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1話 ホンモノ

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目が覚めると俺は見知らぬ空間にいた。

四方が真っ白な壁に囲われた1メートル程しか無い狭い部屋。



「ここは......どこだ?」



これからどうしようかと悩んでいると誰も居ない筈なのに突然人の声が聞こえてきた。



「やっと起きましたか。体調は大丈夫ですか?」



「脳に直接語りかけている......だと!」



「違いますよ。ほら耳にイヤホンが付いているでしょう?」



「なんだ......。異世界に転生して魔法でも使えるのかと思った」



「異世界転生は無理ですが、魔法ならこれから先嫌という程見ると思いますよ」



「え? それってどう言う......」



「ああ、そろそろ時間ですね。君にはこれからこの島で入学試験を受けてもらいます」



「は? 入学試験? ちゃんと説明してくれ」



 俺がそういうと一瞬ノイズが入りイヤホンから聞こえていた声は途絶え、それと同時に四方にあった壁が倒れる。周りに広がる景色を見て、俺は言葉を失った。何故なら――



 眼前にはアマゾンを彷彿とさせるような雄大な自然が広がっていたからだ。周りは木々が生い茂りどこかから水の流れる音も聞こえる。



「なにこれ……。ここで何日間か生き残ればいいの?」



 これからどうしようかと途方に暮れていると、近くからゲームなどでビームを打つ時の効果音と似ている音と女の人の悲鳴が聞こえてきた。このままでは何もしなくても死ぬことを悟った俺はその方向に向かってみることにした。



 音の下方向に少し進むと木が生えていない場所を見つけた。木の陰に隠れその周辺の様子をうかがうと、そこには衝撃的なモノがあった。



女性の死体。おそらく死んでからそこまで時間がたっていないのであろう。まだ彼女は息があり抉られた脇腹からは、血が絶えず出続けていた。いや。『抉られた』という表現は正しくないのかもしれない。穴が開いていた。物理的な破壊ではない。消滅したというのがこの場合の正しい表現なのだろう。恐らくこれは『魔法』によるものなんだろう。そのグロテスクな光景に、平和な国で生まれ育った俺が耐えられるわけもなく、吐き気がこみあげてくる。



「うっ……」



 この瞬間俺は覚悟した。この先人を簡単に殺せるような力と心を持つ奴と戦わなければいけないことを。俺はとりあえず自分が最初にいた場所に帰ることにした。



「本当に、これからどうしようかなぁ……」



 帰り道そんなことをぼやきながら歩いていると奇妙な物が落ちているのを見つけた。



「これは……。銃?」



拾い上げてみるとずっしりと重く、弾倉を確認してみると7発の弾が入っていた。俺が持っているこれは間違いなく本物の銃だった。



「おいおいまじかよ。これで戦えってことか……」



とりあえず武器が手に入ったのは大きな成果だ。最初いた場所に戻ると、大きめのリュックが1つ置いてあった。中を確認してみるとそこには飲み水と食料が入っていた。



「この分なら1週間は持ちそうだな」



 食料物資を確保できた俺はこれからどうするかを考え始めた。



「まずは拠点だな。誰にも見つからなさそうな安全な拠点を探そう」



 俺は考えたことをすぐに行動に移すためリュックを背負い準備をする。ニートだってさすがに自分の命がかかわってくる時は動くんです。



 周囲の探索をすること数時間。すっかり辺りも暗くなってきた所で俺は洞窟を見つけた。



「ちょうどいい。今日はここで一夜を明かそう」



洞窟の中は薄暗く、じめじめしていてとても過ごしやすい環境とは言えなかった。だが人に見つかりにくいという安心感と普段は動かしてない筋肉を大量に酷使した疲労感からか俺は一瞬で眠りにつくことができた。



快適な室温湿度の空間で部屋に8枚あるモニターを1つ1つチェックする。



「もう脱落者が出たのか。早いなー。ご冥福をお祈りします。なむなむ……」



 背後から声がする。



「人が死んでるのにそんなに適当でいいんですか?」



「いいんだよこんなもんで。ここにいる奴らは消えても困らないいわば『ゴミ』なんだからね。なむなむしてるだけでもありがたいと思ってほしいよ」



「そうですか。それよりも、彼にだけルールを伝えなくて本当によかったんですか? このままだと彼死んじゃうかもしれませんよ?」



「大丈夫だよ。彼は絶対に勝つ」



「何を根拠にそんなことを……。私はあの『ヴィザード(魔法使い)』が勝つと思いますけどね」



「根拠? そんなものはいらない。何せあの子の弟だからね。それに彼自身は気づいてないみたいだけど『力』を持っている。フフフ……たのしみだなぁ。僕の期待を裏切らないでくれよ。流川涼人るかわすずと君」



 耳についていたイヤホンはいつの間にか消えてなくなっていた。

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