わたしの婚姻

山岸ンル

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三、花は秘めて

セシリア嬢の秘密 第五話

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 『それ』の剛直が膣の奥深くまで侵入する。たどたどしかったピストンも慣れてきたのか、好き勝手に暴れまわるようになっていた。子宮が突き上げられるたび、セシリアの口から悲鳴のような喘ぎが漏れる。雌雄の結合部から垂れ流しになる粘液を潤滑剤にして、触手が少女の尻の穴に入り込んでいた。直腸内を往復し、そこも性器であるかのように扱った。
 ジャスティンは立ち上がりセシリアの両脚を持ち上げて大きく広げさせている。少女を見下ろす男の股間は猛り、ズボンの前を持ち上げていた。

「いい格好だセシリア。おぞましい生き物と性交を行うのが、愛らしい君だということに興奮するよ。尻の具合はどうだい? 二本目の触手が挿入されたようだが」

 絶頂を繰り返すセシリアに構うことなく、『それ』は自らの性欲をひたすらにぶつけ、ねじれた生殖器の先端がセシリアの子宮口を何度も打ち据えた。

「ひ、あっ、あっ、あ」

 息も絶え絶えに喘ぐセシリアの目尻から涙が流れる。
 不意にジャスティンがセシリアの足を下ろし、横たわる彼女の胸の上に跨った。素早くベルトを外し、下着の中から自分の猛ったものを取り出して、先をセシリアの桜色の口唇に押し付ける。

「ふふ、無理に咥えなくてもいい。君の唇に触れるだけで興奮するからね。でも、その小さな舌を使って私を喜ばせてくれたら、君の秘密を完全に守ることを誓おう」

 セシリアの脳裏にはなんの選択肢もない。こんな痴態を、化け物との性行為を誰かに気取られるわけにはいかない。ジャスティンは周到な男のようだ。彼に従えば、自分の秘密は永遠に秘密のまま――。
 下腹部を犯されながら震えるセシリアの控えめな舌が、先走りの滲むジャスティンのそれに触れた。喉奥から嬌声が漏れ出ることを止められもしないで、セシリアは必死でジャスティンの性器をねぶった。

「好きなときにイきなさい。そろそろ『彼』も限界が近いだろう」

 自分で自身を扱きながらジャスティンが言う。『限界』、とは。セシリアは働かない頭で思い馳せながら舌を伸ばす。その間何度も、痺れるような甘い悦びがセシリアの背骨を駆け上がる。『彼』と繋がった蜜壺の奥がうずいて仕方ない。溢れる粘液のぬるぬるとした感触越しに、『彼』がセシリアにねじ込む硬い生殖器の存在感が増していく……。

「っく、セシリア……ッ」

 ジャスティンが自分のペニスを扱う速度が増した。同時に、セシリアの身体をもう何度目か分からない電流が走る。

「あ、あぁああ……!」

 セシリアの意識が真っ白になり、それに伴って腰が、結合部が痙攣した。その瞬間に、『彼』が大量の粘液をセシリアの体内に放出して、その濁流が子宮口を押しつぶした。セシリアの身体が幾度も震える。
 セシリアの口元に、ジャスティンの放った精液がぶち撒かれた。
 少女はほとんど気を失っていたが、おぼろげな感覚の中でジャスティンが生ぬるいとろりとしたものを自分の口の中に流し込むのを感じた。『彼』がセシリアの中にのはやはり人間で言うところの精液に当たるもので、ジャスティンの言い分が正しければ、その液体はセシリアを孕ませる可能性があった。しかし、そのときのセシリアにはそんな事を考える余裕はなく、ただ快楽のもたらす歓喜の余韻に悶えるのみ。
 『彼』が萎え始めた接合器をセシリアの体内から抜き取ると、後を追うように人間のものによく似た白い液体が溢れ出た。とろとろと流れ、地面を湿らせる。



「さて、随分遅くなってしまった。髪も乱れ、上も下も子種を注ぎ込まれていやらしい匂いがしている……ですが、私に任せてもらえればうまく言い繕うことができる」
「……」

 セシリアは弱々しくジャスティンを睨んだが、彼は怯む様子もなく整った顔でわずかに嗤う。ジャスティンはセシリアの肩を抱き、耳元で囁いた。

「今日は上手に交尾ができましたね。何度も絶頂して気持ちよかったでしょう? 今後は私のものにも、尻の穴で奉仕してもらいましょう。だが然るべき時が来たら、ちゃんと君を妊娠させ、跡継ぎを作る。そのときに――」

 ジャスティンがゆっくりとセシリアの耳たぶを舐めた。忘れがたい快感が甦る。

「君が、『彼』の種で孕んでいなければ、の話だが」

 セシリアの手を取り、ジャスティンはゆったりと歩き出す。
 セシリアが彼と結婚するのはもう、避けられないことだろう。こんな、鬼畜のような仕業でセシリアの尊厳を蹂躙する男が、これからはセシリアをいいように操ることになる……吐き気がする事実、セシリアは手のひらに爪を立てる。だが……、ジャスティンはセシリアの秘密を守るという。ある種、理解のある夫。彼の言い方によれば、セシリアはこれからもこの『雫の家』でジャスティンと、得体のしれない触手生物に身体を差し出すことになるのだ。意識の底で、仄かに昏い悦びが鎌首をもたげる。そう、これからは少女のおぞましい禁忌ではなく、夫に強要されて仕方なく行う淫靡な儀式になる。
 ぞくり、と胎内がうずいた。
 これが――自分が望んでいたことだったのではないか。ジャスティンを追って歩を進めるセシリアはまだ汗ばんでいた。

 岩肌を照らすランプがなければ、足元が完全に見えないほど暗くなっている。ジャスティンはどのように言い訳をするのだろう……ぼんやり考えながら、木立の間を縫う。その葉の隙間から、皮肉にも輝かしい未来を祝福するかのように星々がきらめいた。波音が遠くに聞こえる。
 ジャスティンが足を止め、遥かに邸を望む牧草地を見渡した。

「やはりお父上の敷地は美しい。その感性について疑うところはありませんな」

 お世辞かどうかわからないが、ジャスティンは清々しい声色で言った。セシリアに向き直る。

「セシリア。忘れているかもしれないから、もう一度言っておこう」

 長い指が、セシリアの乱れた前髪を避けた。

「私は君を、愛している。抗いようのないほどにね」

 薄い口唇が押し付けられ、セシリアは口付けられていることを知った。隙間から舌が差し込まれ、セシリアのそれに触れる。だがジャスティンはそれ以上深く追求することなく、舌を引き抜いて離れ、口角を上げた。
 『愛している。抗いようのないほどに』……セシリアの心に、歪んだ喜悦が湧き上がる。

 彼は、わたしをきっと素敵な気持ちにさせる――言いようのない期待がセシリアの胸を満たす。
 その脚の間を、名残惜しむように子種が流れ伝った。


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