スローライフに憧れる伝説の王子

猫の手も借りたいおじさん

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201話

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『果実の午後、甘さの裏に重ねられる歩幅』

女子会の余韻が去った翌日――
アリシア、カミラ、フィオナ、リカ、エレンの5人は再び顔を揃えていた。

集った場所は、王城北棟の書斎付き応接間。
紅茶ではなく、書類と話題がテーブルを埋め尽くしている。

---

カミラ(地図を広げつつ):「確認だけど、“後方から見ているだけでは距離は詰まらない”って、全員同意してるのよね?」

アリシア(腕を組みながら):「ええ。“静観”の時期は過ぎた。
彼自身が変わってきたのなら、こちらも“動き方”を変えないと」

フィオナ(柔らかく微笑み):「早い者勝ちではなく、“隣にいて自然かどうか”を――
その実地試験、やってみましょう?」

エレン(小さく頷き):「……わたしも、歩幅を揃える勇気、少しだけ持てるような気がして」

リカ(元気に手を挙げ):「よーし、じゃあ準備できた人から出発! 今日の農園、甘い風が吹きそうでしょ♪」

---

その頃、農園。

ノブは一人、果物と格闘していた。
採れたての白桃、小粒の葡萄、酸味強めの新種柑橘。
それを手際よく並べながら、頭の中は完全に“お菓子開発モード”。

「酸味残して、ミルク要素は軽めで……いや、逆に生姜とか合わせた方が香り立つか……」

そんな彼の前に、**まったく予告のない“訪問者たち”**が現れる。

---

リカ(ひょっこり):「こんにちはー! 甘い香りに吸い寄せられてきました~!」

エレン(照れくさそうに):「こ、これ……焼き立てパン。差し入れ、です……」

フィオナ(エプロン姿で優雅に):「こんにちは、ノブ様。“共同試作実験場”、まだ空いているかしら?」

ノブ:「……君たち、連絡もなしに……いや、もう慣れてきたけど」

カウンターの上、フルーツとバターの香りがふわりと混ざり始める。

---

こうして始まった“非公式調理会”。

リカはテンポよく果物を切り、ノブのレシピに口を挟みつつ味の流れを記録していく。
フィオナは仕上がりに残る香りのバランスを重視し、器の温度にも細かく目を配る。
エレンは、目立たぬ位置からそっと舌の動きを見て、生地の潤いと手順を支える。

それは、戦いではなく――参加型の静かな対話だった。

---

焼き上がったタルトを前に、ノブは目を細める。

「……甘すぎず、香りが残ってて、舌に引っかかりもない。
正直、自分一人じゃこの配合にはならなかったな。ありがとな、みんな」

3人の婚約者たちが、ほんの少しずつ目を伏せ、照れたように笑う。

誰かの“レシピ”に手を添えた午後。
それぞれの甘さが溶け合って、言葉のいらない時間が、今日も焼き上がった。

(次話へ続く)
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