算術の秘密

文字の大きさ
32 / 59

差単計算社の闇

しおりを挟む
フォーラムのメンバーたちは、資料と証拠動画を手に記者会見場に立った。壇上のまりは深く息を吸い、声を震わせながら話し始める。

「私たちは、差単計算社が社員をまるで洗脳するかのように管理している実態を調査しました。表向きは広告でアットホームな職場を演出していますが、実際には社員に過酷な労働を強い、努力や忠誠を『正義』と信じ込ませることで、感情までも搾取される日々を強いていました。」

「さらに、差単計算社は、環境を操る数学公式の特許を独占し、悪用してきました。最近では、1+1=2にまで特許申請を行っています。これは、私たちが学び、公式を自由に使う権利そのものを侵害する行為です。」

その瞬間、会場に映し出されたライブ映像に社長の顔が現れた。冷ややかな笑みを浮かべ、モニター越しに低く語る。

「皆さん、確かに特許申請を行ったのは事実です。しかし、社員の抑圧や特許の悪用といった話は、根拠のない陰謀論です。我々は教育や科学に害を与えておりません。」

さらに、社長に従う一部の社員もSNSや動画で反論を流す。

「1+1=2の特許? そんなことが悪用されるはずはありません。ネットで広まっている話はデマです。」
「社員の扱いが過酷? それは事実ではなく、陰謀論です。私たちは自由に働いています。」

会場は一瞬ざわめき、記者たちは戸惑い、視聴者のコメント欄には「本当なの?」「陰謀なの?」「どちらを信じれば…」と、賛否が入り乱れる。

壇上のまりは肩を震わせながらも、視線をまっすぐ前に向けた。
「信じてもらえなくても、証拠はここにあります。社員の実態も、特許の事実も隠せません。」

ひなたがそっと肩に手を置く。
「すぐには理解してもらえないかもしれない。でも、諦めたら、支配され続ける世界が続くだけ。」

理世も声を張った。
「正しいことは必ず伝わる。陰謀論だと言われても、証拠を示し続ける。それが未来を守る唯一の方法です。」

壇上の空気が一瞬、緊張で張り詰める。すると、会場の扉が静かに開き、一人の元社員がステージに上がった。顔は疲れ切り、目はどこか虚ろで、生気が感じられない。

「……私も、差単計算社で働いていました」と、声はかすれながらも力強く続く。「毎朝、社員は無言でビルに集まり、監視カメラと上司の目の下で、感情を押し殺して働かされました。笑うことも、休むことも罪だと信じ込まされ、努力と忠誠だけが正義とされました。」

元社員は深く息を吐き、視線を会場に向ける。「休憩時間も、同僚と本音で話すことは許されず、食堂の沈黙が私たちの心を押し潰しました。手は止まらず、目は死んでいく。そんな日々でした。」

元社員の声が会場に重く響いた。息を整えながら、彼はさらに語り始める。

「社長は、独占していた自然を操る数学公式を使い、災害を引き起こして人々を貧困に貶め、その後に救済という名目で介入していました。まさにマッチポンプです。社長の目には、災害も困窮も、ただ利益のための道具に過ぎなかった。会社は、何でも言うことを聞き、役に立つ“都合のいい人材”だけを集めることに全力を注いでいました。」

彼の目は一瞬、ステージの光に揺れた。「内部では情報統制が徹底され、相談をしても、『社長は全て正しい。命令は絶対だ。おかしいのは会社ではなく、君の方だ』と繰り返し言われました。毎日そう言われ続けるうちに、私は自分の思考を止め、何が正しいのかも分からなくなりました。」

一呼吸置き、元社員は微かに笑みを浮かべた。「でも……仕事を辞め、外の世界の人たちと関わるようになってから、気づいたんです。あの職場がおかしかったんだ、と。抑圧されていたのは、私たち社員自身ではなく、あのシステムそのものだったと。」

「真実は、隠せません。」まりが低く、しかし確かな声で言った。「社員たちの目が死んでいた日々も、公式の独占も、地域への搾取も、全て記録されています。そして、私たちはそれを暴露するためにここに立っています。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

置き去りにされた聖女様

青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾 孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう 公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする 最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで…… それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

処理中です...