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愛してる
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ロランさんが見つけた本日のお宿は、ぱっと見は小屋。入口らしき部分には、申し訳程度にぼろきれが垂らされ、ぽっかり空いた穴は窓のつもりだろうか?だけどそんなことは全くにならない。なぜなら…。
「あー愛しのベッド!さいっこー!!」
「…おー…。」
「いやーそんなに喜んでもらえるなんて、俺様も最高の気分!」
人目もはばからず、持っていた荷物を放り投げてベッドへとダイブ。
あぁ、その柔らかな腕で私を抱きしめて離さないで…!
「ほどほどにしておけよ、子供じゃないんだから。」
「んなっ…!私は安心して休める環境が恋しかっただけなんです!野宿でも何とも思わない野蛮な人と一緒にしないでください!」
「はぁ…?それ俺のことか?」
「言われてるなぁギルよぉ。女の子ってのは繊細なもんなんだぜ?それこそ精巧に作られたガラス細工を扱うよりも丁寧に触れてあげないとな。」
「あ、ロランさんは、できることなら触らないでいただけると。」
「いやん辛辣!でも女の子には棘がある方が魅力的!メアリちゃんったら最高!」
「…お前本当に幸せそうでいいよな。」
くねくねと身もだえしているロランさんを呆れたように見ながら、ギルさんは敷かれた布に腰を下ろす。
そこではたと気づいた。
ここ、ベッド一つしかないじゃない。
「いやいやいや!まずいですよこれ!」
「何がだ?」
「何がって、これ!ベッド一つだけじゃないですか!ロランさん、三人で宿を探してるってことちゃんと話してますよね!?残りの二人はどうするんです!?…まさかこの布って…。」
「そ、ベッドはお一人様限定。もちろん三人で泊まりたいってことは説明済みね。あ!メアリちゃんが添い寝がご所望ってんなら俺様が…。」
「どうしましょうギルさん!」
「聞くこと聞いたら切り替え早いよね、メアリちゃん。」
これは由々しき事態。いくら疲れている状況とはいえ、私だけベッドを占領するなんて…!
「…こんな集落だ。まともにベッドがあるだけ奇跡的だろう。他の宿を探したところで、ここ以上の待遇は見込めないんじゃないか?」
「そんな…、でもこれじゃあ…。」
「ベッドはそのままお前が使ったらいい。旅に慣れていない分、しっかり休んだ方がいいだろう。」
「分かりました、ありがとうございます!」
「本当に切り替え早いな、お前。」
お二人がベッドを譲ってくださったので、ありがたく使わせていただくことにする。
いや、致し方なくですよ?だってこれは多数決ですから、多数決。
三人中二人から使うように勧められたらねぇ?それは従う他ないですから、えぇ。
トントン…
「ん?」
「誰だ?」
ベッドを堪能しようかと再び横になろうとしたとき、ふいに宿の入口から壁を叩く音がする。ここにはドアがないので、おそらくドアノックの代わりだろうとは思うが、いかんせん私たちを訪ねてくる人間に心当たりがないので互いに顔を見合わせる。
トントン…
そうこうしている間にも、叩く音は続いている。
「…追手かもしれない。」
「っ…!」
音をたてないように近寄ってきたギルさんが小声で告げる。背筋が凍る。
「…どうする、入り口は一つ。押し入られたらこの狭さじゃ不利だろ。」
「この程度の壁、壊して出ることはできるが…。」
「お前と一緒にすんな、この筋肉バカ!」
雰囲気を察したロランさんも、こちらに寄ってきて小声で作戦を立てる。この宿には隙間があるとはいえ、人が通れるような間隔はさすがにない。正面にいる何者かに気付かれないうちに裏側から逃げるというのは困難。
「…仕方ねぇ、俺様が出て何とかごまかしてみるか。もし無理だったら…。」
「お前を人質にして切り抜ける。」
「それで何とかなるかぁ!?もー、頼むぞホント…。」
「任せろ。」
「その返事にどれだけ信頼があるか…。」
トントントン…
「すみません…。」
「はいはーい、今行きまー…ん?」
再三のノックとともに聞こえた声に、私たち三人は再び顔を見合わせる。先ほどまで険しかった表情のギルさんも、困惑している様子だ。
今の声って、
「子供…?」
「あー愛しのベッド!さいっこー!!」
「…おー…。」
「いやーそんなに喜んでもらえるなんて、俺様も最高の気分!」
人目もはばからず、持っていた荷物を放り投げてベッドへとダイブ。
あぁ、その柔らかな腕で私を抱きしめて離さないで…!
「ほどほどにしておけよ、子供じゃないんだから。」
「んなっ…!私は安心して休める環境が恋しかっただけなんです!野宿でも何とも思わない野蛮な人と一緒にしないでください!」
「はぁ…?それ俺のことか?」
「言われてるなぁギルよぉ。女の子ってのは繊細なもんなんだぜ?それこそ精巧に作られたガラス細工を扱うよりも丁寧に触れてあげないとな。」
「あ、ロランさんは、できることなら触らないでいただけると。」
「いやん辛辣!でも女の子には棘がある方が魅力的!メアリちゃんったら最高!」
「…お前本当に幸せそうでいいよな。」
くねくねと身もだえしているロランさんを呆れたように見ながら、ギルさんは敷かれた布に腰を下ろす。
そこではたと気づいた。
ここ、ベッド一つしかないじゃない。
「いやいやいや!まずいですよこれ!」
「何がだ?」
「何がって、これ!ベッド一つだけじゃないですか!ロランさん、三人で宿を探してるってことちゃんと話してますよね!?残りの二人はどうするんです!?…まさかこの布って…。」
「そ、ベッドはお一人様限定。もちろん三人で泊まりたいってことは説明済みね。あ!メアリちゃんが添い寝がご所望ってんなら俺様が…。」
「どうしましょうギルさん!」
「聞くこと聞いたら切り替え早いよね、メアリちゃん。」
これは由々しき事態。いくら疲れている状況とはいえ、私だけベッドを占領するなんて…!
「…こんな集落だ。まともにベッドがあるだけ奇跡的だろう。他の宿を探したところで、ここ以上の待遇は見込めないんじゃないか?」
「そんな…、でもこれじゃあ…。」
「ベッドはそのままお前が使ったらいい。旅に慣れていない分、しっかり休んだ方がいいだろう。」
「分かりました、ありがとうございます!」
「本当に切り替え早いな、お前。」
お二人がベッドを譲ってくださったので、ありがたく使わせていただくことにする。
いや、致し方なくですよ?だってこれは多数決ですから、多数決。
三人中二人から使うように勧められたらねぇ?それは従う他ないですから、えぇ。
トントン…
「ん?」
「誰だ?」
ベッドを堪能しようかと再び横になろうとしたとき、ふいに宿の入口から壁を叩く音がする。ここにはドアがないので、おそらくドアノックの代わりだろうとは思うが、いかんせん私たちを訪ねてくる人間に心当たりがないので互いに顔を見合わせる。
トントン…
そうこうしている間にも、叩く音は続いている。
「…追手かもしれない。」
「っ…!」
音をたてないように近寄ってきたギルさんが小声で告げる。背筋が凍る。
「…どうする、入り口は一つ。押し入られたらこの狭さじゃ不利だろ。」
「この程度の壁、壊して出ることはできるが…。」
「お前と一緒にすんな、この筋肉バカ!」
雰囲気を察したロランさんも、こちらに寄ってきて小声で作戦を立てる。この宿には隙間があるとはいえ、人が通れるような間隔はさすがにない。正面にいる何者かに気付かれないうちに裏側から逃げるというのは困難。
「…仕方ねぇ、俺様が出て何とかごまかしてみるか。もし無理だったら…。」
「お前を人質にして切り抜ける。」
「それで何とかなるかぁ!?もー、頼むぞホント…。」
「任せろ。」
「その返事にどれだけ信頼があるか…。」
トントントン…
「すみません…。」
「はいはーい、今行きまー…ん?」
再三のノックとともに聞こえた声に、私たち三人は再び顔を見合わせる。先ほどまで険しかった表情のギルさんも、困惑している様子だ。
今の声って、
「子供…?」
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