だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ

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52.魔法が使えることを思い出したわ!

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 六冊目のおじさんの日誌は、愛し子が雲が払われた後も神殿に住み続けた、で終わっていた。
 七冊目に手をかけたところで、モブが三十分過ぎた事を教えてくれた。

 本はまだまだある。
 あちらの六倍で進んでいるとはいえ、時間が全然足りないわ。

 行列のあるお手洗いだとしても十分は長すぎ。
 グリフ様が女子トイレを覗くなんて事態になったら大変よ。

「モブ、この部屋には神殿のどこかからしか入れないのよね?」
『そうだよ』

 モブは頷く。
 困ったわね。出来れば神殿には近付きたくないのに。

 うーん、どうしようかしら?


 ……あ、そうだっ!


「モブ、この本、借りて行ってもいい?」
『え?』
「今は全部読めないから、家で読みたいの。だから借りていこうかと思って」
『うーん、ぼくには判断できないなぁ。でも、この部屋はもう愛し子・マチルダの物だから、マチルダの好きにすればいいと思う』
「そう、なら借りていくわね」


――――愛し子じゃないけど!
 
 心の中でいつものセリフを唱えて、本を端から空間収納に放り込む。

 ふふふ、そう、私、思い出したの!
 私には全属性魔法チートがあったって!!!!

 ずっと魔法を使っていなかったからすっかり忘れてたわ!
 この場で思い出せてよかった!
 自分に感謝よ!

 ついでに懐かしのコレクションも持って帰っちゃいましょう。
 ルンルンしながら本棚を空にして、

「モブ、ここから出るにはどうすればいいの?」

 と、尋ねれば、モブは、

『取っ手を押せば出られるよ』

 って答えてくれた。そして不思議そうな顔で、

『マチルダ、また来るよね?』

 なんて聞いてきたの。

 多分来ない、いえ、絶対来ない、けどそうは言えなくて、私は黙って取っ手を強く押したの。
 入った時と同じように白い光が溢れて、数歩進めばそこは大広間。

 光の精霊王が、何とも言えない顔で待っていたわ。









「マチルダ、ずいぶん長いトイレだったね」

 何か言いたげな光の精霊王をせかして、グリフ様の所に戻ればいい笑顔でそんなことを言われたわ。
 トイレが混んでた、と言い訳をしようとしたけど、どうやらグリフ様は私が心配した、女子トイレ突撃をすでにしていたみたい。

 女の子にはいろいろやることがあるんだから、トイレは長くてもそんなこと言ってはいけないのよ!!

 と言ってやりたかったけど、私が言う前に隣に座っていた女性からもっとひどい言葉が飛んで来たので、私は静かに頷いておいたわ。

 グリフ様は心配したとかなんとか言い訳をしたけど、さらに周りの女性から冷たい視線を受けて撃沈してた。

 ちょっと可哀そう、とか思ったり……しないわよ。
 こんな人前で女性のトイレの話をするなんて、自業自得よ。

 顔がいいからって何でも許されると思わないで欲しいわよね。

 そんな、グリフ様VS女性陣の殺伐とした空気の中、ようやく私の再洗礼の順番が来たわ。
 近くに浮いている光の精霊王に目配せすれば、分かったと言うように大きく頷いてくれた。

 安心して再洗礼を受けて、当然愛し子じゃない判定を貰ったわ。


 ついでに、こないだ洗礼受けたんだからわざわざ来なくてもいいのに、なんて嫌味も貰った。
 来いって言ったのはそっちなのに、ずいぶんな言い草じゃない?




 だからこんな所、来たくないのよ!




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