スローライフに憧れる伝説の王子

猫の手も借りたいおじさん

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213話

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第二百十三話:「ただいまより、事情聴取を開始します」

セイオス王都・王城正門前。
旅を終えた馬車が帰還し、ノブとフィオナが並んで降り立ったその瞬間――
まるで見えない花の香りが風に乗ったように、“ふたりの空気”が明らかに変わっていた。

その様子を見つめていた者たちがいた。

---

◆ 察知した七つの視線

👑 アリシア・ルーシェ

「歩幅……一定。目線……隠さない。“旅で育った呼吸”と見て間違いないわ」

🧙‍♀️ セシリア・オルフェウス

「反応値……心拍低め、精神波安定。いえ、むしろ“安心領域で同調完了”……?」

🗡️ エルザ・ヴァルドルフ

「……あのノブが“無防備に傍らを許す”だと。これは即時確認が必要だな」

💰 カミラ・グランシュタイン

「帰ってきた段階で“並列認識”を形成してる……これ、戦略的にも感情的にも重大よ?」

🎭 エジンバラ・モンロー

「微細な変化の中に、“共有してきた距離の肯定”があるわ……ふむ、これは要記録」

🌾 リカ・ファルケン

「ふたりの間に……牧草の匂いのような、あたたかくて馴染んだ感じがありました!」

🏔️ エレン・ハウゼン

「……ノブ様が、フィオナさんの横に立つとき、足音が柔らかかった……です」

---

◆ 王城地下・非公式茶会【作戦名:帰還直後・温度確認会】

フィオナが通されたのは、王城地下にある白花のサロン。
だがそこには、偶然とは思えない面々がすでに集っていた。

──そして始まる、“お約束の事情聴取”。

アリシア(微笑):

「旅の感想からでいいわ。“心に残った風景”とか、“交わした沈黙”とか、“夜の空気”とか」

セシリア(素直に):「測定器より彼の観察記録が欲しいんです。とくに“傍らにいた時”の反応データを……!」

エルザ(うっすら警戒):「構えろ……始まったぞ……」

フィオナ(まっすぐ微笑む):「……静かな旅でした。ただそれだけ。けれど、“ただの隣”ではなかったと思いますわ」

その一言に、小さく戦慄が走る。

カミラ:「ただの隣、ではない。はい出ました、“相互干渉関係の成立宣言”」

エジンバラ:「構図としては完全に“戦後の再定義”ね……ああ、すでに何かが壊れて動き出している」

リカ(目を輝かせて):「素敵です~! 旅で仲良くなるのって、本当に本当に……こう、ぐっときます!」

エレン:「うぅ……聞いてるだけで、胸が……あったかくて、でもちょっぴり、苦しい……」

そしてセシリアがふと口を閉ざし、真剣な眼差しになる。

「……フィオナ。もしかして、あなた……“覚悟”したの?」

フィオナは一瞬だけ、視線をふせ、
そして“肯定の微笑み”だけを静かに置いた。

――次の瞬間。

エルザ:「あああっ……わたしも、あの戦場で覚悟してたのにっ……!」

セシリア:「あれは調査対象としての定着過程だったはずなのにぃ……!」

エジンバラ:「違うの……私の策略が遅かったわけでは……っ!」

全員:「被弾、確認。」

---

七人の婚約者たちが感じたのは、
“交わされた言葉”ではなく、
“交わさずとも伝わる何か”を知って帰ってきたふたりの変化だった。

女たちの会議は、けれどどこか優しい。
それは、本気で好きな相手が誰かと築いた時間を、真正面から認めたいと願う者たちの、静かな矜持でもあった。

(次話へ続く)
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