1 / 5
闇とワルツを01
しおりを挟むまるで子供のような体躯の少女が、ベッドの上で身体をゆすられている。荒い息遣いと喘ぎが絶え間なく部屋にこだまし、じっとりとした空気と汗の匂いが入り交じっていた。
「あっ、ぁあ、ひあぁ、はあああああ……っ!」
ひときわ大きな嬌声が上がり、少女の背骨がぐっと反った。びくびくと腰を震わせ、目尻からは涙が伝った。
艶やかな黒髪はシーツの上で絡まり、緑と青の中間のような不思議な色の瞳は宙を彷徨っている。いかにも膨らみの足りない乳房は、息も絶え絶えに上下していた。
組み敷くのは立派な体格の青年で、若いというにはやや年嵩のようだった。浅黒い肌に汗を流し、絶頂した少女の腰を掴んだまま性器で結合部分を弄んでいた。
少女が意識を取り戻すと、まだ達していなかった己の昂ぶりをまた小さな孔の中に突き入れた。
「あうううっ、ん、ぁ、ぁあっはあ、あ、あ」
抽送に合わせて、少女の口から力なく声が漏れる。
「だ、だめ、もう、もう……っ! お、ねが……、たす、たすけて」
涙声の懇願を聞いて、男はより一層強く少女を突いた。
「助ける? 何の冗談だ」
「ひっ、んぎ、んんんんっ、んぁああ!」
「お前は自分がその言葉を聞いた時、『助け』たのか?」
「んいっ……、ぁあ、ごめ、なさ、あああっ!」
少女の頭の両脇には、黒曜石に似た角が生えていた。しかし今はその片方が痛々しく割れている。
細い両手首には黒い革の腕輪が嵌められている。その表面には複雑な幾重もの呪術が施されていた。
男は少女の幼い乳房と陰核をそれぞれ両手で刺激し、あまりに体格の違う相手への責めを絶対に緩めない。
「みんな、お前に言ったよな? 『助けて』『お慈悲を』――ってよ」
「ひぎいっ、いやぁ、もう、あっ、あああああっ!」
電流が走ったように全身を痙攣させると、少女はがくりとベッドの上に横たわった。焦点の合わない目がどこかを見ていた。
男は少女の体内から自らをずるりと抜き取る。少女の体液にまみれたそれを何度か扱き、気を失った少女の首元に跨ると、先端を小さな口唇に含ませ、射精した。
少女は悪の化身として君臨していた。
魔族の中に時折現れる、極めて力の強い個体だった。しかしそれだけでは覇者とは成り得ない。少女を魔たらしめたのは、教育だった。周囲の悪魔は少女を御輿の上に乗せた。
特に悪辣な者達が少女を理想の帝王にすべく、悪を教えこんだ。魔の君主として、少女は申し分ない素質を持っていた。
この世に生まれ落ちてたった九年で、少女は人間たちから魔の暴君と呼ばれるようになった。
魔王フーラの誕生である。
フーラは美しかった。成長速度こそ人間のそれと同じだが、深い闇に包まれた独特の魅力があった。まだ幼い顔つきや肢体にすら、優美さと艶やかさを備えていた。
だからこそ、一層人々は恐れた。
天の御使いの如き容貌を持ちながら悪虐に耽る有り様に、一部の人間たちはむしろ恭順を示した。悪のカリスマ、と魔物たちは持て囃した。
魔王フーラとその軍隊は、瞬く間に人間たちのすみかを侵略した。すべての人間を支配下に置くことを目的に、人間や妖精たちの権利を侵していった。
フーラがいることにより統率のとれた魔物の群れは、人間のそれよりも数と力において優っていたのである。加えて魔物の繁殖周期は人間よりも短い場合が多く、戦線を拡大しても戦力を維持できるほどの増加率も魔物優位の一因だった。
とはいえ、それを甘んじて受け入れるばかりの人間たちではない。多くの戦士がフーラを倒すべく旅立っていった。魔王城にたどり着くものもいなかったではない。
しかし、皆敗れていった。
ある者は無残にも手足を失った状態で故郷の村に置き去りにされていた。
ある者は人間の最大の居処、デラキル国の王都ウィンカルの門の前に首だけが帰ってきた。
圧倒的な魔力と残虐な性質を持つフーラとその眷属たちの前に、何の異能も持たぬ人間など遊び相手でしかなかった。
飽きた人形を弄んで捨てるがごとく、魔物は人間たちを嘲笑い壊していった。
誰もが、昏い不安と恐怖の中にいた。絶望のあまり自ら命を絶つ者すらあった。魔物の慰みものになって虫けらのように殺されるよりは、尊厳を選んだのである。
そんな時、西の小さな村から勇者が旅立った、と噂が立った。魔王フーラに匹敵する力を持ち、神の加護を受けた予言の勇者が。
彼の名はルーダン。精霊の力と黒魔術の知識を併せ持つ異彩の天才だった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる