224 / 317
第十章 ヘタレ異文化交流
第十二話 物産展 エルフ王国の場合
しおりを挟む「パパ! かわいい?」
「可愛いぞミコト!」
「ぱぱ! えまは?」
「エマも可愛いぞ!」
「「わーい!」」
着物を着てくるくる回りながら俺に服を見せてくるふたりがやたら可愛い。
こんなに可愛いとすぐ誘拐されてしまうんじゃなかろうか。
ファルケンブルクではここ数年そういう事件は発生してないほど治安が良いんだが。
最近は闇金業者も大量に捕まって地下組織をいくつも潰してるし。
「でも脱ごうな。これから昼飯を食べるんだから」
「「えー!」」
着付けに時間のかかる和服を十着ほど試着してあれもこれもと衣装に合わせた小物なんかも揃えてたらあっという間に時間が過ぎてしまったのだ。
もうすでに昼飯の時間を過ぎてしまっていた。ふたりがあまりにも可愛いからつい調子に乗ってしまった結果だ。
「せっかく買った服が汚れちゃうだろ? それとも汚れないように一口サイズのサンドイッチとかにするか?」
「エルフさんたちのごはんが食べたい!」
「えまも!」
「じゃあ脱ごう。家に帰ったらまた着ていいから」
「「はーい!」」
「じゃあ店員さんお願いします。エリナとクレアも一緒について行ってやってくれ。着せ方とか聞いておいてくれな」
「わかった!」
「わかりました兄さま」
鼻息の荒い亜人の店員にミコトとエマが試着室に連れていかれ、エリナとクレアがふたりを守るために後を付いていく。
エリナとクレアも浴衣を新調したが、汚したくないとすぐに包んでしまっていた。
「甚平が欲しいんだが」
「「「……」」」
再度店員に話しかけるも華麗にスルーされる。
どうやら甚平はここでは売ってないようだな。うんそうに違いない。
寂しくなりながらも、男物の吊るしゾーンで色々物色してみる。
「普通に甚平売ってるじゃないか……」
「「「……」」」
どうするかな、試着するかな。でもなんとなくここで買いたくないな。
甚平を手にして迷っていると、ミコトとエマがいつもの服を着てこちらにやってくる。
「パパ! ご飯食べよう!」
「ぱぱ! えるふさんのごはん!」
「よし行くか。なんだかんだ全部を試着してたらもう昼過ぎたしな」
「お兄ちゃんは何も買わないの?」
「甚平が欲しいんだけど売ってくれないんだよ……」
「?」
こてり、と首をかしげているエリナをそのままに、右手をミコト、左手をエマに繋がれて外に出る。
娘ふたりが超絶ご機嫌だ!
結構な散財をしたけどこんなご褒美があるなら毎日でも何か買ってやりたいな。
領主としての給料はクリスに任せて、公共事業などに使ってるから、実質的に狩りや竜種の素材の売却益でしか俺の収入って無いんだよな。
天竜とかまた出現しないかな?
「えへへ! パパ大好き!」
「ぱぱだいすき!」
明日から竜を探しに出かけるかな?
もっと娘のために頑張らないと! と思いながら娘ふたりと手を繋ぎ、すぐ隣にあるエルフ王国の商業区画へと歩いていく。
隣といっても結構歩くんだけど。
ミコトとエマに合わせてぽてぽて歩いていると、やがてエルフ王国の区画へと入っていく。
昼を少し過ぎているのだが、食べ物を提供している店はまだまだ混雑しているようだ。
「ミコト、エマ、何か食べたいものがあれば言えよ」
「「はーい!」」
店をのぞきながら歩いていると、エルフの店員は全員アロハを着用しているようだ。
民族衣装とか言ってたけどやたらと似合ってるな。
売ってたら涼しそうだし一着くらい買うかな? 甚平買えなかったし。
「センセ!」
「閣、トーマさん!」
呼ばれて振り返ると、マリアとエカテリーナがアロハな格好で呼び込みをしていた。
「あー! マリアお姉ちゃんとエカテリーナお姉ちゃんだー!」
「まりあねー! かちゅねー!」
かちゅねー? ああエカテリーナの愛称ってカチューシャって言うんだっけ。
何故かこの世界も日本人には馴染みのない愛称があるんだよな。
いつの間にかエルフ姉妹にすっかり懐いている娘たちに引っ張られる。
「ミコトちゃん! エマちゃん! こんにちは!」
「「こんにちは!」」
「お昼ご飯はもう食べたん?」
「「まだー」」
「じゃあうちの店で食べていかへん? サービスするで!」
「「うん!」」
「あーじゃあ世話になるか。どこ見ても混んでるみたいだけど席は空いてるのか?」
「ちょうど大テーブルが空く所やってん、ちょうどよかったです!」
関西弁のようなイントネーションで席に案内される。
たしかに八人掛けのテーブルが今ちょうど空いたところだった。
「ここでだしてる食事ってどんな料理なんだ?」
「肉ですよ! 今エカテリーナが持ってきますよって、少々お待ちくださいね」
「エルフ族が肉好きなのはわかってるから肉料理ってのは想像できるんだが」
「まあまあ楽しみにしとってください」
「ちょっと不安になってきた」
少しヘタレな俺の発言を無視して、マリアはドリンクの入ったタンブラーをエリナたちの前に置いていく。
「これはサービスですから。お代わりもサービスしますから遠慮なく言ってくださいね」
「ありがとー! マリアお姉ちゃん!」
「ありがとー!」
「うふふ、ミコトちゃんとエマちゃんは偉いなあ」
「お待たせいたしましたー!」
エカテリーナが串に刺された巨大な肉とともにテーブルにやってくる。
「うわー! 凄いよお兄ちゃん!」
「パパ! すごい!」
「おっきいおにくだ!」
「兄さま、これは凄いですね!」
「シュラスコだっけ?」
「センセ流石ですね!」
エカテリーナのあとに、同じく串にささったソーセージや鶏肉、更には大皿に乗せられた鶏の丸焼きなどがどんどん運ばれてくる。
「これは凄いな」
「これをお客様の食べたい量だけお皿に取り分けて、色んなテーブルを回るんです。この札をお渡ししますので、お腹いっぱいになったらひっくり返してくださいね」
「たしかにマリアが言った通り、ここで出す料理は肉だな。まさに」
「でしょう⁉」
ニコニコと、俺たちの皿に色々な肉を切り分けて置いていく。
付け合わせはパンがあるが、エルフ族はパンもあまり食べないって話だけど、さすがにそこはファルケンブルクの人間に合わせてるのな。
それにしても肉だらけでちょっと引いたけど。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる