リビングデッド

常夏の炬燵

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魔族編

第十三話

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ボルトがテンカに向かって突っ込む。
テンカは予め体にまとっていた、天界力で電撃を防いだ。

「流石。既に対策済みか!だったら!」

ボルトは更に充電し、電力を上げた。

「これならどう…ッ!」

充電が完了した途端、爆発が起こった。

「ナナシ!」

麻痺を治したナナシがミサイルを撃ち込んでいた。

「ちょっ回復早すぎ!」

体に纏っていた電気のお陰で直撃を逃れたボルトが咳をしながら土埃から顔を出した。

瞬時にテンカが動き、天力弾を連射する。

「チッ…小賢しい…!」

電気でガードをしていたボルトだが、徐々に電力が弱まっていた。

くっこのままじゃ…!

「ぐおあああああああ!!!」

残った電気を一気に放出し、テンカを怯ませる。
その隙に地面に潜り、充電した。

「テンカ!」

ナナシがテンカの元に駆け寄る。

「すまない…完全に見失った…魔力も感じない」

「心配すんな。アイツはすぐ近くにいる」

エドが痺れたからだを引きずりながら、こちらにやってきた。

「どういう事だ?」

テンカが聞くと、エドが口を開く。

「魔王の命令は絶対だ。ナナシを殺すまで帰れねーよ。そんな事したら殺されちまう。多分隠れて隙を伺ってるんじゃねーか?」

「ほう?魔王の性格をよく知っているじゃないか」

エドは思わず小さな声を漏らしてしまった。テンカはそれを聞き逃さなかった。

「まあ、お前は魔族を裏切ったようだから、もう追求はしないが、怪しい行動をとったら、すぐに始末するからな?」

「あ、ああ…わかった…」

こりゃ、完全にオレが敵側だったってことがバレてるな。だが、まだあの事はバレてねー。コイツは何かと鋭いからな…気をつけねーと…

「だが、魔力も感じなくなったんだろ?」

「ヤツらは魔力を消すことが出来んだよ」

「なるほど…それでいくら探しても魔族の出処が分からないわけか」

テンカはエドの話を信じることにした。
今の二人ではエドのスピードに対処出来ない為、今敵対すればこちら側が不利になるからだ。

「じゃあ、今どこかで俺達の様子を伺っているという事か…」

「そういうことだな」

「だったら、俺が囮になる」

「どうするつもりだ?」

ナナシの提案にテンカが質問する。

「あいつは俺一人を想定していた。という事は、奴に課せられた命令は俺の抹殺。前戦った氷の魔族は、俺から生気を感じないと言っていたから、見失ったら探し出すのは困難だ」

「それで、ナナシを追うため出てきたボルトを俺達が撃つという事か」

「そうだ。俺の事は構わずに思い切り撃ってくれ」

「その必要はねぇぜ!」

突然地面からボルトが現れた。

「まずい!全員離れろ!」

「もう遅せぇよ!」

テンカの指示も虚しく、ボルトの最大出力が放たれた。
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