58 / 317
第五章 ヘタレ王国宰相
第一話 王都へ
しおりを挟む
婆さん、事件です。
俺達は今、三日後の叙爵式に向けて王都へ移動している最中に、地竜と出会ってしまいました。
「やっぱり嫌な予感が当たったわボケ!」
「お兄ちゃん、発作の前にあの人たちを助けないと!」
騎兵が四騎ほど、必死に地竜の追跡から逃げている。
どこかで見た光景だ。
「だよな。駄姉妹、準備は良いか?」
「「はい!」」
「クレアはこのまま馬車の中で、防御魔法を目いっぱいの魔力で張って非戦闘員を守ってくれ」
「わ、わかりました兄さま!」
「といっても駄姉のメギドフレアで一発だろ?」
「可能だと思いますけれど、出来る限り少ない傷で仕留めましょう旦那様。領地が潤います」
「剥ぎ取りの心配かよ……。と言ってもメギドアローで地竜の足を吹っ飛ばして首を斬るくらいならやれるとは思うが」
「お兄ちゃん任せて!」
「どうだ駄姉? エリナとメギドアローで両足を飛ばして首を切断する程度の損傷で我慢しろ、もちろん俺がヤバそうだったらメギドフレアで仕留めろよ怖いから。再生魔法が使えるからちょっとくらいは平気かなとか思うなよマジで。フリじゃないからな!」
「かしこまりました旦那様」
「じゃあ行くぞ駄妹。<極光の雷剣>!」
「はい、お兄様! <極氷剣>!」
俺は刀身を倍ほどに延伸する雷魔法を、駄妹も同様に刀身を延伸する水魔法を行使して備える。
「ではエリナ様、わたくしはこちらから見て左の前足を狙います」
「うん! じゃあ私はその逆ね!」
「「<天の火矢>!」」
赤光の帯が地竜の左右それぞれの前足を根元から吹き飛ばす。
エリナの魔法って駄姉と同じくらいの威力じゃないか、これってやっぱりチートってやつだろ。
頭部か心臓に当てたらそれで終わりじゃねーか。
高額素材の牙か心臓は無くなるけど。
「駄姉、一応風縛を使っといてくれ、少しでも動きが鈍れば楽だから」
「はいはい」
「お前ちゃんと返事しろよ、そんなキャラじゃなかっただろ」
「つーん」
「くっそ、安全策を取ったからか、思いっきり不満たらたらじゃねーか」
「お兄様行きましょう」
「駄妹は良い奴だなー」
「お兄様! えへへ!」
「あと鎧をつける暇も無かったからしょうがないけど、お前はスカートのままなんだから気をつけろよ!」
「大丈夫です! お兄様以外に肌を見せるような事はいたしません!」
前足を二本とも失った地竜どったんばったん暴れているが、近づかなきゃ牙も後ろ脚の爪も届かないから安心だ。
騎兵も俺達の魔法で地竜が倒れたのを見てこちらに向かってくる。
「<風縛>ー」
駄姉のやる気の無さそうな風縛で、地竜の動きが弱まる。
あんなにやる気の無い呪文詠唱は初めて聞いたわ。
「<疾風>!」
「あ、お兄様! 待ってください! <地走>!」
「せいっ!」
一気に地竜に近づき、飛び上がって首を切断する。
が、刀身の長さが足りないせいで、半分程度残してしまう。
「はっ!」
即座に斬りかかった駄妹が残りの部分を切り離し、地竜の首を完全に切断する。
「親父の打った日本刀はやっぱりすごいな、ライトニングソードを使っていたとは言え全く抵抗なく刃が入ったぞ」
「素晴らしい業物ですね! 竜の骨や鱗の抵抗を全然感じませんでした!」
ガガガガガッ!
地竜に追われていた騎兵がこちらに向かってくる。
駄妹は俺を守るように背中に隠し、日本刀を騎兵たちに向ける。
駄姉たちも馬車を率いてこちらに向かってくるようだ。
「しばらく! しばらく! 某はラインブルク王国親衛騎士団所属ベルナール・ブルダリアスと申す! 貴殿たちに頼みがある!」
「待て! こちらはファルケンブルク伯トーマ・クズリュー閣下であるぞ! 下馬せず声を掛けるとはなんという無礼だ!」
やだ、駄妹がすごくカッコいい。
まさに女騎士然と日本刀をベルナールと名乗る男に向け、堂々と言上する。
滅茶苦茶美人だしなこいつ。
俺達は刀身延伸の魔法を解除せず、一応親衛騎士団と名乗る連中に警戒をする。
まあ手を出そうとしたらこちらに向かってきているエリナと駄姉の魔法で一瞬で蒸発するだろうけど。
「こ、これは失礼を!」
ベルナールと名乗った男と、それに率いられていた三人が転げ落ちるように下馬してから跪く。
「で、頼みとは?」
「はっ、実は王女殿下をお救い頂きたく!」
「面倒ごとが……」
「は?」
「いやこちらの話だ。続けろ」
ガラガラとエリナ達が馬車と一緒にやって来たが、ベルナールはちらりと見ただけで、話を続ける。
「我々は王女殿下を護衛していたのですが、地竜と遭遇した為に、何騎かに別れ地竜をひきつける役目を負いました。ただこの辺りは最近野盗が出るというので警戒していたのですが、我が配下が最後に目撃した王女殿下一行は、その野盗のアジトがあると目される方角へ向かったとの事で、是非一緒に向かっていただきたいのです」
「話は分かった。クリス」
「はい旦那様。シルヴィアの馬にはエリナ様とクレア様。わたくしの馬には旦那様にお乗り頂いて、その王女殿下の元に向かいましょう。残った者には地竜の後処理をさせたいと存じますが」
「わかった。ただベルナール、お前の所から一騎貸してくれ。王都への伝令も必要だろう。こちらも二騎出すから、地竜回収の手筈も一緒にさせたい」
「はっ! 閣下、某の願いをお聞き届け頂きまして有難う御座います」
「気にするな、さあ案内してくれ」
「はっ!」
護衛についていた十騎のうち、一番体格のいい二頭の馬を借りて、それぞれ騎乗する。
女性陣はそれぞれ用意していた騎乗用のズボンをスカートをはいたまま着用してバッチリ対策済みだ。
光線とか期待できないからな。
それにしてもクリスの腰に手を回して後ろに乗ってるが、凄くダサいし恥ずかしい。
帰ったら騎乗の訓練をしよう。
ベルナールの部下一騎にこちらの騎士を二人着けて王都に向かわせ、俺達はベルナールの案内で王都とは逆方向に向かって馬を走らせる。
嫌な予感って地竜だけじゃなかったのかよと思いつつも、クリスの良い匂いにちょっとドキドキしてる自分に呆れるのだった。
俺達は今、三日後の叙爵式に向けて王都へ移動している最中に、地竜と出会ってしまいました。
「やっぱり嫌な予感が当たったわボケ!」
「お兄ちゃん、発作の前にあの人たちを助けないと!」
騎兵が四騎ほど、必死に地竜の追跡から逃げている。
どこかで見た光景だ。
「だよな。駄姉妹、準備は良いか?」
「「はい!」」
「クレアはこのまま馬車の中で、防御魔法を目いっぱいの魔力で張って非戦闘員を守ってくれ」
「わ、わかりました兄さま!」
「といっても駄姉のメギドフレアで一発だろ?」
「可能だと思いますけれど、出来る限り少ない傷で仕留めましょう旦那様。領地が潤います」
「剥ぎ取りの心配かよ……。と言ってもメギドアローで地竜の足を吹っ飛ばして首を斬るくらいならやれるとは思うが」
「お兄ちゃん任せて!」
「どうだ駄姉? エリナとメギドアローで両足を飛ばして首を切断する程度の損傷で我慢しろ、もちろん俺がヤバそうだったらメギドフレアで仕留めろよ怖いから。再生魔法が使えるからちょっとくらいは平気かなとか思うなよマジで。フリじゃないからな!」
「かしこまりました旦那様」
「じゃあ行くぞ駄妹。<極光の雷剣>!」
「はい、お兄様! <極氷剣>!」
俺は刀身を倍ほどに延伸する雷魔法を、駄妹も同様に刀身を延伸する水魔法を行使して備える。
「ではエリナ様、わたくしはこちらから見て左の前足を狙います」
「うん! じゃあ私はその逆ね!」
「「<天の火矢>!」」
赤光の帯が地竜の左右それぞれの前足を根元から吹き飛ばす。
エリナの魔法って駄姉と同じくらいの威力じゃないか、これってやっぱりチートってやつだろ。
頭部か心臓に当てたらそれで終わりじゃねーか。
高額素材の牙か心臓は無くなるけど。
「駄姉、一応風縛を使っといてくれ、少しでも動きが鈍れば楽だから」
「はいはい」
「お前ちゃんと返事しろよ、そんなキャラじゃなかっただろ」
「つーん」
「くっそ、安全策を取ったからか、思いっきり不満たらたらじゃねーか」
「お兄様行きましょう」
「駄妹は良い奴だなー」
「お兄様! えへへ!」
「あと鎧をつける暇も無かったからしょうがないけど、お前はスカートのままなんだから気をつけろよ!」
「大丈夫です! お兄様以外に肌を見せるような事はいたしません!」
前足を二本とも失った地竜どったんばったん暴れているが、近づかなきゃ牙も後ろ脚の爪も届かないから安心だ。
騎兵も俺達の魔法で地竜が倒れたのを見てこちらに向かってくる。
「<風縛>ー」
駄姉のやる気の無さそうな風縛で、地竜の動きが弱まる。
あんなにやる気の無い呪文詠唱は初めて聞いたわ。
「<疾風>!」
「あ、お兄様! 待ってください! <地走>!」
「せいっ!」
一気に地竜に近づき、飛び上がって首を切断する。
が、刀身の長さが足りないせいで、半分程度残してしまう。
「はっ!」
即座に斬りかかった駄妹が残りの部分を切り離し、地竜の首を完全に切断する。
「親父の打った日本刀はやっぱりすごいな、ライトニングソードを使っていたとは言え全く抵抗なく刃が入ったぞ」
「素晴らしい業物ですね! 竜の骨や鱗の抵抗を全然感じませんでした!」
ガガガガガッ!
地竜に追われていた騎兵がこちらに向かってくる。
駄妹は俺を守るように背中に隠し、日本刀を騎兵たちに向ける。
駄姉たちも馬車を率いてこちらに向かってくるようだ。
「しばらく! しばらく! 某はラインブルク王国親衛騎士団所属ベルナール・ブルダリアスと申す! 貴殿たちに頼みがある!」
「待て! こちらはファルケンブルク伯トーマ・クズリュー閣下であるぞ! 下馬せず声を掛けるとはなんという無礼だ!」
やだ、駄妹がすごくカッコいい。
まさに女騎士然と日本刀をベルナールと名乗る男に向け、堂々と言上する。
滅茶苦茶美人だしなこいつ。
俺達は刀身延伸の魔法を解除せず、一応親衛騎士団と名乗る連中に警戒をする。
まあ手を出そうとしたらこちらに向かってきているエリナと駄姉の魔法で一瞬で蒸発するだろうけど。
「こ、これは失礼を!」
ベルナールと名乗った男と、それに率いられていた三人が転げ落ちるように下馬してから跪く。
「で、頼みとは?」
「はっ、実は王女殿下をお救い頂きたく!」
「面倒ごとが……」
「は?」
「いやこちらの話だ。続けろ」
ガラガラとエリナ達が馬車と一緒にやって来たが、ベルナールはちらりと見ただけで、話を続ける。
「我々は王女殿下を護衛していたのですが、地竜と遭遇した為に、何騎かに別れ地竜をひきつける役目を負いました。ただこの辺りは最近野盗が出るというので警戒していたのですが、我が配下が最後に目撃した王女殿下一行は、その野盗のアジトがあると目される方角へ向かったとの事で、是非一緒に向かっていただきたいのです」
「話は分かった。クリス」
「はい旦那様。シルヴィアの馬にはエリナ様とクレア様。わたくしの馬には旦那様にお乗り頂いて、その王女殿下の元に向かいましょう。残った者には地竜の後処理をさせたいと存じますが」
「わかった。ただベルナール、お前の所から一騎貸してくれ。王都への伝令も必要だろう。こちらも二騎出すから、地竜回収の手筈も一緒にさせたい」
「はっ! 閣下、某の願いをお聞き届け頂きまして有難う御座います」
「気にするな、さあ案内してくれ」
「はっ!」
護衛についていた十騎のうち、一番体格のいい二頭の馬を借りて、それぞれ騎乗する。
女性陣はそれぞれ用意していた騎乗用のズボンをスカートをはいたまま着用してバッチリ対策済みだ。
光線とか期待できないからな。
それにしてもクリスの腰に手を回して後ろに乗ってるが、凄くダサいし恥ずかしい。
帰ったら騎乗の訓練をしよう。
ベルナールの部下一騎にこちらの騎士を二人着けて王都に向かわせ、俺達はベルナールの案内で王都とは逆方向に向かって馬を走らせる。
嫌な予感って地竜だけじゃなかったのかよと思いつつも、クリスの良い匂いにちょっとドキドキしてる自分に呆れるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる