リビングデッド

常夏の炬燵

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魔族編

第十二話

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魔王が魔族をナナシの元へ向かせている最中、ナナシは砂漠で誰も住んでいないオアシスを見つけ、水辺でのんびり寝転んでいた。
そんな時、テンカが天界から降りてきた。

「ナナシ。こんな所にいたのか」

「テンカ、どうした?」

ナナシが聞くと、真剣な目をして口を開く。

「魔族の気配が近づいてきた。もうすぐこちらに来るぞ」

「…またか…エドはどうした?」

「さあな」

「呼ばないのか?」

「あいつの居場所がわからないんだよ。少なくともこの地球上にはいない」

そんな話をしていると、エドがナナシ達の前に現れた。

「オマエらなんでこんなとこいんだよ!探したぞ!」

「他人を巻き込まない為にな。それにしてもよくここがわかったな」

エドの問にナナシが答える。

「ユメって子に聞いたんだよ。オマエよく一緒にいただろ?」

「え?そうなのか?」

あれ?ユメにここに行ったこと話していないよな?そもそも、ここに辿り着いたのはたまたまだ。

おかしい…ユメは一度魔族と対峙している…俺達と敵対していることや、魔族の恐ろしさは身をもって知っているはず。そんな子が、こんな見るからに人間じゃない奴にナナシの居場所を教えるか?

各々が疑問に思っていると、湖に雷が落ちた。

「なんだ!?」

「来たぞ!構えろ!」

一斉に湖の方を向き警戒する。
そこには、青い肌に電気を纏い、黄色い毛皮を羽織った猫背の魔族が立っていた。

「あ?三人?いるのは人間一人と聞いてたんだが?」

「お前が来ることを察知して、駆けつけたんだよ」

魔族の言葉にテンカが反論する。

「は?なんだよ?そんなこと出来んのかよ…」

「残念だったな。俺の能力を把握しきれていなかったようだな。想定していた人数の三倍だ。かなり計算が狂ったんじゃないか?一度魔界に帰って体制を整えた方がいいんじゃないか?」

このまま帰ってくれれば、魔力を追跡し魔界を突き止めることが出来る。
テンカはその思惑に気づかず、魔族が素直に帰ってくれることを祈った。

「たかが人数不利にこの俺様が怖気付くと思ったか?」

魔族は不敵な笑みを浮かべて体に電気を集める。

「なめんなよ?三人になろうと俺様の能力の前には無意味だ!」

そう言って、勢いよく放電する。

ナナシとテンカは距離をとり、エドは姿を消した。

「自己紹介がまだだったな!俺様はボルト!電気使いだ!」

自己紹介をしつつ、攻撃を仕掛ける。

「ッ…!」

「速い…!」

ナナシは疎か、テンカまでもが反応できない速度で、ナナシとの距離を縮め、体に触れる。

「ぐああ…ッ!」

全身に電気が流れ、麻痺して動けなくなってしまった。

「あいつは後回しで、次は…」

ボルトは音速を超えるスピードで動き回るエドに追いつくと、電気を流す。

「裏切り者は排除しないとな?」

「チッ…」

一瞬で二人を戦闘不能にしたボルトはテンカの方に向き直した。

「最後はお前だ」

ボルトは不敵な笑みを浮かべた。
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