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第九章 変わりゆくヘタレの世界
第二十四話 エカテリーナ・メディシス
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第二十四話 エカテリーナ・メディシス
「姉さん! 姉さん‼」
「おいおい、マリアの嬢ちゃん。おぬしの妹か? さっきから呼んでおるぞい」
「はへ?」
爺さんにセグAを説明していたマリアが、爺さんに言われてやっと自分を呼ぶ人物の存在に気づく。
「もう! 姉さん!」
「あれ? エカテリーナ? なんでここに?」
「昨日の夜、姉さんが行使する魔素を感じたのよ」
「昨日の夜……? ああ! セグAを起動したわ!」
「それで探しに来たら、先ほどまた姉さんの魔素を感じたのでここに来たの」
「エカテリーナの魔素探知能力は国で一番だしね」
「エルフ国からこんなすぐそばであんなに大量の魔素を行使したら誰でもわかるわよ……」
「そっか、北門ならともかく南門はエルフ国に近いからね。ここは遮蔽物も無いし」
「で? 姉さん研究の方はどうなの? 『十年でなんとかモノにします』と言って人の良い王様から研究資金ふんだくっておいて、何の成果もあげてませんじゃ流石に罰せられると思うわよ?」
「まだ五年あるし! それに良いパトロンを見つけたから!」
「かなりの額の研究資金を要求しておいてパトロン? 魔素の技術は流出しても普人には関係ないだろうけど、関連技術でエルフ国が不利な契約になるようなのは問題あると思うわよ?」
「その辺はホラ! 美味しいところは渡さないとか色々工夫できるし!」
マリアとは違って、美しい長髪を持ち控えめな胸をしているエカテリーナと呼ばれたマリアの妹とマリアがいきなり言い争いを始める。
というかパトロンって俺の事か? あとパトロンと関連技術の開発を手伝ってくれる予定の爺さんの前で不穏な発言はやめろ。
この場にクリスとアイリーンがいてくれて助かった。
マリアの妹から色々確認しておかないと、うかつに魔素研究に手を付けられん。
「クリス、アイリーン」
「「はっ」」
エカテリーナに対して警戒していたクリスが、マリアの妹だとわかったため警戒を解きつつ、マリアと口論中のエカテリーナに声をかける。
「まったく姉さんは! 五年間なんの連絡も無ければ研究報告も皆無だなんて!」
「あの、エカテリーナ殿でよろしいでしょうか?」
「はい? あ! 申し訳ありません! 私、マリアの妹のエカテリーナ・メディシスと申します! 姉がお世話になっております!」
「わたくしファルケンブルク伯領主夫人、クリスティアーネ・クズリューと申します」
「りょ……領主夫人様……」
「はい。以後お見知りおきを」
「姉さん! 大物やないか!」
「せやろ⁉」
あれ? 妹の方はまともだと思っていたけど、姉と一緒なのかな?
「今日の出の勢いのファルケンブルクをパトロンって姉さん大手柄やわ!」
「仮だけどすでに採用試験もパスしたんやで!」
「ファルケンブルクは数年以内にはラインブルク王国を滅ぼして乗っ取るって噂やしな!」
「せやせや!」
「待て待て! なんかとんでもない噂が出回っててドン引きしたわ! なんだ乗っ取りって!」
「あ、エカテリーナ、紹介するわ。何を隠そうこの方が、いずれファルケンブルク王になられるファルケンブルク伯領主トーマ・クズリュー閣下や」
「これは国王陛下! このような格好で大変失礼を致しました! 私エカテリーナ・メディシスと申します。以後お見知りおきくださいませ」
「国王陛下って呼ぶな! 不敬だわ! あとラインブルク王国を乗っ取る予定もないし理由もない!」
「しかしすでに亜人国家連合を属国化させた上に、魔導戦力も拡充してあとは決起するだけだとエルフ国ではもっぱらの噂ですが……」
「エルフ国も変なのが多いのかな? 亜人国家連合は属国じゃなくて友好国だし、ラインブルク王国とも関係は良好だ」
「エルフ国の国民は基本引きこもりだらけですからね……。個人商会で細々と生活必需品などを交易してるくらいで、外界の情勢などは主にそこからしか入ってきませんから」
「交易?」
「はい。交易」
「どこと?」
「一番近いファルケンブルク領ですね」
「えっ?」
「えっ?」
エルフ国と交易してた? うちが?
そんな報告受けてないんだが。
「クリス?」
「いえ、わたくしも初めて聞きました」
「アイリーンは?」
「私も初耳です……」
「交易と言っても一ヶ月に馬車数台程度の取引量しか無いですしね」
「小口だからわからなかったってことか?」
「あり得ますね……チェックの厳しい魔石や魔導具ならともかく、食料や鉱石程度なら特に輸出入の規制も無いですし」
クリスが少し考えながらそう発言をする。
「亜人国家連合の特産品以外には関税もかけてないからな。魔物の肉や素材に関しては冒険者登録無しでも普通に引き取ってもらえるし」
「閣下、一刻も早くエルフ国へ有効使節団を派遣しなければなりませんね。マリア殿の件もありますし」
「もうバレたしな」
「エルフ国が支援してる技術研究に我が領が参画しても良いのかという大問題が」
「担当のマリアがパトロン発言してたしな」
「センセ! それは言葉のアヤっちゅーもんや!」
「うちの金を使って開発した技術なのに、不味いところしか貰えないんだろ?」
「いや、その……」
「国王陛下」
「国王陛下はやめろ妹」
「では閣下、私のことはエカテリーナとお呼びください。それと研究開発に関してはエルフ国国王と交渉してみてはいかがでしょうか?」
「もうそうするしかないよな。まさかマリアが研究資金ふんだくって逃げてたとか知らなかったし」
「ううう……」
「エルフ国の国王はお人好しですから簡単に騙せると思いますよ?」
「自分の国の王への扱いが酷い」
「姉さんに簡単にお金出しちゃうくらいですからね」
「エルフ王国に全く伝手が無い状態だから、マリアとエカテリーナに協力してもらっていいか?」
「それはもちろんです。姉もここで採用されなければ研究を続ける目途も無く、研究資金を持ち逃げしてるような状況でしたからね」
「任せてくださいセンセ!」
「いまいち不安だが、ほかに伝手が無いから我慢するか……」
「そんなセンセ!」
「クリス、アイリーン。そういうことだから使節団の調整を頼む。できるだけ早い日程でな」
「「かしこまりました」」
エルフ国か。とりあえず俺たちと敵対しそうな感じではないし上手くいくと良いけど。
マリアの件もそうだけど、元々南部大森林で伐採しまくってる状況の説明もしなきゃいけないところだったしな。
「姉さん! 姉さん‼」
「おいおい、マリアの嬢ちゃん。おぬしの妹か? さっきから呼んでおるぞい」
「はへ?」
爺さんにセグAを説明していたマリアが、爺さんに言われてやっと自分を呼ぶ人物の存在に気づく。
「もう! 姉さん!」
「あれ? エカテリーナ? なんでここに?」
「昨日の夜、姉さんが行使する魔素を感じたのよ」
「昨日の夜……? ああ! セグAを起動したわ!」
「それで探しに来たら、先ほどまた姉さんの魔素を感じたのでここに来たの」
「エカテリーナの魔素探知能力は国で一番だしね」
「エルフ国からこんなすぐそばであんなに大量の魔素を行使したら誰でもわかるわよ……」
「そっか、北門ならともかく南門はエルフ国に近いからね。ここは遮蔽物も無いし」
「で? 姉さん研究の方はどうなの? 『十年でなんとかモノにします』と言って人の良い王様から研究資金ふんだくっておいて、何の成果もあげてませんじゃ流石に罰せられると思うわよ?」
「まだ五年あるし! それに良いパトロンを見つけたから!」
「かなりの額の研究資金を要求しておいてパトロン? 魔素の技術は流出しても普人には関係ないだろうけど、関連技術でエルフ国が不利な契約になるようなのは問題あると思うわよ?」
「その辺はホラ! 美味しいところは渡さないとか色々工夫できるし!」
マリアとは違って、美しい長髪を持ち控えめな胸をしているエカテリーナと呼ばれたマリアの妹とマリアがいきなり言い争いを始める。
というかパトロンって俺の事か? あとパトロンと関連技術の開発を手伝ってくれる予定の爺さんの前で不穏な発言はやめろ。
この場にクリスとアイリーンがいてくれて助かった。
マリアの妹から色々確認しておかないと、うかつに魔素研究に手を付けられん。
「クリス、アイリーン」
「「はっ」」
エカテリーナに対して警戒していたクリスが、マリアの妹だとわかったため警戒を解きつつ、マリアと口論中のエカテリーナに声をかける。
「まったく姉さんは! 五年間なんの連絡も無ければ研究報告も皆無だなんて!」
「あの、エカテリーナ殿でよろしいでしょうか?」
「はい? あ! 申し訳ありません! 私、マリアの妹のエカテリーナ・メディシスと申します! 姉がお世話になっております!」
「わたくしファルケンブルク伯領主夫人、クリスティアーネ・クズリューと申します」
「りょ……領主夫人様……」
「はい。以後お見知りおきを」
「姉さん! 大物やないか!」
「せやろ⁉」
あれ? 妹の方はまともだと思っていたけど、姉と一緒なのかな?
「今日の出の勢いのファルケンブルクをパトロンって姉さん大手柄やわ!」
「仮だけどすでに採用試験もパスしたんやで!」
「ファルケンブルクは数年以内にはラインブルク王国を滅ぼして乗っ取るって噂やしな!」
「せやせや!」
「待て待て! なんかとんでもない噂が出回っててドン引きしたわ! なんだ乗っ取りって!」
「あ、エカテリーナ、紹介するわ。何を隠そうこの方が、いずれファルケンブルク王になられるファルケンブルク伯領主トーマ・クズリュー閣下や」
「これは国王陛下! このような格好で大変失礼を致しました! 私エカテリーナ・メディシスと申します。以後お見知りおきくださいませ」
「国王陛下って呼ぶな! 不敬だわ! あとラインブルク王国を乗っ取る予定もないし理由もない!」
「しかしすでに亜人国家連合を属国化させた上に、魔導戦力も拡充してあとは決起するだけだとエルフ国ではもっぱらの噂ですが……」
「エルフ国も変なのが多いのかな? 亜人国家連合は属国じゃなくて友好国だし、ラインブルク王国とも関係は良好だ」
「エルフ国の国民は基本引きこもりだらけですからね……。個人商会で細々と生活必需品などを交易してるくらいで、外界の情勢などは主にそこからしか入ってきませんから」
「交易?」
「はい。交易」
「どこと?」
「一番近いファルケンブルク領ですね」
「えっ?」
「えっ?」
エルフ国と交易してた? うちが?
そんな報告受けてないんだが。
「クリス?」
「いえ、わたくしも初めて聞きました」
「アイリーンは?」
「私も初耳です……」
「交易と言っても一ヶ月に馬車数台程度の取引量しか無いですしね」
「小口だからわからなかったってことか?」
「あり得ますね……チェックの厳しい魔石や魔導具ならともかく、食料や鉱石程度なら特に輸出入の規制も無いですし」
クリスが少し考えながらそう発言をする。
「亜人国家連合の特産品以外には関税もかけてないからな。魔物の肉や素材に関しては冒険者登録無しでも普通に引き取ってもらえるし」
「閣下、一刻も早くエルフ国へ有効使節団を派遣しなければなりませんね。マリア殿の件もありますし」
「もうバレたしな」
「エルフ国が支援してる技術研究に我が領が参画しても良いのかという大問題が」
「担当のマリアがパトロン発言してたしな」
「センセ! それは言葉のアヤっちゅーもんや!」
「うちの金を使って開発した技術なのに、不味いところしか貰えないんだろ?」
「いや、その……」
「国王陛下」
「国王陛下はやめろ妹」
「では閣下、私のことはエカテリーナとお呼びください。それと研究開発に関してはエルフ国国王と交渉してみてはいかがでしょうか?」
「もうそうするしかないよな。まさかマリアが研究資金ふんだくって逃げてたとか知らなかったし」
「ううう……」
「エルフ国の国王はお人好しですから簡単に騙せると思いますよ?」
「自分の国の王への扱いが酷い」
「姉さんに簡単にお金出しちゃうくらいですからね」
「エルフ王国に全く伝手が無い状態だから、マリアとエカテリーナに協力してもらっていいか?」
「それはもちろんです。姉もここで採用されなければ研究を続ける目途も無く、研究資金を持ち逃げしてるような状況でしたからね」
「任せてくださいセンセ!」
「いまいち不安だが、ほかに伝手が無いから我慢するか……」
「そんなセンセ!」
「クリス、アイリーン。そういうことだから使節団の調整を頼む。できるだけ早い日程でな」
「「かしこまりました」」
エルフ国か。とりあえず俺たちと敵対しそうな感じではないし上手くいくと良いけど。
マリアの件もそうだけど、元々南部大森林で伐採しまくってる状況の説明もしなきゃいけないところだったしな。
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