某勇者パーティに最も大事にするべき仲間について語ってみた件

ふくまめ

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迷子の迷子のお嬢さん?

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「おーい、まだかよ。薬草が生えてるって場所はよー。」
「黙って足動かしなさいよ!
 師匠の説明では、この先の洞窟に必要な薬草があるはずなんだから。」
「ユイさんはすっかりお師匠さんの弟子が板についたね。」

私、レイ、ウィルの3人は、師匠からのテストのため、今日は街の西側にある森に来ていた。
4人全員で来ると日々の収入の面で困る、ということで今回アレックスは街に残っている。

「まったく、何だってお前がついてくることになったんだよ。
 ろくに街から出たことないって言うし、今からでも街に戻った方がいいんじゃねぇか?」
「これは私たちが信頼できる人間かどうか試す、師匠からの試練なのよ?
 危ないところは他人に任せて、私だけ残って待つだけなんて、それこそ信用ならないじゃないの。」
「…その覚悟は立派かもしれねぇけどよ…。」

確かに、私は街の外に出た経験も戦いの心得もないけど。
だからって黙って待つなんてできないわ。
西の森はあまり大型の魔獣は確認されていないし、暗くなる前に済ませればそこまで危険ではないはずよ。
手早く済ませて、師匠に報告しに行かないと!

「あ、あれかな?おばあさんが言ってた洞窟って。」
「そうみたいね。師匠は洞窟内のそう深くないところに自生している薬草だって言ってたわ。」
「…意外と広いんだな。手分けして探すか。」

それらしき洞窟を発見すると、レイが内部を覗き込んで確認する。
入口はそう大きく見えないが、中は意外と広いようだ。
手分けして探してしまったほうが早く見つかるだろう。
各々松明を取り出して、地面や岩壁を照らしながら目的の薬草を探し始めた。

「えっと…、薬草の特徴は…。」

師匠から教えてもらった薬草の特徴を思い出しながら、見落とさないように丁寧に岩壁を照らしていく。
薬草とはいえ、蔓状の植物だということで、地面からだけでなく岩壁の隙間などにも生えるそうだ。
あちこち注意しなければならないのは、なかなかに疲れるわね…。

「…ふぅ。そう簡単には見つからないわね。ん?」

岩陰を覗き込んだ時、何か手に触れる感覚がある。これ、蜘蛛の巣だわ。
嫌だわ、何だか気色悪いし。早いところ外さないと。
…なかなか取れないわね。というか、どんどん絡まってない?
糸を照らそうと松明をかざす。

「…何これ。」

私が今まで見たことのある蜘蛛の糸は、目視できるかできないかという細い糸だ。
今私の腕に絡んでいる糸はその何倍もある太さをしている。
慌てて払おうにも、軽いわりに切れる様子もなく、かなりべたついている。

「気持ち悪い…!っ…!」

焦って振り払おうと格闘していると、ふと近くの岩壁に気配を感じた。
目を凝らすと、そこには蜘蛛が張り付いていた。
この蜘蛛の巣の主であろう、手の平サイズの蜘蛛が、何匹も。
彼らはこちらの様子を窺うように睨みつけている。どんどん数が増えている。
喉が塞がってしまったかのように、息が吸えない。声、が…出せない…。

「ユイさん!」
「!」

どれほど蜘蛛を見つめていただろうか。
背後からウィルが駆けつけて来てくれた。
松明をかざして蜘蛛を追い払う。
洞窟内では見ることのない強烈な光にさらされた蜘蛛は、悔しそうに暗闇に帰っていった。

「大丈夫?気がついたら結構深いところまで進んでたから、驚いたよ。…歩ける?」

どうやら薬草探しに意識が向きすぎて、思ったよりも洞窟の奥まで進んでしまっていたようだ。
ウィルがゆっくりと蜘蛛の糸を外しながら話しかけてくれるが、引きつるような呼吸をしながらコクコクと頷くことしかできなかった。
急かすことはないが、足早に洞窟の出口へと向かう。
出口にはすでにレイがいて、周囲を警戒してくれていた。

「大丈夫か?薬草は十分確保できてるぞ。」
「ありがとう。魔獣に遭遇しちゃったみたいで、このまま戻ろう。」
「おう、周りに敵影なし、行けるぞ。…あと帰るだけだからな、踏ん張れよ。」

震えが止まらない私を気遣いながらも、2人はてきぱきと街へと戻る道を確認していく。
安全を確保しながら、私が遅れないように様子を確認しながら進んでいく。

「…よし、街の門だよ。ユイさんよく頑張ったね。」
「うし、オレはこのままばあさんとこ行って、薬草渡してくる。
 お前らは先に戻ってろよ。」
「い、行く…。私も行く…!」
「…あと渡すだけだし、ゾロゾロ行くこたないぜ?」
「行くったら…!」
「レイ、行こう。一緒に行ったらすぐだよ。ね、ユイさん。」

やっと街に着いたが、仕事は師匠に薬草を渡して終了となるのだ。
まだ帰るわけにはいかない。最後までやり遂げたい。
師匠からのテスト。初めての仕事なんだから…!
その思いを汲んでくれたのか、少し渋りながらも2人は魔女の一撃まで着いていくことを認めてくれた。
震える足を叱咤しながら、師匠の下へと向かう。
大変なことを他に任せて、ただ待っているだけのお嬢さんでいるわけにはいかないのだ。
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