スローライフに憧れる伝説の王子

83話

第八十三話：「静寂の罠—砦突入への決断」

夜明けの静寂—不穏な砦

夜が明けると、砦の外側の防壁は不気味なほど静まり返っていた。

リンゴー軍の斥候たちは遠巻きに砦を観察し、隊長へ報告する。

「何かあるのか？……妙に静かすぎる。」

連日の攻撃で防衛側が疲弊し、撤退したのではないか——そんな可能性が浮上する。

隊長は周囲の兵士を見渡しながら、慎重な表情で言う。

「この状況……罠かもしれん。だがもし撤退しているなら、今こそ好機だ。」

砦突入の決断—門を打ち破れ！

「とにかくチャンスだ！」

リンゴー軍の指揮官が叫ぶと、兵士たちの士気が高まる。

「門を打ち破り、この砦を通過するぞ！」

投石機が前進し、城壁に向けて弾を込められ始める。

騎兵隊は突入の準備を整え、歩兵隊が突撃態勢を取る。

リンゴー軍の内部—作戦会議

砦突入の準備が進む中、リンゴー軍の本陣では将軍たちが作戦を練っていた。

「この砦を落とせば、王国軍の補給路を完全に封じることができる。」

戦略担当の将軍が地図を広げ、要点を説明する。

「問題は、これまでどんな攻撃を仕掛けても突破できなかったことだ。」

補給が不足し、弓矢や魔法の回復薬も限られている。その状況を打開するには、一気に強行突破するしかない。

「防壁が静かすぎる……罠の可能性も考慮すべきだ。」

別の将軍が懸念を示すが、指揮官は冷笑しながら答える。

「罠だろうが何だろうが、ここで引くわけにはいかん。この砦を抜けなければ戦線は崩壊する。」

将軍たちは覚悟を決めた。

「総攻撃の準備を整えろ！」

王国軍の静かなる策—迎撃準備

一方、砦内部では、セシリアが静かに巻物を広げていた。

「外壁の防衛を放棄し、敵を中へ誘い込む——ノブ様の指示通り、計画は進行中ね。」

王国軍の兵士たちはすでに内側へと移動を完了し、次の迎撃準備を整えていた。

「敵が罠に気づく前に、確実に仕留める。」

戦士たちは弓を引き絞り、魔術師は詠唱の準備を始める。

「さあ……敵は罠に飛び込んでくるわ。」

砦の門が開く—突撃するリンゴー軍

突如として、外壁の門がゆっくりと開き始めた。

「門が開いたぞ……！」

リンゴー軍の指揮官が驚きながら叫ぶ。

「王国軍は撤退したのか！？」

ほんの数秒の沈黙の後——

「突撃しろ！！」

指揮官の叫びが戦場に響き渡る。

リンゴー軍の兵士たちは一斉に門へと殺到し、雪崩れ込むように砦内部へと進軍した。

騎兵たちが先頭を走り、歩兵がそれに続く。

「王国軍はどこだ！？なぜ何も抵抗してこない！？」

砦内へ進軍しながら、リンゴー軍の兵士たちは異様な違和感を覚え始める——

彼らはまだ知らなかった。王国軍の迎撃準備が完了していることを。

（続く）