。
そして──
みことはひとり、ゆっくりと次の土地へ向かって歩き出す。
草の音、風の音、鳥の声。
やがて、そっと耳元に響く優しい声。
《また一歩、進んだのね。》
「うん、女神様」
歩きながら、みことは空を見上げるように話しかけた。
「ねえ、女神様。私ね……ちょっと考えてたの。
加護を受けたのって、私だけじゃないって前に言ってたよね?」
《ええ。あなた以外にも、選ばれた者は存在するわ》
「どんな人たちなんだろう、って。……いろんな人がいるんだね。
ディルクさんも、そうだった。戦いの神の加護を受けてたけど、ちょっと怖かった」
《時には、加護を持つ者が道を踏み外すこともあるわ。
“神の名を借りた悪”が生まれるのは、どの時代にもあること。
信仰の歴史には、神が悪魔に変わったと語られるものもある》
「……神様なのに、悪いことをしちゃうんだね。
なんだかちょっと、さみしい話」
しばらく沈黙が流れる。
でも、みことはふと、にこっと笑って言った。
「でもね。私、ひとつだけちゃんとわかってることがあるよ」
《なにかしら?》
「私に加護をくれた女神様は──やさしい神様だってこと!」
ぱたん、と足元の草を軽く踏んで、みことは空に向かって笑顔を向けた。
風が、すこし照れたように吹いた。
《……ありがとう、みこと》
みことの歩みは止まらない。
世界には、まだまだ知らない場所がたくさんあって、
そのすべてに、笑顔が届くと信じている。
空にはやわらかな雲が流れ、陽は緩やかに昇り始めていた。
みことは村の門の前で、名残惜しそうに振り返る。
「本当にありがとう、みことちゃん!」「また来てね!」「元気でねー!」
収穫祭のような別れだった。
誰もが笑顔で、手を振って見送ってくれる。
心の奥に、あたたかい光がぽっと灯るような、そんな時間だった。
そして──
みことはひとり、ゆっくりと次の土地へ向かって歩き出す。
草の音、風の音、鳥の声。
やがて、そっと耳元に響く優しい声。
《また一歩、進んだのね。》
「うん、女神様」
歩きながら、みことは空を見上げるように話しかけた。
「ねえ、女神様。私ね……ちょっと考えてたの。
加護を受けたのって、私だけじゃないって前に言ってたよね?」
《ええ。あなた以外にも、選ばれた者は存在するわ》
「どんな人たちなんだろう、って。……いろんな人がいるんだね。
ディルクさんも、そうだった。戦いの神の加護を受けてたけど、ちょっと怖かった」
《時には、加護を持つ者が道を踏み外すこともあるわ。
“神の名を借りた悪”が生まれるのは、どの時代にもあること。
信仰の歴史には、神が悪魔に変わったと語られるものもある》
「……神様なのに、悪いことをしちゃうんだね。
なんだかちょっと、さみしい話」
しばらく沈黙が流れる。
でも、みことはふと、にこっと笑って言った。
「でもね。私、ひとつだけちゃんとわかってることがあるよ」
《なにかしら?》
「私に加護をくれた女神様は──やさしい神様だってこと!」
ぱたん、と足元の草を軽く踏んで、みことは空に向かって笑顔を向けた。
風が、すこし照れたように吹いた。
《……ありがとう、みこと》
みことの歩みは止まらない。
世界には、まだまだ知らない場所がたくさんあって、
そのすべてに、笑顔が届くと信じている。
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