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冒険気分
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普段通り家事をして、出かける準備をする。新島さんはもう見慣れたスーツ姿ですでに準備万端なようだ。…軽く化粧もしているのか、化粧品のいかにも人工的な甘い匂いがする。
「…じゃあ、もう出るけど。」
「はい!よろしくお願いします!」
「…はいはい。」
出発前の最終確認のために声をかけると、ずいぶんと気合の入った返事が返ってくる。部屋にしっかりと鍵をかけ、まずは駅へと向かうバスに乗ろうとバス停を目指す。新島さんの姿だけを見ると、これからいかにも職場に出勤するような恰好をしている。一方俺は知り合いに会いに行くだけなので、結構ラフな格好。ちぐはぐな感じが否めないが、新島さんはそんなことよりも周りを歩いている人間の中にちらほらと獣人が混ざっていることの方が気になっているようだ。ウサギの獣人と連れ立ったカップル、子猫の獣人にクレープを渡している羊の獣人、人間のストリートミュージシャンの歌を立ち止まって聞いている鳥の獣人。俺にとっては何の変哲もない光景だが、新島さんはきょろきょろと忙しなく視線を巡らせている。
バス停に着くとほどなくして目的のバスが到着する。乗り込んでみるとそこまで混んでいないようで、座る席は問題なさそうだ。当然ながら、人間も獣人も関係なくこのバスに乗りあっている。新島さんを窓際の席に促し、俺はその隣の通路側に席に腰を下ろした。改めて新島さんの様子を確認すると、若干の緊張を感じる。
「…このバスで最寄り駅まで行くから。」
「…うん。」
新島さんは一通り車内を確認したかと思うと、ゆっくりと動き出した景色に視線を向けた。獣人を見たことがないという新島さんに、この世界はどう見えているのだろうか。
バスは時折止まり、乗客が増えたり減ったりしながら目的の駅へと到着した。結局最後まで外を眺め続けていた新島さんに到着したことを伝え、バスを降りる。駅前ということもあり、さらに増えた人通りに新島さんはまたきょろきょろと視線が行ったり来たり。少し子供のように見えたことは本人に言わない方がいいだろう。
「…新島さん、こっち。」
「あ、はいはい。」
改札に向かいながらスマホを取り出す。行先までの料金を支払うために翳そうとしているのを察したのか、新島さんも手慣れたように取り出す。新島さんもその習慣はあるのか。このまま何の問題もなく乗れそうだな、と思った瞬間新島さんの足が止まる。
「あ!」
「どうした?」
「…あぁ~…。」
「…何。」
振り返ると新島さんは頭を押さえて項垂れ、小さく「忘れてた。」と呟いた。そのまま新島さんはスマホの画面を俺に向かって差し出してくる。不思議に思いながらも、促されるまま画面をのぞき込む。可愛い子猫がじゃれあっている写真が待ち受けに設定されているのは分かったが、新島さんがダウンロードしたであろうアプリと思われる何かが表示されている。「何か」と言わざるを得ないのは、アイコンの大部分が崩れて何を模しているか分からなくなっているからである。その下に小さく表示されている文字らしき部分も、読めないほど崩れてしまっている。日時に関しては正しく表示されているので、余計に違和感がぬぐえない。自分が分からないだけで、もともとそのようなデザインなのかもしれないが…。どうなっているのかと新島さんに視線を移すと、深いため息をつきながら新島さんは説明し始める。
「いろいろ確認している時にスマホも見てみたんだけど、ほとんどが文字化けしちゃってて…。アプリの配置は変わってないと思って電話帳らしきアプリも開いてみたんだけど、中身はぐちゃぐちゃ。日にちも時間も正しく表示されてるし、動作自体は問題なさそうなんだけど…。」
「はぁ…。」
「メモ帳も新しく書き込む分には大丈夫だったかな。あ、あとアラーム機能も。」
「…ということは?」
「…メモ機能付きの時計、って感じ?」
「不便そうだな。」
とりあえず行先までの乗車券を二人分買いに歩き出した。
「…じゃあ、もう出るけど。」
「はい!よろしくお願いします!」
「…はいはい。」
出発前の最終確認のために声をかけると、ずいぶんと気合の入った返事が返ってくる。部屋にしっかりと鍵をかけ、まずは駅へと向かうバスに乗ろうとバス停を目指す。新島さんの姿だけを見ると、これからいかにも職場に出勤するような恰好をしている。一方俺は知り合いに会いに行くだけなので、結構ラフな格好。ちぐはぐな感じが否めないが、新島さんはそんなことよりも周りを歩いている人間の中にちらほらと獣人が混ざっていることの方が気になっているようだ。ウサギの獣人と連れ立ったカップル、子猫の獣人にクレープを渡している羊の獣人、人間のストリートミュージシャンの歌を立ち止まって聞いている鳥の獣人。俺にとっては何の変哲もない光景だが、新島さんはきょろきょろと忙しなく視線を巡らせている。
バス停に着くとほどなくして目的のバスが到着する。乗り込んでみるとそこまで混んでいないようで、座る席は問題なさそうだ。当然ながら、人間も獣人も関係なくこのバスに乗りあっている。新島さんを窓際の席に促し、俺はその隣の通路側に席に腰を下ろした。改めて新島さんの様子を確認すると、若干の緊張を感じる。
「…このバスで最寄り駅まで行くから。」
「…うん。」
新島さんは一通り車内を確認したかと思うと、ゆっくりと動き出した景色に視線を向けた。獣人を見たことがないという新島さんに、この世界はどう見えているのだろうか。
バスは時折止まり、乗客が増えたり減ったりしながら目的の駅へと到着した。結局最後まで外を眺め続けていた新島さんに到着したことを伝え、バスを降りる。駅前ということもあり、さらに増えた人通りに新島さんはまたきょろきょろと視線が行ったり来たり。少し子供のように見えたことは本人に言わない方がいいだろう。
「…新島さん、こっち。」
「あ、はいはい。」
改札に向かいながらスマホを取り出す。行先までの料金を支払うために翳そうとしているのを察したのか、新島さんも手慣れたように取り出す。新島さんもその習慣はあるのか。このまま何の問題もなく乗れそうだな、と思った瞬間新島さんの足が止まる。
「あ!」
「どうした?」
「…あぁ~…。」
「…何。」
振り返ると新島さんは頭を押さえて項垂れ、小さく「忘れてた。」と呟いた。そのまま新島さんはスマホの画面を俺に向かって差し出してくる。不思議に思いながらも、促されるまま画面をのぞき込む。可愛い子猫がじゃれあっている写真が待ち受けに設定されているのは分かったが、新島さんがダウンロードしたであろうアプリと思われる何かが表示されている。「何か」と言わざるを得ないのは、アイコンの大部分が崩れて何を模しているか分からなくなっているからである。その下に小さく表示されている文字らしき部分も、読めないほど崩れてしまっている。日時に関しては正しく表示されているので、余計に違和感がぬぐえない。自分が分からないだけで、もともとそのようなデザインなのかもしれないが…。どうなっているのかと新島さんに視線を移すと、深いため息をつきながら新島さんは説明し始める。
「いろいろ確認している時にスマホも見てみたんだけど、ほとんどが文字化けしちゃってて…。アプリの配置は変わってないと思って電話帳らしきアプリも開いてみたんだけど、中身はぐちゃぐちゃ。日にちも時間も正しく表示されてるし、動作自体は問題なさそうなんだけど…。」
「はぁ…。」
「メモ帳も新しく書き込む分には大丈夫だったかな。あ、あとアラーム機能も。」
「…ということは?」
「…メモ機能付きの時計、って感じ?」
「不便そうだな。」
とりあえず行先までの乗車券を二人分買いに歩き出した。
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