色々物語

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村の魔法使い

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「ところで……村の人は、みんな喜んでくれてる?」

せいまがたずねると、エルネは少し笑みを浮かべて答えた。

「まあ……最近はあまり来てくれないけどね。
でも、きっと元気になった証拠さ。僕が頑張ったおかげだよ」

せんえは優しく微笑みながら、そっとエルネに頭を下げた。

「あなたは、とってもいい魔法使いだと思います。出会えてよかった!」



村の広場に戻ったせんえとせいまは、何気なく村人たちに声をかけた。

「ねえ、丘の上の魔法使いさんって、すごく優しい人なんだよ!」

しかし、村人たちの表情は一変した。

「……あいつに会ったのか」
「やめたほうがいい。関わらないほうがいい」
「うちのおばあちゃん、あの“万能薬”でずっと苦しんでる。
痛みも熱も消えたけど、感覚もなくなって、ただ息をしているだけだ…」
「“寝なくても疲れがとれる薬”をもらったけど、飲んだら眠れなくなって…
うちの旦那はもう何日も眠れず、頭がおかしくなりそうだ」
「あいつ、悪気なんてないのが一番怖い。
“よかれと思って”やってるけど、こっちを壊していくんだよ…」

せんえは立ち尽くし、さっきまで信じていたものが静かに壊れていくのを感じた。

「……でも、あの人は優しかったよ…?」

せいまはそっとせんえの手を取り、優しく言った。

「きっとせんえのことも“助けてあげよう”って思うよ。
でも、それって本当に“助け”なのかな?」

丘の方から風が吹き抜け、甘くも冷たい香りが漂った。

せんえは小さくため息をつき、せいまの手を握り返した。

「エルネさんは村のことを思ってるんだよね。
でも、村の人たちはみんな苦しんでいる…」

せいまも眉を寄せて言った。

「うん…よかれと思ってるのに、逆に傷つけてしまうなんて辛いね」

「どうすればみんなが本当に幸せになれるんだろう…」

二人は静かな丘の風に耳を傾けながら、答えのない問いを心に抱えた。
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