色々物語

ドラマ②

次の日の放課後、文芸部の部室にはやわらかな夕日が差し込んでいた。
窓から入る光が、机の上のノートの文字を静かに照らしている。

「ねえ、心理テストしようよ！」
ゆうほがにこにこしながら言った。

「これ、わたしが前にやったやつで、けっこう当たってて面白かったんだ。みんなもやってみて！」

ノートには、こんな問いが書かれていた。


---

『次のうち、あなたがもっとも大切にしたいものを１つ選んでください』

1. 小さな鍵


2. 古びた日記帳


3. よくなじんだぬいぐるみ


4. 光るペンダント




---

「わたしは、“よくなじんだぬいぐるみ”を選んだんだ」
ゆうほはにこっと笑って言った。

「結果はね、過去の思い出や、安心できる場所を大切にしてるって。なんだか、納得したよ」

せいまとせんえも、少し考えてから声をそろえる。

「……古びた日記帳」

「わあ、同じだ！」
ゆうほが驚いたように声を上げる。

ノートをめくりながら、ゆうほが続けて説明を読む。

「“古びた日記帳”を選んだ人は、昔からのつながりや、心の秘密を大切にしているんだって。昔からそばにいる人が、あなたの支えになるらしいよ」

せいまは、その言葉を聞きながら心の中で思う。

（それって……もしかして）

ふと隣を見れば、せんえはぽかんとした顔で、少しだけ首をかしげていた。
どうやら、「誰のことだろう？」と、ぼんやり考えているようだった。

その無邪気な表情に、せいまは思わず小さく微笑んだ。

ゆうほは、そんなふたりを見て、ふふっと優しく笑う。

---

「ねえ、まだちょっと時間あるよね？　次はさ、しりとりしようよ～！」

「しりとり？　ただの？」
せいまが首をかしげる。

「ううん、文章しりとり！」
ゆうほは楽しげに声を弾ませる。

「前の人の文章の最後の文字から始まる言葉で、一文ずつつないでいくだけ。物語じゃなくても、思いついた言葉だけでもいいから、気軽に書けるよ！」

「おもしろそう～！」
せんえがぱっと顔を明るくして言い、
三人はまた、机の上のノートを囲むように集まった。