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沈め、お局②
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至福の空間から地獄の職場風景へ。以前の安田と同じように、オフィスにいるのは私とペルだけ。
そして…。
ガチャ
「あら、菓子さん。珍しいわね、私より早いなんて。」
「えぇ、まぁ。」
やってきたのは大久保さん。といっても、そんな風に想像したのは私だから、何の驚きもないんだけど。少し不思議そうな表情をしながらも、自身の席に向かう大久保さん。しかしそのまま席に着くことはない。荷物を置いたお局様が早々に向かう先は、給湯室。
「…はぁー、まったく!」
「何かしら?」
「いつも通り、ポットのお湯がないことにイラついているんでしょ。」
「念入りな想像だこと。」
「ちょっと菓子さん!」
「はいはい。」
給湯室へと姿を消して数秒。すぐさま大久保さんの憤りが聞こえる。ここも想像通り。お局様の朝は忙しい。出勤早々給湯室のポットの確認から始まる。何事もなければいいのだが、前日最後に使って人が確認し損ねて帰ってしまっていると、朝のチェックに引っかかるわけだ。
そうでなくとも、出勤早々にカフェオレなんかを入れて大量に消費してしまう場合もあるわけだが。
「菓子さん、このポットを見て。」
「…空ですね。」
「そう、空。何で空なのかしら?最後に使った人は、次に使う人がいることを考えていないのかしら?それとも、このポットはその人専用なのかしら?いつから?私が知らない間に、そんなことになっていたの?菓子さん、この状況についてどう思う?」
「最後の人がどう思っていたかはわかりませんね、私が最後に使ったわけではないので。」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
給湯室からポットを持ち出し、私の眼前に突きつけるお局様。彼女の言うように確認すると、確かにその中身は空っぽ。お湯が少ないとかじゃすまないくらい、中がすっかり乾燥してしまっているくらいすっからかんだ。
その状況も、すべて私が想像したものだが。
事実として状況をお伝えしたつもりなのだが、お局様は私のその態度が相当気に入らなかったのか、唾を飛ばす勢いで怒鳴ってきた。現実では見たこともなので、完全に私の想像の域を出ない大久保さんの姿。
「私が言いたいのは!なんでみんな空っぽのままにして、平気な顔して放っておけるのか、次に使う人のことを慮るその気持ちがないのかってことなのよ!気遣いとか、配慮とか、そんなことが何でできないの!!」
「…おぉ…。」
自分で想像した状況であるはずのなのだが、その勢いに圧倒されるように仰け反る。その分もさらに詰め寄ってくる勢いに、ちょっとやりすぎたかなーと反省。
私の考えを反映したかのように、フゥフゥと息を切らしていた大久保さんがスッと静かに語りだした。
「…私はね、皆が心地よく過ごせるようにしたいだけなの。そのためには、皆の協力が必要なだけ。分かるでしょ?皆だって心地よい環境にいたいでしょ、そのために皆で配慮しあうものでしょ。」
「…。」
「私、おかしいこと言ってる?」
大久保さんの言っていることは、決して間違いではないと思う。実際大久保さんのおかげでオフィス内の設備は整えられている。コピーをいくらとっても、紙を入れるように表示が出ることはない。仕事が忙しくなっても、オフィス内は整理整頓されて仕事をしやすい。
だが、そこで生まれる心地よさ以上に、お局様による指摘によって生まれるストレスの方が上回ってしまっている。
「大久保さん、いつもありがとうございます。でも、私たちはいつそれをお願いしたんでしょうか。」
大久保さんは静かに私を見つめていた。
そして…。
ガチャ
「あら、菓子さん。珍しいわね、私より早いなんて。」
「えぇ、まぁ。」
やってきたのは大久保さん。といっても、そんな風に想像したのは私だから、何の驚きもないんだけど。少し不思議そうな表情をしながらも、自身の席に向かう大久保さん。しかしそのまま席に着くことはない。荷物を置いたお局様が早々に向かう先は、給湯室。
「…はぁー、まったく!」
「何かしら?」
「いつも通り、ポットのお湯がないことにイラついているんでしょ。」
「念入りな想像だこと。」
「ちょっと菓子さん!」
「はいはい。」
給湯室へと姿を消して数秒。すぐさま大久保さんの憤りが聞こえる。ここも想像通り。お局様の朝は忙しい。出勤早々給湯室のポットの確認から始まる。何事もなければいいのだが、前日最後に使って人が確認し損ねて帰ってしまっていると、朝のチェックに引っかかるわけだ。
そうでなくとも、出勤早々にカフェオレなんかを入れて大量に消費してしまう場合もあるわけだが。
「菓子さん、このポットを見て。」
「…空ですね。」
「そう、空。何で空なのかしら?最後に使った人は、次に使う人がいることを考えていないのかしら?それとも、このポットはその人専用なのかしら?いつから?私が知らない間に、そんなことになっていたの?菓子さん、この状況についてどう思う?」
「最後の人がどう思っていたかはわかりませんね、私が最後に使ったわけではないので。」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
給湯室からポットを持ち出し、私の眼前に突きつけるお局様。彼女の言うように確認すると、確かにその中身は空っぽ。お湯が少ないとかじゃすまないくらい、中がすっかり乾燥してしまっているくらいすっからかんだ。
その状況も、すべて私が想像したものだが。
事実として状況をお伝えしたつもりなのだが、お局様は私のその態度が相当気に入らなかったのか、唾を飛ばす勢いで怒鳴ってきた。現実では見たこともなので、完全に私の想像の域を出ない大久保さんの姿。
「私が言いたいのは!なんでみんな空っぽのままにして、平気な顔して放っておけるのか、次に使う人のことを慮るその気持ちがないのかってことなのよ!気遣いとか、配慮とか、そんなことが何でできないの!!」
「…おぉ…。」
自分で想像した状況であるはずのなのだが、その勢いに圧倒されるように仰け反る。その分もさらに詰め寄ってくる勢いに、ちょっとやりすぎたかなーと反省。
私の考えを反映したかのように、フゥフゥと息を切らしていた大久保さんがスッと静かに語りだした。
「…私はね、皆が心地よく過ごせるようにしたいだけなの。そのためには、皆の協力が必要なだけ。分かるでしょ?皆だって心地よい環境にいたいでしょ、そのために皆で配慮しあうものでしょ。」
「…。」
「私、おかしいこと言ってる?」
大久保さんの言っていることは、決して間違いではないと思う。実際大久保さんのおかげでオフィス内の設備は整えられている。コピーをいくらとっても、紙を入れるように表示が出ることはない。仕事が忙しくなっても、オフィス内は整理整頓されて仕事をしやすい。
だが、そこで生まれる心地よさ以上に、お局様による指摘によって生まれるストレスの方が上回ってしまっている。
「大久保さん、いつもありがとうございます。でも、私たちはいつそれをお願いしたんでしょうか。」
大久保さんは静かに私を見つめていた。
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