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――シコウキ試練編――
――第43章・反応攻撃――
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第三の柱――
「葉山レイ、で間違いないか?」
「はい! その通りです!」
「ふむ。……靴を履く気はあるか?」
「このままでいいです。ありがとうございます」
第三の柱の内部。月明かりに満ちた静かな結界の中で、ソレンとレイは向かい合って座っていた。周囲には湿地と湖が広がり、レイは白いドレス姿で裸足のままだ。
「チッ。本当に変わり者だな。だが、スキルは三つ解放済み、レベルも高い。――聞こう。お前はどのタイプの魔法士だ?」
レイは手を掲げ、月光の盾を展開した。
「ルナ! 月! ……まあ、好きに呼んでください!」
ソレンは立ち上がり、レイの周りを歩きながら観察する。
「タンク向きだ。……ただ、体格は細い。まだまだだな」
彼が盾を軽く叩くと、反発で弾き返された。
「能力は実に見事だ。だがカイタンシャには役割がある。――耐えられるか?」
レイも立ち上がり、胸を張る。
「何でも来いです! 防御の試練ですか?」
「いや。いやいやいや。そんな生易しい“試練”ではない」
ソレンが手を叩くと、少年二人と少女一人が奥から現れた。レイはきょとんとする。
「ん? 誰ですか?」
「お前の生徒だ。タンクの役割は、仲間を守り、盾になること。もちろん攻撃もできるが――火力は彼らに担わせる」
「……誰から守るんです?」
「彼らの“姉”からだ」
直後、地面が震えた。土の中から、セリカが姿を現す。レイと父へ、礼儀正しく一礼した。
「父上。ご命令を」
ソレンは一歩引く。
「この娘を限界まで追い込め。弟妹に怪我が出ても構わん。覚悟はしている」
そう言い残し、ソレンの姿は消えた。
同時に、UIが浮かぶ。
〈目標:子どもたちを守れ〉
〈目的1:盾を15分間、破られずに維持せよ〉
〈目的2:目標ゾーンへ3回到達せよ〉
〈目的3:反応攻撃を7回使用せよ〉
「反応攻撃? 新しいやつだ!」
遠くから、ソレンの声が響く。
『エレメントは互いに反応する。盾で守るだけではない。反応を“攻撃”に変えろ』
声が途切れると同時に、セリカが地面を踏み鳴らした。
「ジュゲン魔法士:地砕きの報復!」
土の杭がレイを囲む。レイは即座に盾を広げ、子どもたちを包んだ。
「ジュゲン魔法士:月光の護光!」
土杭が盾に触れた瞬間、淡い白へ変質し――爆ぜた。
〈反応発生:大地の月光〉
『一回目だ』ソレンの声が淡々と告げる。『武器にしろ。急げ。私の娘は有能だ』
セリカは足を引きずるように地を削り、土杭の波を放つ。すると少年の一人が前へ出て、指で銃の形を作った。
「ジュゲン滅者:狙撃爆弾!」
弾丸のようなベクトルが土杭を貫き、真っ二つに裂く。セリカが一歩退いた。
「今のすごい!」レイが目を輝かせる。「何それ!?」
少年は腰に手を当て、得意げに笑う。
「僕の必殺技! 指で撃つと、消えるんだ!」
「冗談じゃない! 名前は?」
「シズル! こっちは弟のセイラン、妹のサリナ!」
三人が手を振る。レイも笑って振り返した。
「よろしく! 私はレイ!」
サリナが返そうとした、その時――彼女の顔色が変わり、レイの背後を指す。
「レイさん、後ろ!」
セリカが低く構え、掌の上で土を集めて形を作り始めた。
「ジュゲン魔法士:忘却の石槍!」
巨大な石の槍が生まれ、盾に突き刺さる。盾にひびが走った。
(やばい! 割られる――!)
シズルが前へ出る。
「僕がやります、レイさん!」
指銃を放つが、セリカは槍を引き、横薙ぎで盾の側面を叩いた。衝撃で、盾の中の全員が転ぶ。
「がっ……!」
レイは跳ね起き、月の紋章を呼ぶ。
「ジュゲン魔法士:無人の夜の三日月!」
腕を薙ぐと月刃が走り、セリカの槍と衝突――触れた槍が月光へ変わり、爆ぜた。
〈反応発生〉
爆風で盾はさらに傷む。レイは汗を浮かべ、歯を食いしばった。
(修復しないと……!)
レイは両手を上げる。
「ジュゲン魔法士:月の明幻化!」
月光が盾を撫でるように走り、ひびが塞がっていく。だが、膝をついた途端、視界が少し暗くなった。
「レイさん、私が手伝います!」
サリナが背中に手を置いた。
「ジュゲン回生者:エネルギー転送!」
二人が淡く発光し、サリナの体から金色のエネルギーがレイへ流れ込む。サリナの髪が一本、灰色に変わった。
「はい! 生命エネルギーを少し使って、スタミナを渡しました!」
レイは立ち上がり、体の内側に力が満ちるのを感じる。
「うわ……! でも、それ危なくない?」
「少しずつなら平気です! 私、若くて丈夫だから反動も耐えられます!」
「分かった! じゃあ早く終わらせる! サリナに無理させない!」
レイが盾へ月光を流し込むのと同時、セリカの頭上に石槍が十数本、並んだ。
「……あ」
(それ、よくない……!)
セリカが一気に放つ。爆ぜる反応と衝撃で盾は大きく軋んだ。
セイランがドレスの裾を引く。
「レイさん……僕、何かしていい?」
レイは背を撫でた。
「もちろん! どうした?」
「僕のスキル……姉に使えます。でも……盾の一部を開けてほしい」
レイはセリカを見て頷く。
「いいよ! 気をつけて! 長くは開けられない!」
月光の筋で盾に小さな穴を作る。セイランが両手で地面を叩いた。
「ジュゲン闘士:刃付きミニガン!」
地面から刃のついたミニガンがせり上がり、セイランが掴んで乱射する。刃弾が姉へ飛ぶ。
「銃で金属!?」レイが驚く。「セイラン、すごいよ!」
「ほ、本当……?」
「本当! 私にも教えて!」
「む、無理だと思います……」
セリカは避けるが、一発が肩をかすめる。彼女は両腕を上げ、土塊を盛り上げた。
「ジュゲン魔法士:守護の石板!」
二枚の石板が刃弾を防ぎ、弾かれた刃がレイの盾へ当たり、またひびが広がる。
「しまっ……!」セイランが青ざめる。「ご、ごめんなさいレイさん! 姉がそのスキル持ってるの忘れて――!」
「大丈夫! そのまま時間稼いで! 私が盾を直す――!」
〈目標ゾーン:出現〉
遠くに灰色の円が現れ、矢印UIが示す。
〈60秒以内に目標ゾーンへ到達せよ〉
「よし、作戦変更! ゾーンへ行くよ!」
レイは月光の強い波で盾を修復しながら、円へ向けて前進する。だがセリカが前方に石槍を突き立て、進路を塞いだ。
『簡単に歩いて届くと思ったか?』ソレンの声が嘲る。『高レベルなら分かるだろう。ダンジョンは甘くない』
セリカの槍が盾を押し返し、全員が後退する。レイは盾の一部を開けた。
「みんな、ここで遊んでて! すぐ戻る!」
レイは盾の外へ跳び出し、月の紋章を呼ぶ。だがセリカは動かない。
「ん? 戦わないの?」
セリカがレイの頭上を指す。
〈警告:10秒以内に盾へ戻れ!〉
「えっ!?」
レイは慌てて盾へ飛び戻る。
「なんで!? 戦いたいのに!」
『できない』ソレンが冷たく言う。『タンクは盾だ。助けたいなら“内側”からだ』
レイはゾーンの残り時間を見る。
「30秒……! みんな、彼女を引きつけて! 安全地帯まで運ぶ!」
「はい、レイさん!」
サリナが兄たちの背に手を置く。
「姉ちゃん、無理すんなよ!」シズルが叫ぶ。
「レイさんの指示でしょ!」サリナが言い返す。「引きつけるって言った! 全力でやる!」
「……分かった。でもやりすぎるな!」
レイが盾の穴を開けると、二人の少年が連携で攻撃を投げる。セリカは巨大な石板を作り、押し潰そうとした。
「……申し訳ない、弟妹」
「今じゃない!」シズルが叫ぶ。「ジュゲン滅者:狙撃爆弾!」
石板の中心が爆ぜて穴が開き、全体が崩壊する。
「道が空きました、レイさん!」
レイはその隙に盾を滑らせ、全員をゾーンへ導いた。
〈残り時間:0:05〉
〈ゾーン:1/3〉
「やった!」レイが笑う。「あと二回!」
次の円は部屋の反対側に出現。同時に、セリカは石板と石槍を複合で展開した。
「複数スキル同時……!」セイランが怯える。「どうやって渡るんですか……」
セリカが石槍を投げる。レイは腕を伸ばし、月の紋章で弾き返した。
〈反応発生〉
槍は月光へ変わり、セリカが石板で防ぐ――だが爆ぜた月光が雨のように降り注ぎ、セリカを地面へ叩き落とした。
〈反応攻撃:1/7〉
レイは自分の手を見た。
「……私、今のやった?」
三人が口を開けて固まる。
「当たった!」シズルが歓声を上げる。
「私もやりたい!」サリナが食いつく。
セイランが倒れた姉を指す。
「気をつけて! また来ます!」
セリカは地面に踵を打ちつけ、土杭の嵐を放った。
「任せて!」シズルが前へ出る。
指銃で杭に穴を開け、勢いを削いだ。レイは盾をセリカの周りへ滑らせ、次のゾーンへ向かう。
「逃がさない」セリカが低く言う。
彼女は超大型の石槍を両手で形成する。レイは力を込め、月光のビームを放った。槍が月光へ変わり、セリカが一瞬止まる。
〈反応攻撃:2/7〉
(効く。でも……食らいついてくる!)
レイは急いで移動し、ゾーンへ滑り込んだ。
〈ゾーン:2/3〉
『悪くない』ソレンの声が響く。『だが終盤は、思うほど単純ではないぞ』
〈目標ゾーン:出現〉
レイは周囲を見回す。円がない。
「え? 部屋の中じゃない? 別の場所行く感じ?」
サリナがレイの袖を引いた。
「レイさん、ゾーン見つけた!」
「どこ!?」
サリナが指差した先――セリカの足元に、小さな発光円がある。
「……それは、問題だね」シズルが呟く。
「えっ、彼女!? 今まで避けてたのに!」
『子どもたち、覚悟を見せろ』ソレンが命じる。『ここで崩れるか?』
レイは拳を握った。
「いける! みんな! 一分! 彼女をスタンさせて、その間にゾーンへ入る!」
「無理よ」セリカが石板を作り、その上に乗る。
石槍の雨が降り、盾をかすめる。子どもたちが不安げにレイを見る。
「どうするの?」シズルが訊く。
〈残り時間:0:45〉
「信じて!」レイが言い切る。「私を信じてくれる?」
三人が頷いた。
「セイラン、あなたが一番火力ある。盾から出て左で引きつけて! シズルは右で私と一緒! サリナ、まだいける? もう一回、力を貸して!」
「いつでも!」
「でも……姉に当てられたら――」セイランが怯える。
レイは月光を纏う手を掲げる。
「当てさせない。助ける。――あなたの刃は金属でしょ?」
「……はい」
「じゃあ反応できる。金属魔法士だっているくらいなんだから!」
「……分かった。やります!」
レイが盾に穴を開け、セイランが転がり出る。
「ご、ごめん姉ちゃん!」
レイたちは反対側から回り込む。セイランが射撃すると、セリカは石槍で弾く。そこへシズルが指銃を向けた。
「ボン、バン!」
石板が崩れ、セイランの射撃が通る。
レイが狙いを定める。
「ジュゲン魔法士:月の明幻化!」
レイのビームがセイランの刃弾の軌道へ走り、月光が金属表面で反射し始めた。
〈反応発生:月の反射〉
〈反応攻撃:3/7〉
反射光がセリカの肩を焼く。セリカが眉を動かした。
「熱い……冷たい……どうして……」
その隙にサリナがシズルの背へ手を置く。
「下の石板を狙って!」
「バン!」
石板が割れ、セリカが体勢を崩す。彼女は防御の石槍を増やすが――レイが再びセイランへビームを投げた。
「撃って、セイラン!」
刃弾がビームを掠め、壁で跳ね、石槍群へ突き刺さり、次々に月光反応で爆ぜる。
〈反応攻撃:4/7〉
〈反応攻撃:5/7〉
〈反応攻撃:6/7〉
(あと一発。スタンまで押し込む……!)
レイは叫ぶ。
「セイラン、連射できる!? 今から“でかいの”送る!」
「……はいっ!」
シズルが石槍を潰し続ける中、レイが腕を振り抜いた。
「ジュゲン魔法士:無人の夜の三日月!」
巨大な月の紋章がセイランの前へ飛ぶ。セイランは狙いを定め、刃弾の雨を叩き込んだ。
「う、受けて……姉ちゃん!」
刃弾が月紋章へ当たった瞬間、紋章が反射面となって月光の衝撃波を解放した。空間全体が震え、セリカも、その場の空気も、止まる。
〈反応攻撃:達成〉
レイは盾を修復しながら、倒れたセリカの方へ滑らせる。
〈残り時間:0:04〉
サリナがレイの脚に触れ、最後の力を流し込む。髪がさらに灰色へ変わった。
「……行って、レイさん……!」
盾は前へ進み、時間切れ寸前で――ゾーンへ入った。
〈ゾーン:達成〉
〈盾維持:達成〉
レイは仰向けに倒れ、笑った。
「やった……オマリロ先生、きっと褒めてくれる……!」
頭を預けた、その耳元に――微かな囁きが落ちる。
〈よくやった……レイスさん〉
―――
「葉山レイ、で間違いないか?」
「はい! その通りです!」
「ふむ。……靴を履く気はあるか?」
「このままでいいです。ありがとうございます」
第三の柱の内部。月明かりに満ちた静かな結界の中で、ソレンとレイは向かい合って座っていた。周囲には湿地と湖が広がり、レイは白いドレス姿で裸足のままだ。
「チッ。本当に変わり者だな。だが、スキルは三つ解放済み、レベルも高い。――聞こう。お前はどのタイプの魔法士だ?」
レイは手を掲げ、月光の盾を展開した。
「ルナ! 月! ……まあ、好きに呼んでください!」
ソレンは立ち上がり、レイの周りを歩きながら観察する。
「タンク向きだ。……ただ、体格は細い。まだまだだな」
彼が盾を軽く叩くと、反発で弾き返された。
「能力は実に見事だ。だがカイタンシャには役割がある。――耐えられるか?」
レイも立ち上がり、胸を張る。
「何でも来いです! 防御の試練ですか?」
「いや。いやいやいや。そんな生易しい“試練”ではない」
ソレンが手を叩くと、少年二人と少女一人が奥から現れた。レイはきょとんとする。
「ん? 誰ですか?」
「お前の生徒だ。タンクの役割は、仲間を守り、盾になること。もちろん攻撃もできるが――火力は彼らに担わせる」
「……誰から守るんです?」
「彼らの“姉”からだ」
直後、地面が震えた。土の中から、セリカが姿を現す。レイと父へ、礼儀正しく一礼した。
「父上。ご命令を」
ソレンは一歩引く。
「この娘を限界まで追い込め。弟妹に怪我が出ても構わん。覚悟はしている」
そう言い残し、ソレンの姿は消えた。
同時に、UIが浮かぶ。
〈目標:子どもたちを守れ〉
〈目的1:盾を15分間、破られずに維持せよ〉
〈目的2:目標ゾーンへ3回到達せよ〉
〈目的3:反応攻撃を7回使用せよ〉
「反応攻撃? 新しいやつだ!」
遠くから、ソレンの声が響く。
『エレメントは互いに反応する。盾で守るだけではない。反応を“攻撃”に変えろ』
声が途切れると同時に、セリカが地面を踏み鳴らした。
「ジュゲン魔法士:地砕きの報復!」
土の杭がレイを囲む。レイは即座に盾を広げ、子どもたちを包んだ。
「ジュゲン魔法士:月光の護光!」
土杭が盾に触れた瞬間、淡い白へ変質し――爆ぜた。
〈反応発生:大地の月光〉
『一回目だ』ソレンの声が淡々と告げる。『武器にしろ。急げ。私の娘は有能だ』
セリカは足を引きずるように地を削り、土杭の波を放つ。すると少年の一人が前へ出て、指で銃の形を作った。
「ジュゲン滅者:狙撃爆弾!」
弾丸のようなベクトルが土杭を貫き、真っ二つに裂く。セリカが一歩退いた。
「今のすごい!」レイが目を輝かせる。「何それ!?」
少年は腰に手を当て、得意げに笑う。
「僕の必殺技! 指で撃つと、消えるんだ!」
「冗談じゃない! 名前は?」
「シズル! こっちは弟のセイラン、妹のサリナ!」
三人が手を振る。レイも笑って振り返した。
「よろしく! 私はレイ!」
サリナが返そうとした、その時――彼女の顔色が変わり、レイの背後を指す。
「レイさん、後ろ!」
セリカが低く構え、掌の上で土を集めて形を作り始めた。
「ジュゲン魔法士:忘却の石槍!」
巨大な石の槍が生まれ、盾に突き刺さる。盾にひびが走った。
(やばい! 割られる――!)
シズルが前へ出る。
「僕がやります、レイさん!」
指銃を放つが、セリカは槍を引き、横薙ぎで盾の側面を叩いた。衝撃で、盾の中の全員が転ぶ。
「がっ……!」
レイは跳ね起き、月の紋章を呼ぶ。
「ジュゲン魔法士:無人の夜の三日月!」
腕を薙ぐと月刃が走り、セリカの槍と衝突――触れた槍が月光へ変わり、爆ぜた。
〈反応発生〉
爆風で盾はさらに傷む。レイは汗を浮かべ、歯を食いしばった。
(修復しないと……!)
レイは両手を上げる。
「ジュゲン魔法士:月の明幻化!」
月光が盾を撫でるように走り、ひびが塞がっていく。だが、膝をついた途端、視界が少し暗くなった。
「レイさん、私が手伝います!」
サリナが背中に手を置いた。
「ジュゲン回生者:エネルギー転送!」
二人が淡く発光し、サリナの体から金色のエネルギーがレイへ流れ込む。サリナの髪が一本、灰色に変わった。
「はい! 生命エネルギーを少し使って、スタミナを渡しました!」
レイは立ち上がり、体の内側に力が満ちるのを感じる。
「うわ……! でも、それ危なくない?」
「少しずつなら平気です! 私、若くて丈夫だから反動も耐えられます!」
「分かった! じゃあ早く終わらせる! サリナに無理させない!」
レイが盾へ月光を流し込むのと同時、セリカの頭上に石槍が十数本、並んだ。
「……あ」
(それ、よくない……!)
セリカが一気に放つ。爆ぜる反応と衝撃で盾は大きく軋んだ。
セイランがドレスの裾を引く。
「レイさん……僕、何かしていい?」
レイは背を撫でた。
「もちろん! どうした?」
「僕のスキル……姉に使えます。でも……盾の一部を開けてほしい」
レイはセリカを見て頷く。
「いいよ! 気をつけて! 長くは開けられない!」
月光の筋で盾に小さな穴を作る。セイランが両手で地面を叩いた。
「ジュゲン闘士:刃付きミニガン!」
地面から刃のついたミニガンがせり上がり、セイランが掴んで乱射する。刃弾が姉へ飛ぶ。
「銃で金属!?」レイが驚く。「セイラン、すごいよ!」
「ほ、本当……?」
「本当! 私にも教えて!」
「む、無理だと思います……」
セリカは避けるが、一発が肩をかすめる。彼女は両腕を上げ、土塊を盛り上げた。
「ジュゲン魔法士:守護の石板!」
二枚の石板が刃弾を防ぎ、弾かれた刃がレイの盾へ当たり、またひびが広がる。
「しまっ……!」セイランが青ざめる。「ご、ごめんなさいレイさん! 姉がそのスキル持ってるの忘れて――!」
「大丈夫! そのまま時間稼いで! 私が盾を直す――!」
〈目標ゾーン:出現〉
遠くに灰色の円が現れ、矢印UIが示す。
〈60秒以内に目標ゾーンへ到達せよ〉
「よし、作戦変更! ゾーンへ行くよ!」
レイは月光の強い波で盾を修復しながら、円へ向けて前進する。だがセリカが前方に石槍を突き立て、進路を塞いだ。
『簡単に歩いて届くと思ったか?』ソレンの声が嘲る。『高レベルなら分かるだろう。ダンジョンは甘くない』
セリカの槍が盾を押し返し、全員が後退する。レイは盾の一部を開けた。
「みんな、ここで遊んでて! すぐ戻る!」
レイは盾の外へ跳び出し、月の紋章を呼ぶ。だがセリカは動かない。
「ん? 戦わないの?」
セリカがレイの頭上を指す。
〈警告:10秒以内に盾へ戻れ!〉
「えっ!?」
レイは慌てて盾へ飛び戻る。
「なんで!? 戦いたいのに!」
『できない』ソレンが冷たく言う。『タンクは盾だ。助けたいなら“内側”からだ』
レイはゾーンの残り時間を見る。
「30秒……! みんな、彼女を引きつけて! 安全地帯まで運ぶ!」
「はい、レイさん!」
サリナが兄たちの背に手を置く。
「姉ちゃん、無理すんなよ!」シズルが叫ぶ。
「レイさんの指示でしょ!」サリナが言い返す。「引きつけるって言った! 全力でやる!」
「……分かった。でもやりすぎるな!」
レイが盾の穴を開けると、二人の少年が連携で攻撃を投げる。セリカは巨大な石板を作り、押し潰そうとした。
「……申し訳ない、弟妹」
「今じゃない!」シズルが叫ぶ。「ジュゲン滅者:狙撃爆弾!」
石板の中心が爆ぜて穴が開き、全体が崩壊する。
「道が空きました、レイさん!」
レイはその隙に盾を滑らせ、全員をゾーンへ導いた。
〈残り時間:0:05〉
〈ゾーン:1/3〉
「やった!」レイが笑う。「あと二回!」
次の円は部屋の反対側に出現。同時に、セリカは石板と石槍を複合で展開した。
「複数スキル同時……!」セイランが怯える。「どうやって渡るんですか……」
セリカが石槍を投げる。レイは腕を伸ばし、月の紋章で弾き返した。
〈反応発生〉
槍は月光へ変わり、セリカが石板で防ぐ――だが爆ぜた月光が雨のように降り注ぎ、セリカを地面へ叩き落とした。
〈反応攻撃:1/7〉
レイは自分の手を見た。
「……私、今のやった?」
三人が口を開けて固まる。
「当たった!」シズルが歓声を上げる。
「私もやりたい!」サリナが食いつく。
セイランが倒れた姉を指す。
「気をつけて! また来ます!」
セリカは地面に踵を打ちつけ、土杭の嵐を放った。
「任せて!」シズルが前へ出る。
指銃で杭に穴を開け、勢いを削いだ。レイは盾をセリカの周りへ滑らせ、次のゾーンへ向かう。
「逃がさない」セリカが低く言う。
彼女は超大型の石槍を両手で形成する。レイは力を込め、月光のビームを放った。槍が月光へ変わり、セリカが一瞬止まる。
〈反応攻撃:2/7〉
(効く。でも……食らいついてくる!)
レイは急いで移動し、ゾーンへ滑り込んだ。
〈ゾーン:2/3〉
『悪くない』ソレンの声が響く。『だが終盤は、思うほど単純ではないぞ』
〈目標ゾーン:出現〉
レイは周囲を見回す。円がない。
「え? 部屋の中じゃない? 別の場所行く感じ?」
サリナがレイの袖を引いた。
「レイさん、ゾーン見つけた!」
「どこ!?」
サリナが指差した先――セリカの足元に、小さな発光円がある。
「……それは、問題だね」シズルが呟く。
「えっ、彼女!? 今まで避けてたのに!」
『子どもたち、覚悟を見せろ』ソレンが命じる。『ここで崩れるか?』
レイは拳を握った。
「いける! みんな! 一分! 彼女をスタンさせて、その間にゾーンへ入る!」
「無理よ」セリカが石板を作り、その上に乗る。
石槍の雨が降り、盾をかすめる。子どもたちが不安げにレイを見る。
「どうするの?」シズルが訊く。
〈残り時間:0:45〉
「信じて!」レイが言い切る。「私を信じてくれる?」
三人が頷いた。
「セイラン、あなたが一番火力ある。盾から出て左で引きつけて! シズルは右で私と一緒! サリナ、まだいける? もう一回、力を貸して!」
「いつでも!」
「でも……姉に当てられたら――」セイランが怯える。
レイは月光を纏う手を掲げる。
「当てさせない。助ける。――あなたの刃は金属でしょ?」
「……はい」
「じゃあ反応できる。金属魔法士だっているくらいなんだから!」
「……分かった。やります!」
レイが盾に穴を開け、セイランが転がり出る。
「ご、ごめん姉ちゃん!」
レイたちは反対側から回り込む。セイランが射撃すると、セリカは石槍で弾く。そこへシズルが指銃を向けた。
「ボン、バン!」
石板が崩れ、セイランの射撃が通る。
レイが狙いを定める。
「ジュゲン魔法士:月の明幻化!」
レイのビームがセイランの刃弾の軌道へ走り、月光が金属表面で反射し始めた。
〈反応発生:月の反射〉
〈反応攻撃:3/7〉
反射光がセリカの肩を焼く。セリカが眉を動かした。
「熱い……冷たい……どうして……」
その隙にサリナがシズルの背へ手を置く。
「下の石板を狙って!」
「バン!」
石板が割れ、セリカが体勢を崩す。彼女は防御の石槍を増やすが――レイが再びセイランへビームを投げた。
「撃って、セイラン!」
刃弾がビームを掠め、壁で跳ね、石槍群へ突き刺さり、次々に月光反応で爆ぜる。
〈反応攻撃:4/7〉
〈反応攻撃:5/7〉
〈反応攻撃:6/7〉
(あと一発。スタンまで押し込む……!)
レイは叫ぶ。
「セイラン、連射できる!? 今から“でかいの”送る!」
「……はいっ!」
シズルが石槍を潰し続ける中、レイが腕を振り抜いた。
「ジュゲン魔法士:無人の夜の三日月!」
巨大な月の紋章がセイランの前へ飛ぶ。セイランは狙いを定め、刃弾の雨を叩き込んだ。
「う、受けて……姉ちゃん!」
刃弾が月紋章へ当たった瞬間、紋章が反射面となって月光の衝撃波を解放した。空間全体が震え、セリカも、その場の空気も、止まる。
〈反応攻撃:達成〉
レイは盾を修復しながら、倒れたセリカの方へ滑らせる。
〈残り時間:0:04〉
サリナがレイの脚に触れ、最後の力を流し込む。髪がさらに灰色へ変わった。
「……行って、レイさん……!」
盾は前へ進み、時間切れ寸前で――ゾーンへ入った。
〈ゾーン:達成〉
〈盾維持:達成〉
レイは仰向けに倒れ、笑った。
「やった……オマリロ先生、きっと褒めてくれる……!」
頭を預けた、その耳元に――微かな囁きが落ちる。
〈よくやった……レイスさん〉
―――
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