36 / 46
【11話】 conflict
しおりを挟む
出来上がった雑誌が家に届いたのは、撮影から二週間後のことだった。この短期間でよく今月号の発売日に間に合ったなと、啓介は感心しながらページを捲る。どうやら他のページは既に校了作業に入っていたらしく、あの日撮った写真だけをレイアウト通りに流し込んだらしい。
届いた雑誌を自室のベッドの上でいつものように眺めていた啓介は、真ん中あたりのページに差し掛かった瞬間、声にならない声をあげた。驚き過ぎて思わず手を離してしまい、仰向けに寝転んだ状態の顔の上に勢いよく雑誌が落ちる。
「痛っ!」
痛みと驚きで混乱し、暫く雑誌を顔の上に乗せたままの状態で固まった。
永遠と快と三人で撮った写真が載っていると言う事はもちろん予想していたが、しかし今見たのは一体何だ。
恐る恐る雑誌を拾いあげ、呼吸を整え再びページを開く。
そこには啓介一人で撮った写真が、一ページまるまる使って大きく掲載されていた。挑むような強い目線で、口元には薄っすら笑みを浮かべている。それはまるでアートフォトのような仕上がりで、客観的に見たらとても良い写真だった。ただ、それが自分自身となると、途端に羞恥に苛まれる。
「なんでぇ? あれってカメラに慣れるための、試し撮りだったんじゃないの?」
上ずった声で不満を並べ立てていると、丁度よく倉持からの着信があった。素早く電話を取り、相手が話し出す前に「ねぇ、どういうコト?」と文句をぶつける。
『お疲れ様です……って、ええ? どうしました』
「僕、あの写真使うって聞いてないんだけど」
『いえいえ、バッチリ了承してくれたじゃないですか。撮影直後に加勢さんに聞かれて、「好きにしていいよ」って言ったの、覚えてません?』
そう言われて記憶をたどる。撮影直後、アドレナリンが過剰分泌されていた時に、確かにそんなことを言ったような気もする。啓介は唸りながら「でもあんなにおっきく載ると思わなかった」と拗ねたような声色を出した。
『まぁ、そうおっしゃらずに。前代未聞の待遇ですよ、新人が一ページ丸ごと独占だなんて。リューレントで他にあんな風に写真を使って貰えるの、南野さんかエレナさんくらいですからね。それに、何より本当に素晴らしい出来映えでした』
姿が見えていなくても、倉持が上機嫌だということがわかった。その倉持の背後で「凄い、凄い」とはしゃぐ永遠の声もする。
「永遠も一緒なんだ」
『ええ、これから永遠がイメージモデルを務めているブランドの広告撮りがありまして』
「広告撮り? 永遠ってブレイバーの専属じゃないの?」
啓介の問いに、倉持は「そうですよ」と朗らかに答える。
『雑誌のモデルとしてはブレイバー専属ですが、雑誌以外なら他にも仕事は色々出来ます。ブランドの広告塔や、コマーシャルとか。梅田くんが望むなら、ドラマ出演なんかも可能です。気合入れて仕事取ってきますよ』
「あー、うん。ありがと大丈夫。しばらくはブレイバーだけで充分かな」
話が膨らみ過ぎて、啓介は焦りながら早口でまくし立てた。倉持は「そうですか」と少し残念そうだったが、無理はさせないと約束してくれた通り、すぐに引き下がる。
『そうそう、これを伝えなきゃ。ブレイバーの撮影が来週の日曜に決まりました。集合時間が早いので、寝坊しないでくださいね。詳細はあとでメールで送ります』
啓介は「はぁい」と間延びした返事をしながら通話を終える。いよいよ動き出したなぁと、再びリューレントに手を伸ばした。
今、日本全国の書店にこの雑誌が並んでいるのかと思うと、身震いしてしまう。一体どれくらいの人がこのページを目にし、果たして何を想うのだろう。自分が読者だった時のように、胸躍るような期待感や高揚感を与える事は出来ただろうか。
「うわー。無理ぃ」
枕を手繰り寄せて顔を埋める。今更ながら、とんでもない世界に飛び込んでしまったものだ。枕を抱えて身を縮めていると、メールの着信音がして顔を上げた。倉持からの仕事のメールと予想したが、画面を見て「おや?」と思う。
「直人からだ。『今、外に出れるか』って? 何の用だろ」
啓介は髪をかき上げながら、ゆっくり立ち上がった。
届いた雑誌を自室のベッドの上でいつものように眺めていた啓介は、真ん中あたりのページに差し掛かった瞬間、声にならない声をあげた。驚き過ぎて思わず手を離してしまい、仰向けに寝転んだ状態の顔の上に勢いよく雑誌が落ちる。
「痛っ!」
痛みと驚きで混乱し、暫く雑誌を顔の上に乗せたままの状態で固まった。
永遠と快と三人で撮った写真が載っていると言う事はもちろん予想していたが、しかし今見たのは一体何だ。
恐る恐る雑誌を拾いあげ、呼吸を整え再びページを開く。
そこには啓介一人で撮った写真が、一ページまるまる使って大きく掲載されていた。挑むような強い目線で、口元には薄っすら笑みを浮かべている。それはまるでアートフォトのような仕上がりで、客観的に見たらとても良い写真だった。ただ、それが自分自身となると、途端に羞恥に苛まれる。
「なんでぇ? あれってカメラに慣れるための、試し撮りだったんじゃないの?」
上ずった声で不満を並べ立てていると、丁度よく倉持からの着信があった。素早く電話を取り、相手が話し出す前に「ねぇ、どういうコト?」と文句をぶつける。
『お疲れ様です……って、ええ? どうしました』
「僕、あの写真使うって聞いてないんだけど」
『いえいえ、バッチリ了承してくれたじゃないですか。撮影直後に加勢さんに聞かれて、「好きにしていいよ」って言ったの、覚えてません?』
そう言われて記憶をたどる。撮影直後、アドレナリンが過剰分泌されていた時に、確かにそんなことを言ったような気もする。啓介は唸りながら「でもあんなにおっきく載ると思わなかった」と拗ねたような声色を出した。
『まぁ、そうおっしゃらずに。前代未聞の待遇ですよ、新人が一ページ丸ごと独占だなんて。リューレントで他にあんな風に写真を使って貰えるの、南野さんかエレナさんくらいですからね。それに、何より本当に素晴らしい出来映えでした』
姿が見えていなくても、倉持が上機嫌だということがわかった。その倉持の背後で「凄い、凄い」とはしゃぐ永遠の声もする。
「永遠も一緒なんだ」
『ええ、これから永遠がイメージモデルを務めているブランドの広告撮りがありまして』
「広告撮り? 永遠ってブレイバーの専属じゃないの?」
啓介の問いに、倉持は「そうですよ」と朗らかに答える。
『雑誌のモデルとしてはブレイバー専属ですが、雑誌以外なら他にも仕事は色々出来ます。ブランドの広告塔や、コマーシャルとか。梅田くんが望むなら、ドラマ出演なんかも可能です。気合入れて仕事取ってきますよ』
「あー、うん。ありがと大丈夫。しばらくはブレイバーだけで充分かな」
話が膨らみ過ぎて、啓介は焦りながら早口でまくし立てた。倉持は「そうですか」と少し残念そうだったが、無理はさせないと約束してくれた通り、すぐに引き下がる。
『そうそう、これを伝えなきゃ。ブレイバーの撮影が来週の日曜に決まりました。集合時間が早いので、寝坊しないでくださいね。詳細はあとでメールで送ります』
啓介は「はぁい」と間延びした返事をしながら通話を終える。いよいよ動き出したなぁと、再びリューレントに手を伸ばした。
今、日本全国の書店にこの雑誌が並んでいるのかと思うと、身震いしてしまう。一体どれくらいの人がこのページを目にし、果たして何を想うのだろう。自分が読者だった時のように、胸躍るような期待感や高揚感を与える事は出来ただろうか。
「うわー。無理ぃ」
枕を手繰り寄せて顔を埋める。今更ながら、とんでもない世界に飛び込んでしまったものだ。枕を抱えて身を縮めていると、メールの着信音がして顔を上げた。倉持からの仕事のメールと予想したが、画面を見て「おや?」と思う。
「直人からだ。『今、外に出れるか』って? 何の用だろ」
啓介は髪をかき上げながら、ゆっくり立ち上がった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる