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第Ⅳ話 『蠢く闇』
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とある場所の地下・・・
6つの影が一人を円のように座って囲んでいる。
中心にいるのはピエロのように化粧を施した燕尾服を着ている。
『ドーラよ。何故、あの男に接触した。』
と影のうちの一人が言う。
ピエロの男・・・ドーラ・ゾルデナははて、と首を傾げて
「そんなに気に入りませんでしたか?彼の能力はとても素晴らしい!ぜひ我々としてもあの力は手に入れたいところではなかったのでしょうか。」
『そんなことを聞いているのではない!奴に接触するのは決まりではもっと後の話ではなかったのか!それをむざむざと貴重な実験体まで壊されよって!』
ドンと椅子の肘おきを叩く音がした。
「おお、怖い怖い。私は私のできるまでのことしただけですよ。遅かれ早かれあの実験体は司教か対魔師のどちらかに見つかっていたことでしょう。」
『それを隠して守り切るのが貴様の役目だったではないか!』
「思った以上にアレの成長速度は速くて隠し切れなかったのですよ。もう少し成長していれば壊した瞬間に半径1キロメートルに毒ガスを吹き出すまでに成長していたでしょうがね。」
『そんなことは聞いておらんぞ!貴様、我々を憚ったのか!』
「憚ったなど人聞きの悪い・・・聞かれなかったので答えなかったまでですよ。」
『なんだと!?』
と喧嘩腰になる一人をもう一人が手をあげて制する。
『ドーラよ、アレの危険性についてはもう一度要点をまとめて提出せよ。
しかし、何故あの男と接触したかを私は答えがほしい。』
「・・・本来、対魔師とは相棒の司教がいてからこその真の力を発揮すると言っても過言ではありません。いえ、ネフィレス全土ではそれが『当たり前』であると信じられてきました。
故に、二人一組という制度がいまだに残っているのです。
ですが、彼はその常識をものともせずに一人でアレを始末してみせた。危険性があるのはそうですが、なによりあの力があれば危険指定Sを抑えつけることができるのではないかとそう思います。」
『たしかに。危険指定Sは何よりも我々の計画に邪魔な存在だ。それを抑えることができるのならば使えるのには越したことはない。・・・だが、具体的にはどうするのだ。奴を捕らえることができるのか?』
「いえいえ、まさか。捕らえられないのならばこちらの首輪をつけてしまえばいいだけです。
幸いにも奴らをおびき出すための餌ならば豊富にありますからねェ。」
『・・・では、それについてはお前に任せよう。しかし無暗に実験体を浪費するのだけはやめるように。消費するならば結果を出したまえ。』
「はい、かしこまりました。」
『それでは、これで定例会を終えることとする。ガルバディアに叡智の祝福あれ。』
『『『『『『『ガルバディアに叡智の祝福あれ』』』』』』
と掛け声とともに6つの影は消える。
後に残ったのはドーラだけだった。
「・・・まったく、消費せずには無茶をおっしゃることだな。しかし、それを成し遂げてこそ私の信用の株も上がるというものだ。さて、それではとっておきの実験用具を用意するのに取り掛かろうか。」
とクックックと笑いながら背後のカーテンを引き上げる。
そこにあったのは巨大な水槽の中に浮かび上がる『メガイアス』の心臓だった。
「まだ成長段階ではあるが、無垢なる皮を使わずともいずれはバンフェルドへ進化することができる可能性を秘めたメガイアス達よ。お前たちが持つ、その獰猛な遺伝子を私に見せてくれ!!」
そのころ、教会ではシルヴァが報告書に埋もれていたのをレヴィが救出したところであった。
「悪い、この前の一件からずーっとひっきりなしに書類が回ってきてな。」
「・・・よほどお前を現場の方に回したくないんだろう。あのジジイたちは。」
「だよなぁ・・・・。明らかに多忙にさせてやるっていう強い意志が感じられるところだ。」
と黙々と書類を整理する手は緩めずに会話を続けていく
「レフィアに探らせている方の調査はどんな感じなんだ?」
「流石にまだ結果は出ねぇよ。けど、だいたいはレヴィが言ったとおりに噂話でしか情報が出てこないみたいだな。よほど慎重に行動している奴等らしい。」
「この街には少なくともそういったゴシップ記事に鼻の利く記者が何人もいたはずだ。そいつらさえも何も掴んでいないということはそういうことなんだろう。」
「だろうな。・・・っと、レヴィそこにある書類とってくれ。」
「ん、これだな。」
「ああ、ありがと・・・。ん?」
「どうかしたか?」
「いや、ここ最近スラムの子供たちの姿が少ないと思ったら。夜な夜な奇妙な笛の音が聞こえるっていう報告が上がってる。」
「笛の音・・・・?そんな異音がするなら俺が気づかないはずないんだが。」
「証言者も子供みたいだからな。大人には聞こえないらしい。」
「・・・それもなんだか怪しいな。」
「ああ、とりあえずこの調査は新人の方に一度任せてみよう。ディトリッヒと相棒のソニアの手が空いていたはずだ。」
「わかった、二人に後で書類を届けるように手配しておこう。」
「よろしく頼む。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え?俺とソニアが任務を?」
と驚いたように声を上げるのはディトリッヒ・ヴァ―ゲン。教会に所属して半年の新人司祭だ。
茶色い髪の毛が短すぎて逆立っているのを必死で撫でつけて抑えている。
「ええ、さっきレヴィレス様から指令所をいただいたばかりだもの。
今度はちゃんと標的に見つからないようにできるんでしょうね?」
とため息をつくのは相棒のソニア・ゴーマイン。
肩まである赤毛の毛先が跳ねている褐色肌の女性だ。
「わ、わかってるよ。流石になんどもヘマしないって!」
「じゃあ、今度はちゃんと任務がこなせるようにしてよね。」
「お、おう・・・。」
と一抹の不安を覚えながらも新人の二人は街へ繰り出すのであった。
6つの影が一人を円のように座って囲んでいる。
中心にいるのはピエロのように化粧を施した燕尾服を着ている。
『ドーラよ。何故、あの男に接触した。』
と影のうちの一人が言う。
ピエロの男・・・ドーラ・ゾルデナははて、と首を傾げて
「そんなに気に入りませんでしたか?彼の能力はとても素晴らしい!ぜひ我々としてもあの力は手に入れたいところではなかったのでしょうか。」
『そんなことを聞いているのではない!奴に接触するのは決まりではもっと後の話ではなかったのか!それをむざむざと貴重な実験体まで壊されよって!』
ドンと椅子の肘おきを叩く音がした。
「おお、怖い怖い。私は私のできるまでのことしただけですよ。遅かれ早かれあの実験体は司教か対魔師のどちらかに見つかっていたことでしょう。」
『それを隠して守り切るのが貴様の役目だったではないか!』
「思った以上にアレの成長速度は速くて隠し切れなかったのですよ。もう少し成長していれば壊した瞬間に半径1キロメートルに毒ガスを吹き出すまでに成長していたでしょうがね。」
『そんなことは聞いておらんぞ!貴様、我々を憚ったのか!』
「憚ったなど人聞きの悪い・・・聞かれなかったので答えなかったまでですよ。」
『なんだと!?』
と喧嘩腰になる一人をもう一人が手をあげて制する。
『ドーラよ、アレの危険性についてはもう一度要点をまとめて提出せよ。
しかし、何故あの男と接触したかを私は答えがほしい。』
「・・・本来、対魔師とは相棒の司教がいてからこその真の力を発揮すると言っても過言ではありません。いえ、ネフィレス全土ではそれが『当たり前』であると信じられてきました。
故に、二人一組という制度がいまだに残っているのです。
ですが、彼はその常識をものともせずに一人でアレを始末してみせた。危険性があるのはそうですが、なによりあの力があれば危険指定Sを抑えつけることができるのではないかとそう思います。」
『たしかに。危険指定Sは何よりも我々の計画に邪魔な存在だ。それを抑えることができるのならば使えるのには越したことはない。・・・だが、具体的にはどうするのだ。奴を捕らえることができるのか?』
「いえいえ、まさか。捕らえられないのならばこちらの首輪をつけてしまえばいいだけです。
幸いにも奴らをおびき出すための餌ならば豊富にありますからねェ。」
『・・・では、それについてはお前に任せよう。しかし無暗に実験体を浪費するのだけはやめるように。消費するならば結果を出したまえ。』
「はい、かしこまりました。」
『それでは、これで定例会を終えることとする。ガルバディアに叡智の祝福あれ。』
『『『『『『『ガルバディアに叡智の祝福あれ』』』』』』
と掛け声とともに6つの影は消える。
後に残ったのはドーラだけだった。
「・・・まったく、消費せずには無茶をおっしゃることだな。しかし、それを成し遂げてこそ私の信用の株も上がるというものだ。さて、それではとっておきの実験用具を用意するのに取り掛かろうか。」
とクックックと笑いながら背後のカーテンを引き上げる。
そこにあったのは巨大な水槽の中に浮かび上がる『メガイアス』の心臓だった。
「まだ成長段階ではあるが、無垢なる皮を使わずともいずれはバンフェルドへ進化することができる可能性を秘めたメガイアス達よ。お前たちが持つ、その獰猛な遺伝子を私に見せてくれ!!」
そのころ、教会ではシルヴァが報告書に埋もれていたのをレヴィが救出したところであった。
「悪い、この前の一件からずーっとひっきりなしに書類が回ってきてな。」
「・・・よほどお前を現場の方に回したくないんだろう。あのジジイたちは。」
「だよなぁ・・・・。明らかに多忙にさせてやるっていう強い意志が感じられるところだ。」
と黙々と書類を整理する手は緩めずに会話を続けていく
「レフィアに探らせている方の調査はどんな感じなんだ?」
「流石にまだ結果は出ねぇよ。けど、だいたいはレヴィが言ったとおりに噂話でしか情報が出てこないみたいだな。よほど慎重に行動している奴等らしい。」
「この街には少なくともそういったゴシップ記事に鼻の利く記者が何人もいたはずだ。そいつらさえも何も掴んでいないということはそういうことなんだろう。」
「だろうな。・・・っと、レヴィそこにある書類とってくれ。」
「ん、これだな。」
「ああ、ありがと・・・。ん?」
「どうかしたか?」
「いや、ここ最近スラムの子供たちの姿が少ないと思ったら。夜な夜な奇妙な笛の音が聞こえるっていう報告が上がってる。」
「笛の音・・・・?そんな異音がするなら俺が気づかないはずないんだが。」
「証言者も子供みたいだからな。大人には聞こえないらしい。」
「・・・それもなんだか怪しいな。」
「ああ、とりあえずこの調査は新人の方に一度任せてみよう。ディトリッヒと相棒のソニアの手が空いていたはずだ。」
「わかった、二人に後で書類を届けるように手配しておこう。」
「よろしく頼む。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え?俺とソニアが任務を?」
と驚いたように声を上げるのはディトリッヒ・ヴァ―ゲン。教会に所属して半年の新人司祭だ。
茶色い髪の毛が短すぎて逆立っているのを必死で撫でつけて抑えている。
「ええ、さっきレヴィレス様から指令所をいただいたばかりだもの。
今度はちゃんと標的に見つからないようにできるんでしょうね?」
とため息をつくのは相棒のソニア・ゴーマイン。
肩まである赤毛の毛先が跳ねている褐色肌の女性だ。
「わ、わかってるよ。流石になんどもヘマしないって!」
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