某勇 ~一方その頃、編~

ふくまめ

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じゃじゃ馬娘の嫁入り➁

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「まぁそんなこと言っても始まらねぇわな!預かったもんは責任もって届けるからよ、兄ちゃん。」
「あぁ、よろしく頼むぜ。」

カランカラン

「いらっしゃい!お、嬢ちゃんじゃねぇか。お使いか?」
「こんにちは。」

世の中上手くいくことばかりではないようだが、目的は果たしたので帰ろうと入口に向かう。するとオレが扉を開ける前に勝手に開いた。どうやら新しい客が来たようだ。大して広くはない入口のため、相手に譲ろうと道を開けて待つ。扉の向こうに立っていたのは、先ほどギルドの掲示板の前に立っていた、あの少女だった。

「今日の用事は何だって?」
「おじさん、今日はお使いで来たんじゃないの。アタシ、お父さんと新しい商売について話し合ってて、情報が欲しくてここに聞きに来たの。」
「ほう!嬢ちゃんもそんなことを考える年頃になったか!いやーあんなに娘にデレデレな親父さんが、よく許してくれたなぁ。」
「お、お父さんのことは良いから…!んん、アタシね、お婿さん探しをしたいの。いい人知らない?」
「えぇ!?」

どんな話の流れで新しい商売から婿探しに繋がるのか知らないが、オレの勘が告げている。これは巻き込まれたら面倒なことになる。さっさと帰ろう。そう思って気配を消して帰ろうとするが、不意に腕を捕まれる。その先にいたのは半べそ状態のおっちゃんだった。

「兄ちゃん、ちょちょっと、ちょっと待ってくれ!頼む!」
「何だよ、オレに関係ないだろおっちゃん!その子の相談に乗ってやってくれよ、じゃ!」
「あんた何でも屋だろ!?人探しだってお手のもんだろ!」

そういうわけでもないし、何でも屋じゃなくてギルド…もういいや。泣きっ面のおっちゃんを見てても気分悪いし、話だけでも一緒に聞いてやるか…。

「あなたは…。」
「嬢ちゃん、さっきギルドの前にいただろ。もしかして、この話を相談するためにいたのか。」
「そのつもり、だったんですけど…。依頼したらあの掲示板に張り出されるんですよね?それはちょっと…。」
「…確かに。」
「街中に嬢ちゃんが婿探ししてるなんて知れ渡ったら…!親父さんどんな手段に出るか!」

考えるだけでも恐ろしい!と自分の体を抱きしめて震えるおっちゃんの反応を見て、何やらただ事じゃないと嫌な予感が強くなる。

「そんな大げさな…。」
「大げさな話なんかじゃないよ!あの親父さん、これでもかってくらい家族愛が強いからね、それはもう…!」
「分かった分かった。とにかく、話を確認するぞ。何だって婿探しすんだ?見たところ、そんな歳ごろにゃ見えねぇがな。」
「女性に年齢の話なんて失礼じゃないですか?…まぁ確かにアタシは14歳で、結婚なんてまだ早いと思うけど。」
「何か理由があるってのか?」
「そうだぞ、考え直すんだ嬢ちゃん!きっと素敵な相手が見つかるから、やめときな!」
「そうはいかないの!これはアタシが考える商売に必要なことなんだから!」
「…その、結婚と商売にどうつながるんだ?いまいち話か見えねぇんだが。」
「よくぞ聞いてくれました!アタシが考える新しい商売の形、説明するから是非聞いてちょうだい!」

嬉々として下げていたカバンを漁りだす少女。あ、これは長くなるな、と思うと同時に逃げるタイミングを本格的に失ってしまったことに気がついた。
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