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2話 ゲンジツ
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洞窟に差し込む太陽の光で目が覚める。時計なんてものはないので正確な時間はわからないが、昨日より肌寒いし恐らく朝だろう。
「いやぁ……こんなに早く起きたのは2年ぶり位か? まさかこんな事で俺の昼夜逆転生活が矯正されることになるとは……」
とりあえず朝食をとって準備を整えた俺は周囲の探索と家への帰宅方法を探るため洞窟を出た。
「太陽まぶしい……。灰になりそう……。これは元ニートには厳しい過酷な環境だな。でも動かないといずれ死ぬからな。いくか」
あいつがこの場所を島と言っていたのでとりあえず島の端っこを目指してまっすぐに歩いてみることにした。歩くこと1時間弱。あわよくば島から脱出できるなどと考えていた俺を絶望させる景色がそこにはあった。
「断崖絶壁じゃねえか……」
落ちようものなら絶対に死ぬ高さ。下を見てみると島に打ち付ける高波が島の表面の岩を削っている様子が見える。
「これは無理だ……。いったん帰ろう」
踵を返そうと森のほうに体を向ける。するとそこには、1人の少年が立っていた。
同い年ぐらいだろうか。160センチ後半くらいの身長に細い体。ぼさぼさの長い髪に眼鏡をかけ黒いジャージを着ている。恐らく『陰キャ』と呼ばれる部類に属するその少年は怯えているのか足をがたがた震わせて、こちらにナイフを向けている。俺はとっさにポケットに突っ込んであった銃を取り出した構えた。
「動くな!」
「ひぇ……じゅ、銃! ご、ごめんなさい。どうか命だけは……」
その言葉に俺は返答をせず無言を貫く。すると相手はやけくそになったのか、叫びながら
こちらに向かって突っ込んできた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
距離が開いているので交わすことは容易だが、俺には人を殺す勇気なんてないため銃は打てない。少年はこちらに近づき適当にナイフを振ってきている。当たれば死という緊張感の中俺は大げさな動きでナイフをよけていく。だが素人にナイフをさばききる技術などあるはずも無く左腕を切られてしまう。切断されたわけではないがそこそこ深い傷らしく服に血が滲み始めている。
「痛ってえな!」
俺はとっさに相手の顔面を殴る。少年の軽い体は特に鍛えていない俺のパンチでも2メートルほど飛んだ。その衝撃でナイフは手から離れ俺の足元に落ちている。俺はそれを拾いじりじりと距離を詰めていく。少年も命の危機を感じたのか後ずさりしていく。どんどんと近づいていきナイフで攻撃ができる距離になり振り上げたとき、少年は全力で後ろに逃げようとして、崖から落下してしまった。俺はそれをただ茫然と見ることしかできなかった。
「これは……俺がやった、のか? ハハ……。ここで生き残るにはこういうことにも慣れていかないといけないんだよな……」
精神的にも肉体的にも疲れた俺は、出血している右手を止血し、洞窟に戻った。
洞窟に帰りしばらくすると雨が降り出した。俺が寝る準備をしていると入口の方から明日とが聞こえてきた。
「誰だ!」
俺はとっさに叫んだが足音は止まらない。銃を取り出し構える。すると声が聞こえた。
「まって! 私は雨風を凌げる場所が欲しかっただけなの!」
両手を上げてこちらに女性が現れた。
「あれ……? 七瀬(ななせ)さん?」
「え? 流川くん?」
彼女は七瀬咲(ななせさき)俺の中学の頃の同級生だ。席が隣で結構話していたため数年たった今でも顔と名前を憶えていた。
「ひさしぶり、だね。でも、なんでこんなところに?」
「ちょっと変な男の人に連れ去られてな。お前こそどうして」
「……私も誘拐されちゃってね。それにしてもこのリアルバトルロワイアルっていう奴すごく残酷なルールだよね……」
「ルールを知ってるのか?」
「え?最初に説明されたでしょ? イヤホン越しに変な人から」
「いや。俺はそんな説明なんてされてない。詳しく教えてくれないか?」
「わかった。このゲームの参加者は全部で8人。最初にリュックに入ってた武器や島の所々に落ちている武器を使って最後の1人になるまで殺し合いをする。っていうのが私が聞いた説明かな」
「なるほど。ここに来るまでに死んでる奴とかは見なかったか?」
「1人見たよ。首から上がなくなってた……」
死者は俺が確認できているだけでも3人でここに2人。そして最初の女の人を殺したやつ1人。確実にゲームは終わりに近づいてきている。
「結構残酷な殺され方してるな……。まあとりあえず今日はここで休んでいくといい」
「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうね」
次の日の朝、俺は七瀬さんと別れた。その日は腕の痛みからか何もやる気が起きなく洞窟の中で1日を過ごした。
「食料もあと半分か……」
朝、俺はそんなことをぼやきながら栄養を摂取していた。
「腕の痛みも治まってきたし次はこの前言った方向とは反対側に行ってみますか」
「いやぁ……こんなに早く起きたのは2年ぶり位か? まさかこんな事で俺の昼夜逆転生活が矯正されることになるとは……」
とりあえず朝食をとって準備を整えた俺は周囲の探索と家への帰宅方法を探るため洞窟を出た。
「太陽まぶしい……。灰になりそう……。これは元ニートには厳しい過酷な環境だな。でも動かないといずれ死ぬからな。いくか」
あいつがこの場所を島と言っていたのでとりあえず島の端っこを目指してまっすぐに歩いてみることにした。歩くこと1時間弱。あわよくば島から脱出できるなどと考えていた俺を絶望させる景色がそこにはあった。
「断崖絶壁じゃねえか……」
落ちようものなら絶対に死ぬ高さ。下を見てみると島に打ち付ける高波が島の表面の岩を削っている様子が見える。
「これは無理だ……。いったん帰ろう」
踵を返そうと森のほうに体を向ける。するとそこには、1人の少年が立っていた。
同い年ぐらいだろうか。160センチ後半くらいの身長に細い体。ぼさぼさの長い髪に眼鏡をかけ黒いジャージを着ている。恐らく『陰キャ』と呼ばれる部類に属するその少年は怯えているのか足をがたがた震わせて、こちらにナイフを向けている。俺はとっさにポケットに突っ込んであった銃を取り出した構えた。
「動くな!」
「ひぇ……じゅ、銃! ご、ごめんなさい。どうか命だけは……」
その言葉に俺は返答をせず無言を貫く。すると相手はやけくそになったのか、叫びながら
こちらに向かって突っ込んできた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
距離が開いているので交わすことは容易だが、俺には人を殺す勇気なんてないため銃は打てない。少年はこちらに近づき適当にナイフを振ってきている。当たれば死という緊張感の中俺は大げさな動きでナイフをよけていく。だが素人にナイフをさばききる技術などあるはずも無く左腕を切られてしまう。切断されたわけではないがそこそこ深い傷らしく服に血が滲み始めている。
「痛ってえな!」
俺はとっさに相手の顔面を殴る。少年の軽い体は特に鍛えていない俺のパンチでも2メートルほど飛んだ。その衝撃でナイフは手から離れ俺の足元に落ちている。俺はそれを拾いじりじりと距離を詰めていく。少年も命の危機を感じたのか後ずさりしていく。どんどんと近づいていきナイフで攻撃ができる距離になり振り上げたとき、少年は全力で後ろに逃げようとして、崖から落下してしまった。俺はそれをただ茫然と見ることしかできなかった。
「これは……俺がやった、のか? ハハ……。ここで生き残るにはこういうことにも慣れていかないといけないんだよな……」
精神的にも肉体的にも疲れた俺は、出血している右手を止血し、洞窟に戻った。
洞窟に帰りしばらくすると雨が降り出した。俺が寝る準備をしていると入口の方から明日とが聞こえてきた。
「誰だ!」
俺はとっさに叫んだが足音は止まらない。銃を取り出し構える。すると声が聞こえた。
「まって! 私は雨風を凌げる場所が欲しかっただけなの!」
両手を上げてこちらに女性が現れた。
「あれ……? 七瀬(ななせ)さん?」
「え? 流川くん?」
彼女は七瀬咲(ななせさき)俺の中学の頃の同級生だ。席が隣で結構話していたため数年たった今でも顔と名前を憶えていた。
「ひさしぶり、だね。でも、なんでこんなところに?」
「ちょっと変な男の人に連れ去られてな。お前こそどうして」
「……私も誘拐されちゃってね。それにしてもこのリアルバトルロワイアルっていう奴すごく残酷なルールだよね……」
「ルールを知ってるのか?」
「え?最初に説明されたでしょ? イヤホン越しに変な人から」
「いや。俺はそんな説明なんてされてない。詳しく教えてくれないか?」
「わかった。このゲームの参加者は全部で8人。最初にリュックに入ってた武器や島の所々に落ちている武器を使って最後の1人になるまで殺し合いをする。っていうのが私が聞いた説明かな」
「なるほど。ここに来るまでに死んでる奴とかは見なかったか?」
「1人見たよ。首から上がなくなってた……」
死者は俺が確認できているだけでも3人でここに2人。そして最初の女の人を殺したやつ1人。確実にゲームは終わりに近づいてきている。
「結構残酷な殺され方してるな……。まあとりあえず今日はここで休んでいくといい」
「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうね」
次の日の朝、俺は七瀬さんと別れた。その日は腕の痛みからか何もやる気が起きなく洞窟の中で1日を過ごした。
「食料もあと半分か……」
朝、俺はそんなことをぼやきながら栄養を摂取していた。
「腕の痛みも治まってきたし次はこの前言った方向とは反対側に行ってみますか」
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