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トラウマ
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患者の腹部にメスを走らせる。開いた皮膚の下に、グロテスクで繊細な内臓が見えた。
(大丈夫だ。落ち着いてやれば必ずやり遂げられる。)
私は切開した皮膚を固定し終えてから、自分が切除しなければ行けない腫瘍の位置を確認する。取り過ぎても、少なすぎてもだめだ。これは自分の体じゃない、他人の体なんだ。
(素早く、慎重に終わらせるんだ。)
私は自分の手が震えないことを確認してから、患部にそっとメスを入れる。腫瘍がもう少しで切り取れる。
(大丈夫、順調だ。)
私は早くなった自分の心臓を落ち着けようとする。
その時、突然地面が激しく揺れた。手元を見ると、メスの周りがどんどん赤く染まっている。私ははっと息をのむ。全身に悪寒が走る。血はゆっくりと増えて、患者の腹からあふれ出てきた。
(嘘だ。こんな...こんな...)
私は急いで止血しようとする。でも血は一向に止まらない。手術台、それから足下へと血が広がっていく。患者の心拍数の異常を知らせる警報がなっている。私はそれをどこか上の空で聞いていた。
(早く...早く血を止めないと。)
患者の顔に目をやる。まだ幼い。この子はこれから色んな所へ行って、色んな人と話して、その人生には様々なことが待っているはずだった。
(私は何てことを...)
その時突然患者は目を開き、私を見て言った。
「お前のせいだ」
私はバスの座席で飛び起きた。全身に嫌な汗をかいて、息が苦しい。
あの日以来いつも見る夢だった。事故は、外科医として働き始めて間もない頃起きた。それからしばらく、私は何もできなかった。世界がまるごと変わってしまったようだった。自分のせいであの子が死んだという事実が頭の中をぐるぐる回り続けていて、何も手に付かなかった。
「いつまでもこうしてても何にもならないよ。大丈夫、またやり直せる。」ずっと家から出てこない私を訪ねてきた彼女はそう言った。しかし私には職場に戻ることはできそうになかった。事故の時の光景を思い出すだけで顔から血の気が引いていき、意思に関係なく手の震えが止まらなくなった。ただ恐くて仕方が無かった。私が職場を辞めたあたりから、彼女はもう家まで来なくなり、連絡も取れなくなった。後から私に愛想を尽かして別の男と付き合い始めたのだと噂で聞いた。
一流の外科医になる夢を諦めた私は、つてで友人の会社に雇ってもらった。しかし私は、職場の仲間と上手く打ち解けられなかった。慣れない仕事も人一倍こなしたし、全員に親切に接していたが、避けられてる感じがした。全く経歴の違うのにつてで入った私は、あまり良く思われていないようだった。彼らと同じ仕事をこなすにも、より多くの時間がかかった。業務が終わらず、遅くまで残って仕事をしているときに、私は考えないようにしていても今の自分とあの頃を比べてしまうことがよくあった。何よりも、自分が誰からも必要とされていないという考えが、どこにいても呪いのように付いてきた。
私はもう一度メスを持てるようになろうと心理カウンセラーのところに通った。私を担当したカウンセラーは、どんな話も親身になって聞いてくれて、不思議と生きる気力が湧いてきた。
「あなたと話しているときだけ、気持ちが明るくなるんだ。いつもありがとう。」私は面談をしているとき言った。「お役に立てて光栄です。」彼女は微笑んで言った。「そうだ。あなたに見せたいものがあるんだ。」「何ですか?」私は鞄を探って紙切れを二枚取り出した。それは映画のチケットだった。「これ、前に見たいって言ってただろう?今度一緒に...」「ごめんなさい。いけません。」「どうして!」「私は、貴方の心のケアをしようと思って...」「今まであんなに支えになってくれてたじゃないか!あれは全部仕事だからついてた嘘だったのか?ずっと俺を騙し続けてきたのか?」「嘘だなんてそんな...分かってください。それとこれとは違うんです。」「でもあなたは...」「もうお引き取り願います。面談の時間は過ぎていますので、これ以上は追加料金を...」
(どうかしてる。こんなこと分かってたはずだ。)
帰り道、私は傘の裏側を見つめて考えた。自分で自分の唯一の居場所をなくしてしまったことに、強い自己嫌悪に襲われた。もういっそ死んでしまいたくなってきた。
家に帰ると、自分を会社に雇ってくれたあの友人から手紙が届いていた。
(なんだろうか。)
中を読んでみると、そこには自分が遠くへ左遷されることが、事務的な口調で書いてった。
(どうしてなんだ。私はこんなにも努力しているのに。)
私は大きなため息をついて、手紙をゴミ箱に放り込み、荷造りを始めた。
だから私はこのバスに乗っている。窓から見えるのは田舎の景色で、さっきから電波も通じていない。乗客も、私以外には親子が二人で乗っているだけだった。
(ここで誰にも気に掛けられず年取って死んでいくのかな。)
私は窓枠に肘を乗せて外を眺めながらそんなことを考えた。
その時、突然大きな音とともに強い衝撃を受けた。何が起こったのか一瞬分からなかったが、顔を上げてみると道路脇の木がフロントガラスを突き破っている。どうやら過労の運転手が事故を起こしたようだった。
「大丈夫!?」前から声がした。見ると、前の座席に座っていた子供の様子がおかしい。苦しそうにうずくまっている。心配する親の呼びかけにも反応する余裕すらないようだ。子供は座席から床に崩れ落ちてうずくまり、悲痛な声でうめいた。親は電話で救急車を呼ぼうとしたが、つながらずに途方に暮れていた。
(だめだ。ここじゃ携帯が通じないから救急車が呼べない。近くの病院へも二時間はかかるし...)
私がそう思っている間にも、子供は意識を失って動かなくなった。親はその子の肩を揺すりながら何度も何度も名前を呼んでいた。
私は衝動的に立ち上がって駆け寄った。「お医者さんなんですか?」そう聞かれて、私は少しためらってから答えた。「...はい。そうです。」子供の足は異常に腫れ上がっていた。今の事故で足を打ったのだろう、内出血を起こしてどんどん血がたまっているのだ。放っておくと足を失うだけでなく、命の危険がある。
(今、手術しないと取り返しのつかないことになる。)
それはしばらく現場を離れていた私の目にも明らかなほどだった。私は荷物の中に、いつまでも捨てられないでいる手術道具が入っていることを思い出した。もう必要なくなった今でも、どうしても捨てられずにいたのだった。「先生、お願いします!」病気の子供の親は涙目で訴えた。「この子を助けてください!」私は自分の手を見て、次に倒れて動かない子供を見てから、覚悟を決めた。「任せてください。」
私はメスを取った。途端に、過去の悍ましい記憶が一気に自分の中に流れ込んできた。手が震えだしそうになるのを渾身の力で押さえてメスを入れる。
(私が何もしなければこの子は死んでしまう。そんなこと気にしている時間は無いんだ。)
患者の親は固唾をのんで見守っている。一度動き出すと、腕は昔そうであったように手際よく行程を進めていく。これまでのブランクが嘘のようだ。患者の顔に、あの日死なせてしまった子供の顔が重なった。しかし私はもう恐れなかった。
(私は今必要とされている。私がどんなに価値のない人間であったとしても、今この瞬間、この子には私が必要なんだ。)
いつしか集中力は限界まで研ぎ澄まされて、世界は私とこの子だけになった。
(今度は絶対に死なせはしない。必ず助ける。)
メスは素早く、だが繊細に動き回った。もうそこに、トラウマに負けて逃げた男の姿はなかった。額の汗を拭うのも忘れて必死に治療した。
手術が終わったとき、ずっと張っていた気が緩んでどっと疲れが押し寄せてきた。時間はほとんどかかっていなかった。しかし自分には何日もかかったように感じた。「終わりました。でもこの子は入院しなければいけない。救急車を呼べるところまで運んでください。」「はい、すぐに!」私はそれだけ言うと、ぐったりと壁により掛かった。
(やってしまったことは取り消せないが、せめて償っていくことはできるんじゃないか。)窓の向こうの青空を見て思った。
(私は、生きていてもいいのかも知れない。)
(大丈夫だ。落ち着いてやれば必ずやり遂げられる。)
私は切開した皮膚を固定し終えてから、自分が切除しなければ行けない腫瘍の位置を確認する。取り過ぎても、少なすぎてもだめだ。これは自分の体じゃない、他人の体なんだ。
(素早く、慎重に終わらせるんだ。)
私は自分の手が震えないことを確認してから、患部にそっとメスを入れる。腫瘍がもう少しで切り取れる。
(大丈夫、順調だ。)
私は早くなった自分の心臓を落ち着けようとする。
その時、突然地面が激しく揺れた。手元を見ると、メスの周りがどんどん赤く染まっている。私ははっと息をのむ。全身に悪寒が走る。血はゆっくりと増えて、患者の腹からあふれ出てきた。
(嘘だ。こんな...こんな...)
私は急いで止血しようとする。でも血は一向に止まらない。手術台、それから足下へと血が広がっていく。患者の心拍数の異常を知らせる警報がなっている。私はそれをどこか上の空で聞いていた。
(早く...早く血を止めないと。)
患者の顔に目をやる。まだ幼い。この子はこれから色んな所へ行って、色んな人と話して、その人生には様々なことが待っているはずだった。
(私は何てことを...)
その時突然患者は目を開き、私を見て言った。
「お前のせいだ」
私はバスの座席で飛び起きた。全身に嫌な汗をかいて、息が苦しい。
あの日以来いつも見る夢だった。事故は、外科医として働き始めて間もない頃起きた。それからしばらく、私は何もできなかった。世界がまるごと変わってしまったようだった。自分のせいであの子が死んだという事実が頭の中をぐるぐる回り続けていて、何も手に付かなかった。
「いつまでもこうしてても何にもならないよ。大丈夫、またやり直せる。」ずっと家から出てこない私を訪ねてきた彼女はそう言った。しかし私には職場に戻ることはできそうになかった。事故の時の光景を思い出すだけで顔から血の気が引いていき、意思に関係なく手の震えが止まらなくなった。ただ恐くて仕方が無かった。私が職場を辞めたあたりから、彼女はもう家まで来なくなり、連絡も取れなくなった。後から私に愛想を尽かして別の男と付き合い始めたのだと噂で聞いた。
一流の外科医になる夢を諦めた私は、つてで友人の会社に雇ってもらった。しかし私は、職場の仲間と上手く打ち解けられなかった。慣れない仕事も人一倍こなしたし、全員に親切に接していたが、避けられてる感じがした。全く経歴の違うのにつてで入った私は、あまり良く思われていないようだった。彼らと同じ仕事をこなすにも、より多くの時間がかかった。業務が終わらず、遅くまで残って仕事をしているときに、私は考えないようにしていても今の自分とあの頃を比べてしまうことがよくあった。何よりも、自分が誰からも必要とされていないという考えが、どこにいても呪いのように付いてきた。
私はもう一度メスを持てるようになろうと心理カウンセラーのところに通った。私を担当したカウンセラーは、どんな話も親身になって聞いてくれて、不思議と生きる気力が湧いてきた。
「あなたと話しているときだけ、気持ちが明るくなるんだ。いつもありがとう。」私は面談をしているとき言った。「お役に立てて光栄です。」彼女は微笑んで言った。「そうだ。あなたに見せたいものがあるんだ。」「何ですか?」私は鞄を探って紙切れを二枚取り出した。それは映画のチケットだった。「これ、前に見たいって言ってただろう?今度一緒に...」「ごめんなさい。いけません。」「どうして!」「私は、貴方の心のケアをしようと思って...」「今まであんなに支えになってくれてたじゃないか!あれは全部仕事だからついてた嘘だったのか?ずっと俺を騙し続けてきたのか?」「嘘だなんてそんな...分かってください。それとこれとは違うんです。」「でもあなたは...」「もうお引き取り願います。面談の時間は過ぎていますので、これ以上は追加料金を...」
(どうかしてる。こんなこと分かってたはずだ。)
帰り道、私は傘の裏側を見つめて考えた。自分で自分の唯一の居場所をなくしてしまったことに、強い自己嫌悪に襲われた。もういっそ死んでしまいたくなってきた。
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(なんだろうか。)
中を読んでみると、そこには自分が遠くへ左遷されることが、事務的な口調で書いてった。
(どうしてなんだ。私はこんなにも努力しているのに。)
私は大きなため息をついて、手紙をゴミ箱に放り込み、荷造りを始めた。
だから私はこのバスに乗っている。窓から見えるのは田舎の景色で、さっきから電波も通じていない。乗客も、私以外には親子が二人で乗っているだけだった。
(ここで誰にも気に掛けられず年取って死んでいくのかな。)
私は窓枠に肘を乗せて外を眺めながらそんなことを考えた。
その時、突然大きな音とともに強い衝撃を受けた。何が起こったのか一瞬分からなかったが、顔を上げてみると道路脇の木がフロントガラスを突き破っている。どうやら過労の運転手が事故を起こしたようだった。
「大丈夫!?」前から声がした。見ると、前の座席に座っていた子供の様子がおかしい。苦しそうにうずくまっている。心配する親の呼びかけにも反応する余裕すらないようだ。子供は座席から床に崩れ落ちてうずくまり、悲痛な声でうめいた。親は電話で救急車を呼ぼうとしたが、つながらずに途方に暮れていた。
(だめだ。ここじゃ携帯が通じないから救急車が呼べない。近くの病院へも二時間はかかるし...)
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それはしばらく現場を離れていた私の目にも明らかなほどだった。私は荷物の中に、いつまでも捨てられないでいる手術道具が入っていることを思い出した。もう必要なくなった今でも、どうしても捨てられずにいたのだった。「先生、お願いします!」病気の子供の親は涙目で訴えた。「この子を助けてください!」私は自分の手を見て、次に倒れて動かない子供を見てから、覚悟を決めた。「任せてください。」
私はメスを取った。途端に、過去の悍ましい記憶が一気に自分の中に流れ込んできた。手が震えだしそうになるのを渾身の力で押さえてメスを入れる。
(私が何もしなければこの子は死んでしまう。そんなこと気にしている時間は無いんだ。)
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いつしか集中力は限界まで研ぎ澄まされて、世界は私とこの子だけになった。
(今度は絶対に死なせはしない。必ず助ける。)
メスは素早く、だが繊細に動き回った。もうそこに、トラウマに負けて逃げた男の姿はなかった。額の汗を拭うのも忘れて必死に治療した。
手術が終わったとき、ずっと張っていた気が緩んでどっと疲れが押し寄せてきた。時間はほとんどかかっていなかった。しかし自分には何日もかかったように感じた。「終わりました。でもこの子は入院しなければいけない。救急車を呼べるところまで運んでください。」「はい、すぐに!」私はそれだけ言うと、ぐったりと壁により掛かった。
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