脳内殺人

ふくまめ

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消滅しろ、ハラスメント野郎③

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「は?」

この猫らしき存在自体にも混乱しているというのに、そこにぶち込まれた「夢の世界」なんて情報で思考が完全に停止する。
夢って…ここが?どう見たって会社じゃない。

「聞こえなかった?その耳は飾り?ここは、アンタの、夢なんだってば!」
「き、聞こえてる聞こえてる!…でも、理解ができないっていうか…。」
「まぁ確かにね。でもそうなのよ。安田と二人っきりで仕事なんて、現実であったら早退するレベル。…夢でも遭遇したくないシチュエーション、ではあるけれど。」
「完全に同意。」

くだらないギャグに適当に相槌を打ちながらの仕事なんて、考えただけで体調を崩しそうだ。

「…百歩譲って夢だとして、何で?」
「明晰夢って聞いたことない?今のアンタはその状態ってこと。現実世界で何か問題を抱えてて、それを何とか解決しようとしている、ってところかしら。」

明晰夢。自身が夢を見ていると自覚をしたうえで、夢の内容を自分の思い通りに操作することができる状態、だったか…。これまでそんな経験をしたことがないため、なかなか信じられない。第一、ここが夢の世界であることを信じ切れていないのは、明晰夢として該当するかどうか。
とはいえ、現実世界としても受け入れがたいことも事実。このしゃべる猫?の存在もあることだし、夢だって言われた方がまだ納得はできそう…。

「しゃべる猫だなんて、適当な呼び方しないでくれる?」
「あ、えっと、すみません…?」

じゃあ何と呼べばいいのだろうか。

「何でもいい、と言いたいところだけどアンタのセンスだとどんな呼び方が飛び出すか。そうね…ペルソナって呼んでちょうだい。」
「ペルソナ…仮面?」
「あら分かるの。」
「ゲームで覚えた。」
「オタクってことね。好きなことがあるのはいいことだと思うわ。」
「…どうも。でも長いから、ペルでいい?」
「好きにしたらいいわ。」

だったら私に考えさせてくれてもよかったんじゃないか。

「アンタのセンスじゃ不安が残るって言ってんのよ。確認がてら、アタシの名前の候補ってあったの?」
「うーん…。」
「却下。」
「まだ何も言ってない。」
「言わなくてもよくないネーミングの雰囲気があった。だから却下。」

この理不尽極まりない先読みも、夢の中だからで済まされる問題なのだろうか。そうだなぁ…おしゃべりする猫だから、『しゃべねこ』なんてどうだろうか。

「…まぁ、本人がいいようにするのが一番だよね、うん。」
「何一人でぶつぶつ言ってるの、夢の中だからって不気味よ。」
「もう少し言い方ってものがあるのでは?」

ペルから飛び出すキレキレの言葉たちに不満を覚えながらも、とりあえずと自分の席に着く。明らかに異様なやり取りをしている私たちには目もくれず、安田はデスクに向かって仕事を続けている。

「…これ、私の夢の中って、本当のことなの?」
「そうよ。ここはアンタの夢。夢の中でも職場に出勤なんて、アンタ真面目ねぇ。」

ぴょんと行儀悪く私のデスクの上に飛び乗り、ペルは答えた。ふわふわの白い毛並みを見るに、汚れているような印象は受けないが、土足で家に上がるような真似はやめていただきたい。

「真面目って、そんなわけないでしょ。それが原因で私の夢の中だって信じられないんだから。」
「そう言われてもねぇ。そうだ、何か想像してごらんなさいよ。アンタが想像した通りのことが起きたら、さすがに信じるしかないでしょ?」
「そうだけど…想像って何を?」
「何でもいいのよ。それこそ、現実じゃ起こりえないようなことを想像してみたらいいわ。せっかくなんだし。」

せっかく、かどうかは分からないが、確かに現実味がないことが起きたらここが夢である動かぬ証拠になるだろう。とはいえ、何を想像したらいいのか…。

「じれったいわねぇ。何でもいいんだったら。ほら、ちょうどいいところにアンタの同僚がいるじゃない?普段言えないことやできないことがあるんだったら、ここでやってみたらいいのよ。」
「え…いいのかな。」
「いいのよ。なんたってここは夢の世界。何をするのもしないのも、アンタの自由。どうなったって、どうもなりはしないのよ。」

よく分からないが、ペルに言われた通りに安田に向かって意識を集中させてみた。
その瞬間、安田が窓を突き破って外へと飛び出していった。

「ホームラン!!」

ペルがくるくる回りながらジャンプして大盛り上がりしている。
そんなこと言ってる場合か。
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