算術の秘密

文字の大きさ
28 / 59

恩と絆のはじまり

しおりを挟む
まだ小学生の詩菜の家族は、突然の仕事の打ち切りで、生活が立ち行かなくなっていた。
家の中は静まり返り、母は不安げに台所でため息をつき、父も何も言えずに俯いている。

そんなとき、玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、さくのの父親――差単計算社の社長――が、微笑みながら立っていた。

「困っていると聞きました。少し力を貸しましょう」

社長の周囲には社員たちも数名おり、手際よく状況を把握して、家族の窮状を解決する手立てを示す。
仕事の紹介や必要な物資の手配、家計の補助など、すべて整えられた。

幼い詩菜はその光景に目を丸くする。
「え……どうして、こんなにたくさんの人が……?」

社長は優しく答えた。
「困っている人は助けるべきです。正しい行動は、周りを動かすのです」

「これで、少し安心できますね」
母が目に涙を浮かべながら微笑む。

父も少し肩の力を抜き、詩菜の肩に手を置いた。
「本当に助かった……ありがとう」

数日後、詩菜の父は紹介された仕事に就き、家計は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
帰宅した父は、満面の笑みで詩菜に話しかける。

「今日は会社で面白いことがあったよ。みんな親切で、働きやすい職場だってことがよくわかった」

幼い詩菜は興味津々で父の話を聞く。
「どんな会社なの?」

父は紙に印刷された小さな会社の紹介資料を見せながら言った。
「差単計算社っていうんだ。まだ小さい会社だけど、社員の雰囲気もいいし、これから大きくなっていく気がする」

詩菜は紙に目を落とし、写真の社員たちの笑顔を眺める。
「へえ……楽しそう……」

すると父はふと、少し驚いた表情で小声で付け加えた。
「そういえば、社長には娘がいるそうだよ。名前はさくのっていうらしい」

その名前を聞いた瞬間、詩菜の心がぴたりと止まった。
「さくの……?」

ふと思い出す。今通っている小学校に、同じ名前の子がいる――
「同じクラスに、さくのって子がいた!あの子かな……?」

父は穏やかに微笑み、詩菜の肩に手を置いた。
「そうだね、もし本当に同じ子なら、仲良くしてもらうといい。あの子の家族にはずいぶん助けてもらったからね」

お父さんは続けて言った。

「社長には本当にお世話になったからな……私は何があっても社長のために尽くそうと思ってる」

詩菜も笑顔で言う。

「うん、私も!助けてもらったんだからさくのちゃんのために頑張りたい!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

置き去りにされた聖女様

青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾 孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう 公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする 最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで…… それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...