23 / 33
人類の進歩②
しおりを挟む
「…とにかく、ここでの宿を探さないとなぁ。」
「…はい。」
「…。」
ここで立ち止まっていても、何も始まらない。町の入口で立ち尽くしている三人組、というだけでも悪目立ちしてしまいそうだが、それがなさそうなほど人通りがない。誰が私たちを見ているのかと、開き直ってしまいそうになる。
町の中に足を踏み入れるが、見れば見るほど閑散としている。元の姿を知ってしまっているだけに、この静けさは悲しく、不気味だった。
「…メアリちゃん、ショックを受けているとこ悪いんだけど、前に来た時に泊まった宿泊施設なんて、覚えてたりしないかな?」
「以前は薬品を研究されている方のご厚意で、その方のお宅や研究施設にお邪魔していたので…。」
「あーそっかー、そういうこともあるのね。」
「…それに、この様子だとまともに宿屋も営業しているか…。」
「うーん…。」
薬の町だというのに、相場の値段の数倍で売買されている内容の看板を思い出し、肩を落とす。もし宿屋が開いていたとしても、そこがまともな営業をしているとは考えにくい。薬同様、宿代が跳ね上がっているか、宿の環境が劣悪か…。とにかく、一般的な利用は難しいだろう。この町の状況からして、兵士が駐屯していなさそうなことも違和感が残るが、それは自由に行動できるから良しとしよう。治安の面では心配だが、私たちのような犯罪者扱いを受けている人間にしてみれば好都合でもある。もしかしたら、すでに廃墟同然のような町になってしまっているから駐屯する必要なし、ということなのだろうか。
どういう状況であれこの様子では、思い出の町であるとはいえ、滞在することはできないかもしれない。そう思ったが…。
「じゃあ、その時世話になった人間を訪ねてみればいいんじゃないか?」
「え?」
「は?」
「この町がどう扱われているのかは今のところ分からないが、もし当時の人間が残っているとしたら、俺たちと違って戦犯として手配されなかったということだろう。上手く立ち回れたということだ。話を聞けるのなら、今後の行動の指針になるかもしれない。」
「そっか…そっか、なるほど!でしたら、案内できます。その時お世話になった方のお宅、覚えてます!」
当時の思い出がよみがえる。まだ幼かった私は、大した手伝いができるわけでもなかったが両親にくっついて施設内を巡っていた。私はそれで充分楽しかったのだが、小さな子にはつまらないだろうと可愛がってくれた研究者の方々がいたのだ。その中でも、私たち一家を自宅に招待してくださった方がいた。ロロ、というこの町でも名の知れた研究者で、私はおじさんと呼んで慕っていた。おじさんも、薬の話ばかりで飽きないように私を気にかけてくれた。
もしかしたらおじさんは、まだこの町に…。
「…おいギル。この状況で町にいる人間なんざ、まともなわけねぇだろ。」
「分かっている。」
「だったら何でわざわざメアリちゃんが傷つきそうなことすんだよ。子供の頃に世話になった人間が、とんでもなく堕落してたらショックだろが!」
「この町の光景だけであの様子だからな…。だが万が一彼女の味方になってくれるなら儲けもの。すでに身柄を拘束されていて空き家だったら、一時的にでも滞在する宿として場所を拝借できる。」
「…もしやべー奴になってそこで生活してたら?」
「答えは決まっているな。」
「お前ってば、ホントに逞しいよ…。」
先導する私の後ろで、二人はこそこそと何やら話し合っていた。正直、知り合いに会えるかもしれないという期待で少なからず舞い上がっていた私には、その内容は全く聞き取れていなかった。
「…はい。」
「…。」
ここで立ち止まっていても、何も始まらない。町の入口で立ち尽くしている三人組、というだけでも悪目立ちしてしまいそうだが、それがなさそうなほど人通りがない。誰が私たちを見ているのかと、開き直ってしまいそうになる。
町の中に足を踏み入れるが、見れば見るほど閑散としている。元の姿を知ってしまっているだけに、この静けさは悲しく、不気味だった。
「…メアリちゃん、ショックを受けているとこ悪いんだけど、前に来た時に泊まった宿泊施設なんて、覚えてたりしないかな?」
「以前は薬品を研究されている方のご厚意で、その方のお宅や研究施設にお邪魔していたので…。」
「あーそっかー、そういうこともあるのね。」
「…それに、この様子だとまともに宿屋も営業しているか…。」
「うーん…。」
薬の町だというのに、相場の値段の数倍で売買されている内容の看板を思い出し、肩を落とす。もし宿屋が開いていたとしても、そこがまともな営業をしているとは考えにくい。薬同様、宿代が跳ね上がっているか、宿の環境が劣悪か…。とにかく、一般的な利用は難しいだろう。この町の状況からして、兵士が駐屯していなさそうなことも違和感が残るが、それは自由に行動できるから良しとしよう。治安の面では心配だが、私たちのような犯罪者扱いを受けている人間にしてみれば好都合でもある。もしかしたら、すでに廃墟同然のような町になってしまっているから駐屯する必要なし、ということなのだろうか。
どういう状況であれこの様子では、思い出の町であるとはいえ、滞在することはできないかもしれない。そう思ったが…。
「じゃあ、その時世話になった人間を訪ねてみればいいんじゃないか?」
「え?」
「は?」
「この町がどう扱われているのかは今のところ分からないが、もし当時の人間が残っているとしたら、俺たちと違って戦犯として手配されなかったということだろう。上手く立ち回れたということだ。話を聞けるのなら、今後の行動の指針になるかもしれない。」
「そっか…そっか、なるほど!でしたら、案内できます。その時お世話になった方のお宅、覚えてます!」
当時の思い出がよみがえる。まだ幼かった私は、大した手伝いができるわけでもなかったが両親にくっついて施設内を巡っていた。私はそれで充分楽しかったのだが、小さな子にはつまらないだろうと可愛がってくれた研究者の方々がいたのだ。その中でも、私たち一家を自宅に招待してくださった方がいた。ロロ、というこの町でも名の知れた研究者で、私はおじさんと呼んで慕っていた。おじさんも、薬の話ばかりで飽きないように私を気にかけてくれた。
もしかしたらおじさんは、まだこの町に…。
「…おいギル。この状況で町にいる人間なんざ、まともなわけねぇだろ。」
「分かっている。」
「だったら何でわざわざメアリちゃんが傷つきそうなことすんだよ。子供の頃に世話になった人間が、とんでもなく堕落してたらショックだろが!」
「この町の光景だけであの様子だからな…。だが万が一彼女の味方になってくれるなら儲けもの。すでに身柄を拘束されていて空き家だったら、一時的にでも滞在する宿として場所を拝借できる。」
「…もしやべー奴になってそこで生活してたら?」
「答えは決まっているな。」
「お前ってば、ホントに逞しいよ…。」
先導する私の後ろで、二人はこそこそと何やら話し合っていた。正直、知り合いに会えるかもしれないという期待で少なからず舞い上がっていた私には、その内容は全く聞き取れていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる